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月金と土日を含む一週間

2010.02.01 (Mon)

祝杯は月曜日。

あぁ、生まれたよ。生まれたよ。
女達は声を上げて喜び、男達は酒を飲みながら踊りながら祝杯を挙げた。
待ちに待った彼が生まれた。

あぁ、生まれたよ。生まれたよ。

やっと、生まれたんだ!

火曜日に嬉しさのあまり彼は教会へ赴く。
抱かれた母親の優しい匂いに包まれて、幸せの笑顔をやっと開いた目から見ている。
嬉しくても、幸せでも、それを伝えるのは泣き声だけ。
歯がゆいことに何も出来ない。
けれど彼は幸せだった。
やっと生まれることが出来たのだから。


水曜日になると彼の周りには女が溢れ、流れに逆らうことなく
彼は結婚をした。
一生を添い遂げる相手を手に入れた。

愛している。
愛している。

死が二人を別つまで。


木曜日の朝、彼は異変に気づいた。
世界は青空に染められ、眩い輝きを放っている。
だが彼の体は黒く淀みを見せた。


金曜日の朝には彼の目に光は無く、ただ泳いでいる魚を見ていた。

土曜日の夜、彼の鼓動は止まり全てを終えた。

日曜日の早朝、彼は飽きたおもちゃのように小さくなり墓の中に埋められた。

生きていた証などどこに無いまま。
彼の生きた一週間は誰の記憶にも留まることなく忘れ去られるだろう。
彼はただ一人の伴侶を見つけた。
添い遂げる人は「死が二人を別つまで」と誓いを立てた。
死は二人の誓いすらも無効にする。
誓いは死を必要としない。

何故、死なのか。

死は終りではない。
死は始まりである。

図書室で読んでいるこの本に納得がいなかった。
何故なら、生きていた証を伝えるために僕が生まれてきたのだと思っているからだ。

たった一週間。

ママにとってパパとの思い出はダイヤモンドのように輝いている。
パパと出会って、ママと愛し合い、僕は生まれた。
パパは僕を知らない。
ママはパパのことをずっと愛している。
ママを見ていてわかる。

ずっとパパのことを愛しているとママは言う。

僕は、知らないけれど、知らない僕ですらパパが大好きだから。
照れくさくて言ったことは無いけれど。
僕はダイヤモンドのように輝いている思い出の証拠。
雫って名前はそういう由来だとママが言ってた。

やっと、パパに会えるね。

そういえるのがいいことなのかどうかわからないけれど、僕は大丈夫。
願いが叶ったと、思うことにする。
この箱のお陰で。
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七日目の願い事

2009.09.25 (Fri)

箱を貰ったのは七日前の話。
僕はこの箱を貰ったのは偶然だと思うけど、なんかあやしい店の人が突然箱を持ってきて
「あなたに必要なものよ」
といわれ、貰ったんだ。

一日目
説明書を読んでみると、これがいわゆるパンドラの箱というのはわかった。
有無言わさず渡すってことは何かを叶えろってことで
更に何かを犠牲にしろってことだろう。
僕が犠牲にするものがあるのだろうか。

二日目
僕は学校を卒業した後、就職したが二年くらい経ったある日会社が潰れた。
それからまったく仕事なく就職活動をし続けたが求人すらなかった。
違う職種でもあたってみたけれど「経験者が欲しい」という理由から面接すら受けさせてもらえない。
何をしても「お前は不要だ」と言われているようでとうとう僕は諦めた。
その日、あぁこれが犠牲なんだろうかと思ったのは唯一持っていたネクタイが千切れてしまったこと。

三日目
朝からこれが犠牲だろうと思ったのはホットケーキを食べようと思い作った。
しかし、僕が作ったホットケーキはホットケーキとは違うまったく別物であり
お焼きかなんかじゃないかというほど、もちもちしていた。
はっきり言って食べられるものじゃない。
不味いと思ったが捨てるのももったいないので、小さくちぎり外にいる野良猫にあげると
「これなんですか?!」という顔をして食べなかった。
猫も食べない謎の物体。

四日目
こんなことで僕の願いがかなうのかな。
そう思いながら洗濯機に放り込んだカーテン。
洗っていなかったなと思って洗ったら、洗濯機から出した後は暖簾に変化していた。
縦にもの見事に裂けていた。
安物だったとはいえ代わりのカーテンはない。
そして、カーテンを買うお金などどこにもない。

五日目
滑った、と思ったのは覚えている。
起きたら夕方だった。
すっころんで頭を打って気絶していたらしい。
昼過ぎから夕方まで。
誰もいないって寂しいなと感じた。

六日目
考えたら僕が何を望むか、まだ何も決めていなかった。
これでは無効になるのだろうか。
色々考えて人生のリセットを願おうと思った。
何かのきっかけでこれからの人生をもっと変えたいと、思ったんだ。
その日はこれといって犠牲とやらは見当たらない。
どうしてだろうと思った。

七日目
犠牲どころか、びっくりするような話がきた。
隣に住む人から随分高価な肉を分けてもらった。
ステーキ肉。
うまそうだ。
ここのところまともなものを食べていなかったから嬉しかった。
失敗しないよう調理した。
うまく出来て美味しいと思った。
やっぱり今日も何もない。

八日目
この時、何も気づいていなかった。
説明書どおりに夜中の十二時になったら箱を開けた。
中には小さなラムネのようなものが一粒だけ入っていた。
どうしろっていうんだろうと思った。
食べてとメモ紙が入っていた。

何の疑いもなく、僕はそれを食べた。

これで人生がリセットできる。
これからの未来とどうやって生きていこうかと少しわくわくした。
嬉しかった。
でも、すぐに体が重くなって気分が悪くなってそれから真っ暗になった。
具体的に考えるべきだった。
リセットに変わりはない。
しかし、僕の意味と違うのに・・・。

「最後の晩餐だけは、この箱も気を使ってくれるのよ」
その声だけが動かない体にも届いた。

最後の、声。
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赦さないよ パンドラの箱

2009.02.13 (Fri)

一日目
 あの女の人がこの箱をくれた。
これが、あのパンドラの箱。
想像とは違う質素なものだ。
私はね、ただ、幸せではなくて願いをかなえて欲しいだけよ。
だからね、どんな苦痛だって耐える。
大丈夫。
だって、今以上の苦痛なんてあるわけ無いじゃない。
携帯でみんな私にメールしてくる。
学校のクラスメイトも。
多分先生も。
誰も信用できないの。
赦さない。
絶対に、全員赦さないわ。
 その日、私の親友が自殺した。

二日目
 私にとっての苦痛といわれればそうかもしれない。
でも、親友といったところで別に親友とは思ってないわ。
だって、単に一緒にいじめの対象になってただけ。
それを親友だなんて決めつけて。
「君は、あの子が悩んでいるのは気付かなかったのか?」
校長先生が私にこんなことを聞くのよ。
馬鹿じゃないの?
悩んでる?
あんたはどうだっていうのよ。
「さぁ、私があの子の全部を知っているわけじゃないし」
そう答えたら大人たちは呆れた顔するのよ。
「自殺したのよ!あなた、なんとも思わないの?!」
「じゃぁ、理由は何なんですか?私に聞かずともわかってるでしょ」
「わからないから聞いているんだ!」
担任が机を叩く。
「わからないんですか?大人のくせに。あんたがメールしてることくらいわかってるんですよ」
「メール?」
校長がすかさず聞き返す。
「そうですよ、いっつもメールしてきてますよ。さっさと死んでしまえって」
「そんな嘘ばかり言うからお前の言うことなんか信じないんだ!」
「こんな嘘ついて私に何の得があるんですか?」
「お前が突き落としたんじゃないのか?!」
担任の顔色はどんどん悪くなる一方で、最後には自殺ではなく私が殺したといい始めた。
あまりの担任の言葉に他の先生が制止しその場は解散となった。
下駄箱のところで担任が待っていた。
待ち伏せていたのだろう。
「おい、黙っていればもうなにもしない」
そういわれた。
「黙っていなければなんかするんですか?」
そう言い返したら担任はセーラーの襟をつかみ上げて私に顔を近づけてこういった。
「犯されたいのか?」
その顔は、悪魔に見えた。

三日目
「聞いた?あの話?」
「聞いた、聞いた。あいつが殺して自殺に見せかけたんだって?」
噂というのはそれがどんなことだろうとあっという間に広がる。
たとえ訃報であっても嬉しそうに語る。
このクラス全員が加担した。
その結果の結末が、自殺だ。
だが、それに殺人事件の可能性が加わった。
それに対してこの反応。
笑いながら。
ニヤニヤと。
面白そうに。
「警察とか来るのかな?」
「えー?!すごくないそれ?!」
「絶対、携帯で動画とってやろう」
「あーいいね!それ」
これが、この先の世界の大人になる前の人間の姿。
そしてそれを見ても何もしないのが大人の姿。
その大人は、先生と呼ばれている。
単なる職業の名前としかもう思えない。
立場を守るためなら、私を犯してまで守りたいものって何なの?

四日目
「あいつ、警察に言われたくないからって売りやってんだって?」
「らしいよ。なんかぁ、担任とラブホに行ったの見た親がいるんだって」
「えー?!マジで?!」
「それもさぁ、制服のままでよ?頭おかしいんじゃないの?」
「俺もやらしてくれるかな?」
「うわっ!最低ー!お前」
「あっはっはっは」
そんな声が廊下まで聞えるほど、笑い声に混じって私の耳に入ってきた。
もちろん、それは事実ではない。
一部だけ事実といえば事実か。
あの担任が下駄箱から私を連れ出して行った先は指導室。
その中だけは鍵が中からかけられる。
もう抵抗する気すら無かったよ。
だって初めてじゃないもん。
こんな風にされるの。
クラスの男子。
ほとんど私が何も抵抗しないからって何人も一緒に体育用具室に連れ込んだじゃない。
最初は叫んだけど。
最初は嫌がって暴れたけど。
もう、疲れたんだ。
 その日の午後、担任が私の家に行き親と口論の末刺したという一報が入った。
私は早退し、親が運ばれた病院に行った。

五日目
親の容態は見た目ほど酷いものではなかったが、警察からの説明ではなんと親のほうが包丁を持ち出し切りかかったという。
私が言うのもどうせ信憑性が無いだろうという思いがありながらも言った。
「親はそんなことをする人じゃありません。何があっても、あの人は家族を殺された過去を持つ人です。絶対にありえません」
警察もその事件のことは知っているだろう。
「確かにあの事件の遺族だということはこちらも認識している。だからこそだ」
「どういう意味ですか?」
「教師はあの事件の犯人の息子だ」
「そっそんな!」
 その日、これほどまでに吐き気と戦ったことは無かった。
あの事件の犯人。
忘れもしないあの顔。
その息子と私は・・・。
苦痛っていったってここまで酷いことを我慢しろって言うの。
あんまりじゃない。

六日目
事件の話は、蒸し返されるように瞬く間に近所中に広がった。
もちろんテレビまでモザイクがかかっているとはいえ我が家が映し出されている。
この近所なら誰でも我が家だとわかるだろう。
家にいてもたった一人。
病院に行きたくても面会謝絶。
家族でさえ駄目だという。
更に赦せないことは、担任が親を刺した事は正当防衛が認められたこと。
刺したこと自体が既に恨みによる犯行を疑わせるような内容が放送されていること。
その証言をしているのが何も知らない近所の人間。
事件後に引っ越してきたのに何も知らない。
そんなやつらの話の鵜呑みしている。
何を知っているというお前達が。
結局、学校で授業を受けることはなかったが呼び出しがかかった。
あの担任から。
何が目的なのかともうどうでもよくなった。
願いさえ叶うのならと。
「来たか。まさか来るとは思わなかった」
「何か用?」
「お前の親に言ったんだよ、お前と何度もやったって」
「だから?」
「なんていったと思う?」
「さぁ、どうでもいいこと」
「だろうな、親とは思えない台詞を言いやがった。よくお前あんな家で暮らせるよな」
「関係ないこと、あなたには」
「どうせなら殺してくれればいいのにって何度も叫んだんだぞ、あの女」
「だろうね」
「いわれてもしかなよなぁ?!」
「どうでもいい」
「ここに呼び出されたって事は何するかくらいわかってんだろ?さっさと脱げよ」
どうでもいい。
もう。
願いさえ叶えば。

七日目
昨夜学校にいたことと担任と会っていたことがどこからかわかったらしい。
家にいたら警察と他の偉い先生達が来た。
もちろん、あの担任も一緒に。
「生徒達が話していた。塾の帰りに見たそうだ。生徒指導室に明かりがついていて窓から見たら君と担任の先生がいかがわしい行為をしていたという報告があった。事実か?」
校長が切り出した話にまったくの間違いはなく事実だ。
だが、担任の顔は青ざめている。
且つ私を睨みつけていた。
「先生たちも知っているんでしょう?この担任の先生が私達家族とどういう関係だったのかを。それならそんな話信憑性があるとお思いですか?」
「それを利用しているんじゃないのか?!」
警察が詰め寄る。
「利用?」
「君はあの事件での生き残りだ。犯人だろうと共感がもてるんじゃないのか?!」
「私が生き残りでこの家でどのように扱われていようがそれが先生との関係に何かつながるものがあるんですか?私に聞かずに先生に聞いたらどうです?」
「先生は、そんなことは一切ないといっている」
「なら、先生の言葉を信じたらいいんじゃないんですか?自分の部下なんでしょう?そんなに信用できない人なんですか?」
「君の意見を聞きたい」
「何故?信用していない人物からも言葉を聞く必要があるんですか?」
「君は恐ろしいからだ」
わかった。
本当の理由が。
この人たちは怯えているのだ。
自分達がいじめを黙認していたことを話すのではないかと。
クラス中から携帯の掲示板で死ねとか殺されろとか書かれ続けた。
先生からもメールが来た。
生きる価値のある人間とない人間がいる。お前は無い。
そのメールは何度も送られてきた。
売りをやっているなんてうわさが立った瞬間、その放課後男子生徒に囲まれ体育用具室で回されたことも。
全部知っているんだ。
それを、黙認していたことをばれたくない。
保身しか頭に無いんだね。
親とおんなじ。
私を悪者にすればそれでいい。
自分達に害は無い。
そうなんでしょ?

八日目の朝
その日、修学旅行へクラスの人間は出発した。
担任も同行して。
正当防衛は成立しており、親に対しての容疑がかかっているから問題ないと考えたのだろう。
親は相変わらず面会謝絶。
単に私と会いたくないだけだ。
実際は、一般病棟にいるわけなんだから。
こんな事件が身近に起きようと、彼らは笑いながら出発したのだ。
私などこの世に存在していることすら忘れたかのように。
窓から見えたその高速に乗っていくバスを見ながら思った。
いい眺めだと。
箱を開けた。
これで全ての復讐は完成する。

九日目
「あなたの願いは大きすぎる」
「今更何を言っているの?」
「いえ、叶えないとはいっていない」
「何言われても叶うならそれでいいのよ。それが望んだ形なのよ」
「それはあなた自身の個人的な意見だから問題は無い。ただ、パンドラの箱の力はあまり大きく一度に使うと暴走する」
「暴走?」
「願っても無い方向に動く可能性がある」
「何よそれ?」
「テレビをつけたら?もうそろそろよ」
言われたとおりテレビをつける。
速報で流れる高速道路の玉突き事故。
さっき見たあのバスと同じ模様。
つまり、クラスメイト全員ということか。
大声で笑いそうになるのを堪えるって大変なのね。
「ただいま入ってきたニュースです。えー高速道路の玉突き事故ですが生存者は無いもようです。また、このバスは修学旅行生を乗せており多数の子供が犠牲になったと見られています」
「望んだ結果かしら?」
「もちろんよ、あいつら全部消したかったんだもの」
「違う」
「何が?」
「消えてないわ。死んだだけよ」
「どういう事?」
電話が鳴る。
「お母さんの容態が急変し死亡しました、至急こちらへ」
「わかりました」
「これも、望みのひとつね」
「そうよ、消えて欲しいのよ。何もかも。あの事件の関係者と私をいじめてきたあいつら全員を」
「消えるという意味をよく理解するといいわ」

十日目
朝起きると、知らない女が私のベッドの側に立っていた。
「早く起きなさい。学校遅れるわよ」
わけがわからず制服に着替え下に降りると朝食が用意してあった。
あの事件で死んだはずの妹と弟までいる。
「お姉ちゃんはやくしないと遅れちゃうよ!」
理解できず鞄を持って学校へ走った。
学校についてクラスのドアを開けた。
そこには、見知らぬ顔のクラスメイトがいた。
「どうして?事故で死んだって・・・」
「おはよう!どうしたの?そんな顔して?」
「誰?」
「何いってんの?親友の顔、忘れないでよ。自殺するほど辛かったのに私のこと、どうでもいいなんて思ってたの知らなかったわ。赦さないから。今日で七日目なの。私、箱を開けるのあんたの目の前じゃないと気がすまないのよ。親友だと思ってたのに。あんた、殺したんでしょ?再婚した私の父さんと私の兄弟を。赦さないから」
「私はもう十日目だから」
「え?」
「あんたも消えるのよ」
「何言って・・・」
「全部消えるの。それが私の願いよ」
突然、肩を叩かれた。
見知らぬ教師だ。
「何一人で話してるの?ぼーっとしちゃって?どうかした?」
「え?」
振り返ると、さっきまで睨みつけていた死んだはずの親友がいなかった。
別の顔をした親友が。
「みんなを消すより、あなたを消したほうが手っ取り早いのよね」
席に着いたとき、教師がそういった。
驚いてゆっくりと席を立ち上がった。

十一日目
「ここに住んでた家族、どうしちゃったのかしら?」
「え?誰か住んでたんですか?」
「あら?住んでいませんでしたっけ?」
「空き家ですよ、ずっと。ほら、あの隣町で家族が殺されて生き残ったとかいう事件があったとき以来」
「あぁ、そうでしたね。なんで住んでるなんて思ったのかしら?」
「あの事件、酷い話ですよねぇ?」
「どんな事件でしたっけ?」
「ほら、えーっと・・・ あら?どうだったかしら?」
08:52  |  パンドラシリーズ  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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結婚式 パンドラの箱

2009.01.26 (Mon)

「この箱を受取りなさい」
「七日後でしたね?願いが叶うのは」
「代償は、七日間の間に味わう苦痛よ」
「わかりました、結婚できるなら何も文句は言いませんよ」

一日目
彼とであったのは、もう二年も前の話。
その彼と出会って私達は不思議と気が合い一緒に居ることが多かった。
その彼との結婚が決まったのが昨日の話。
私は、今日から始まる苦痛を乗り越えても私は願いを叶えたいことがあった。
一日目の今日、私の周りに特に苦痛と思うものはなかったなと思った瞬間、真夜中だというのに携帯電話が鳴った。
「もしもし、ごめん夜中に。事故を起こした」

二日目
事故を起こしたという連絡を受けた私は、急いで連絡を受けた先に行った。
かなり動揺していた彼を落ち着かせた。
背中をさすって、震えていた。
車はかなりのダメージを受けている。
スリップしたようだ。
凍結していた路面に気付かず、ブレーキを踏んだ瞬間に滑ったらしい。
怪我もなくよかったと思った。
だが、助手席には女が乗っていた。

三日目
女は意識不明の重体だった。
私は病院の透明の窓からその女を見つめた。
軽症を負った彼も検査入院となった。
その後、事故直前別の事故を起こしていたことが判明した。
私はそれを知って驚いたが、なんと彼はこう証言したそうだ。
「運転していたのは、俺じゃなくてあの女だ」と私を指差して。

四日目
彼は、私が運転していたと証言したため意外な展開となった。
私は警察に呼ばれ事情を話した。
だが、信じてもらえなかった。
「わざと事故を起こしたんじゃないか?」
「あの女性を轢こうとしたんじゃないか?」
ありとあらゆる、本当はこうじゃないのか?という疑問文が並べられるが私は首を振るだけで何も答えることは無かった。
何より、夜中で自宅に一人でいたわけだし誰も証言してくれる人などいないのだ。

五日目
重体の女が死亡した。
彼は出席し、悲しみの中心にいた。
私には、白い目と疑いが混ざったなんとも言い表せない突き刺さる目線が浴びせられた。
これが、苦しみのひとつだというのなら別にどうでもいいと思う。
逆に、私は満足だ。

六日目
結局、運転していたのは私だったという証言が別の人間からも出てきた。
それが決定打となり、殺人容疑がかかった。
しかし、立証するにしても警察も私は「運転していない」を突き通した。
証言だけで物的証拠となるものもなく、実際に一緒に乗っていた彼の言動も二転三転するためあやふやなものであまり信憑性の無いものだった。
そのため、私への容疑もあくまで容疑であって確信はまったく得られず警察の捜査も一向に進まなかった。

七日目
私の容疑が固まったという。
一体何を根拠にと思ったが、彼が絶対にあの女が運転していたと言い張っているようだ。
その証言だけで、私を逮捕しようというのか。
同行した彼を見て私は言った。
「本当に、私が運転していたと?」
彼はその場で泣き崩れ「すいません、すいません」とただただ謝り続けた。
結局、偽証したということで疑いは彼へと移った。
だが、彼以外からも私が運転していたという証言があるというところが警察は不服だったようだ。

八日目
今日で私の苦痛は終わり、幸せが待っているんだと思うと笑みが自然とこぼれる。
蓋を開けると一枚の免許証が入っていた。
それは、あの事故で死んだ双子の姉の免許証だ。
どういうこと?
携帯電話が鳴った。

「事故で死んだのは妹の方だったと今連絡が入った。どうして姉のフリをしていたのかしらないけどお前は生きてたんだな!何で言わなかった!!俺はお前と結婚すると誓った仲なんだぞ!!」
「嘘…」
08:39  |  パンドラシリーズ  |  Trackback(0)  |  Comment(4)

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パンドラの箱 結末は流れのまま

2008.12.17 (Wed)

一日目
この箱をもらったのは、私の願いをかなえてほしいからだ。
引き換えとしてこの箱をもらって七日間の苦しみを伴うという代償を払わなければならない。
それが、どれほどの苦しみなのか具体的なことは教えてもらえなかった。
正直怖かったが、私はただ幸せになるために何かを犠牲にする必要があるということが
本当に幸せになれることになるのか疑問だった。

二日目
結局、寝付けない夜をすごした。
寝ていたかもしれないが浅い眠りだ。
何が苦痛なのか。
それを考えていた。
どんな苦痛が待ち受けているのかということを。
私は、仕事をしていない。
実質的に。
仕事は正社員ではなく派遣社員をしている。
派遣社員といえば聞えはいいが、人身売買に変わりは無い。
都合のいいときだけ雇って、後はさようならだ。
仕事の紹介料として自分の受取る額以上を派遣会社は手にしている。
もちろん、そこから派遣会社に勤めている営業や事務全体の給与になり自分の社会保険も含まれているだろう。会社負担分の。
最近は、本当に単発の仕事が多くなった。
昔は嫌われるので単発の仕事というのはほぼなかった。
あったとしても販売関係だった。
現在では、口約束で半年くらいは雇うからというクライアントの言葉を信じ一ヶ月更新なんていう話が多い。
結局、いつでも切れるようにしておきたいのだ。
こっちはたまったもんじゃないのだ。
毎月、ハラハラしながら仕事をしているわけで。
それが、ぱたんと電話が来なくなった。
貯蓄していたお金は全部税金に取られた。
何のために働いているのか私にはわからない。

三日目
これといって苦痛という苦痛は感じられない。
日々、生きているのか死んでいるのかわからない生活をしているからだろうか。
朝起きて、夜寝るまで。
いつも飲んでいる安定剤の効果が体性がついたのか薄れてきた気がする。
より強力なものをくれといいたいが、薬代が増えるだけだ。
いいのかわるいのかわからないが、以前もらった腐っては無いだろうと思われる強めの安定剤を飲んだ。
一緒に服用していいかは不明。
飲めば、意識は薄れベッドの中にもぐって寝てしまえるから。
夢の中でうなされること無いほど眠れる。
その代わり、途中目が覚めていても記憶がまったく無い。
なんとなく言葉を覚えているが現実感が無い。
段々、危ないやつかもしれないと自覚はしてきた。
だが、やめられない薬だった。

四日目
友人に勧められてみたアニメが偶然テレビで再放送されている。
それを録画しているのだが、ハードディスクの容量がパンパンになってきた。
デジタルに対応していないので強制的に圧縮されてしまう。
はっきりいってデジタルにした意味が無い。
このDVDレコーダーを買ったのはいつだったか・・・。
覚えてないが、デジタルがどうのとかいう以前だったのでそんなことを気にしていなかったのだろう。
DVDとブルーレイディスクの規格についてもあまりの画質の悪さが故障かと思ってDVDのメーカーに問い合わせたら勉強になった。
教えてくれたのだ。
何を屋っても今もっているDVDプレイヤーではデジタルの美しさを録画することは出来ないとの事。
ブルーレイの時代というのは、本当にやってきたのか。
出た当時は、何故必要なのだろうかと思ったんだが。
その綺麗さは、ゲームでしか知らない。
今のところ。
今日は、ハードディスクにたまった録画したものをDVDにダビングした。
DVDファイルが満杯になったのでダビングを中止。

五日目
やっぱり、苦痛というのが気になって薬に頼ってひたすら寝ている。
夢なのか。
現実なのか。
境目がわからなくなってきた。
死んだような顔をして、泣きはらしたまぶたが重く頭が割れそうに痛い。
なんとなく雰囲気を察してかいつもなら甘えても来ない猫がすりっと側にきて寄り添っている。
時々、顔をじっと眺めている。
気にしているのだろうか。
抱っこしてもいつもなら嫌がって降りるのに顔をすりすりと腕にしてくる。
もう随分と歳をとり、辛い人生を歩ませている猫にまで心配かけたのか。
最低だ。
涙がまた溢れた。

六日目
寝たり起きたりを繰り返しても、夜は眠れる。
薬のおかげだろう。
それでも、起きたら悪夢を見続けることになる。
苦痛が襲ってくるというあの言葉が支配して縛りつける。
たった一人で家にいると、もういいだろうと思って適当に紐を持ってきて梁に引っ掛けて
首をつってみたらめっちゃ苦しくてやめた。
何度も泣きながらチャレンジしてみたが、こんなに苦しいのをどうして出来たんだろうと
実際にやった人に聞きたいが皆死んでいるので聞けません。
何時間も戦って、自分はなんて覚悟の無い人間だとその不甲斐なさにもっと泣いた。

七日目
長い長い七日間が今日で終わる。
苦痛は、どれが苦痛なのかわからない。
生きていること自体が苦痛だ。
仕事がないこともそうだが、財政難も危機に瀕している。
病院に行くにもお金がかかるし、薬をもらうのもお金が必要。
ずっと服用しているため急にやめてはいけない薬なんだそうで。
飲んでいて効果があるのかどうかすら私にはもうわからない。
飲んだことで安心しているのはあるが。
じんましんみたいなのが出てきた。
やっぱりよくなかったかな?
あんまり、勝手に人の安定剤を以前飲んだことあるからって勝手に飲み続けたの・・・。
かゆくてたまらない・・・。

「箱をあけたら?」
夜になって横になった瞬間、声が聞えた。
びっくりして手元にある小さな電気をつけた。
「開けていいの?」
「七日間過ぎたわ」
私は、その箱を開けた。

八日目
ならない電話が鳴った。
「ご報告の連絡です。先日エントリーされたお仕事が受かりましたよ!」
私の望みが何なのかわからなかったけれど、仕事が見つかった。
財政難が解消されれば気持ちに余裕は出来るだろうか。

もうひとつの気がかりがあったのだが、ならない電話が聞き慣れた音を発した。
聞きたかった彼女からのメールが届いた。
それは、なにより望んでいたことだった。
ありがとう。
また、涙があふれ出てとまらなくなった。
それを、部屋にいる猫がぎょっとした顔で見ている。
いや、お前さんがどうかしたわけじゃないんだよ。
外猫が寒がって私の部屋に入ってきてヒーターの前でくつろいでいる。
子猫だったが大きくなったな。
08:53  |  パンドラシリーズ  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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パンドラの箱 身代わり

2008.12.13 (Sat)

「この箱をあげるわ」
「これが、あのパンドラの箱なの?」
「そう、7日間の苦しみの後箱を開けると幸せが待っている」
「幸せ?」
「そう、あなたの願いが叶うわ」
「苦しみに耐えれば?」
「耐えることが出来ればの話ね」

一日目
その箱をもらって私は早速、実行した。
「ねぇ、今日誕生日でしょ?由佳にこれプレゼント!」
「うそ!ありがとー!」
「これさ、あのパンドラの箱なんだよ!」
「何?パンドラの箱って?」
「今日から、七日後に箱を開けると願いが叶うんだよ!」
「七日後?」
「そう!だから、七日間絶対あけないでね!」
私は、パンドラの箱を由佳にプレゼントした。
彼女に苦しみぬいてもらうために。

二日目
「ねぇ?聞いた?」
「聞いた!聞いた!」
「びっくりだよねぇー」
「うん、すっごくびっくりした」
クラスメイトが朝から騒いでいる。
何があったのだろう?
「どうしたの?」
「聞いてないの?由佳から」
「今日まだ会ってないよ」
「会えないよ、絶対」
「何で?」
「由佳のお兄さん、事故で死んだんだって。それもさ、変な死に方でさ」
「変な死に方?」
「事故起こす前に、すでに死んでいた可能性があるとかニュースでいってたんだよ」
「何それ?じゃぁどうやって運転してたのよ」
「だから、気持ち悪いんじゃない」
7日間の苦しみがあることを由佳には伝えていない。
由佳に苦しみを味合わせて、私があの箱を開ければいい。
そうすれば、手に入るわ。
私の望みが。

三日目
意外なことに由佳は登校してきた。
全員、どういったらいいのかわからず遠巻きにしていた。
「登校してきて大丈夫なの?」
由佳に聞いてみたが、普通に笑って
「全然平気!大丈夫だよ!」
というのだ。
どういうことだ?兄が変死したというのに。
その日の午後、自体は急変する。
兄の死に由佳の母親が加担しているという容疑がかかったのだ。
早退する由佳の姿を見て少し気になった。
「ねぇ、由佳」
「何?」
「あの箱、開けてないよね?」
「うん、まだ七日たってないし」
「開けちゃダメだよ。こんな時だからこそ七日後きっと好転するって」
励ますフリをして、開けないように釘を刺した。
苦しむがいい。
もっともっと。
どれだけ、今まで私はあなたたち家族が憎かったか。
思い知ればいい。

四日目
証拠になる物証は出なかったが、由佳の母が事件に関与している可能性は高いという状況証拠だけが浮き彫りになっていた。
丸一日否定したが、信じてもらえなかった精神的疲労からかその日の朝、家の中で自殺していた。
それは、ニュースで知った話。
さすがに、学校に来ないだろうと思った由佳は何故か登校してきた。
クラス中が由佳の姿を見て、固まったのは言うまでも無い。
由佳は、悲しみの顔をするどころか満面の笑みといっていいほど明るかった。
それが異様さを放ち、噂は尾ひれがついてあっという間に学校中に広がった。
由佳が全部仕組んで家族を殺しているんじゃないかという話だ。
噂はあっという間に広まり、尾ひれがついてどんどん広がっていく。
由佳が兄に暴力を受け絶えかねて殺した。
由佳が母に迫って自分が殺したって言えと脅迫したなど。
面白がって話している学校中の人間だ。
結局、人が死んでもその不幸が自分に関係なければ面白いネタの話になるほどこの世は腐っているという状況を今目の当たりにしているんだろうな。
同じ状況を味あわせないと気がすまないんだよ。
私の気がすまないよ。
由佳。
覚えてないなんていわせないからね。

五日目
噂は広まって、もちろん先生の耳にも入りしばらく学校を休んではどうかという提案をしたそうだ。
というのは、建前で警察に事情聴取に行ったというのはもう誰しも気付いていることだった。
由佳は今何を思い、何を苦しみ、何を考えているのか。
便利なもので、由佳に直接聞かなくても近所のおばさんたちの情報ソースは素晴らしい。
それに、ニュースもこぞって取り上げている。
手に取るようにわかる状況は、楽しくて仕方が無い。
後ちょっと。
後、ちょっとだよ。
由佳。
あんたが、苦しんで苦しんで泣き叫ぶ姿が見たいな。

六日目
由佳の父親が愛人を殺した罪で逮捕された。
私は、学校に行けなかった。
どうして?
なんで、殺す必要があったの?
私のお母さんを。
由佳の父親は、元々私の母と結婚していた。
それを、由佳の母親が無理やり奪い去って行ったのだ。
何より驚いたのは、自分と同じ年の子供がいたこと。
それも父の子だという。
異母兄弟がいたのだ。
愛人関係にあった。
いや、愛人じゃない。
結婚前から二人は恋人で、親同士の紹介で知り合った母とは義理で結婚したようなもの。
私が生まれてすぐに父は女のところに行ったのだ。
結婚して二年後には離婚。
愛人だった女をと入籍した。
その子供がクラスメイトになった時、私は絶対に口を利かないしかかわりたくないと思った。
だが、由佳からこっちに来て行った一言が私をこの世から突き落おとすほどひどい言葉だった。
「私たちを選んだお父さんのことなんて気にしないで仲良くしよう。
 どうせあなたのお母さんとはどうでもいい関係だったんだから。
 子供の私たちには関係ないじゃない?一応兄弟になるんだし。一緒に仲良くしようよ。
 お金が必要だったらおとうさんにねだってもらってきてあげるから」
満面の笑みを浮かべ、施しをやるよと初対面で平気な顔してやってきた。
この女だけは、許さない。
そう思った。
私から、母から、お父さんを奪った。
何より許せなかったのは、母の下を去り籍を入れたのにもかかわらず父は相変わらずうちに出入りしていたことだ。
当たり前のように。
母も追い返すことなく、何も咎めずにいた。
どうして?
どうしてなの?
私には理解が出来なかった。
本妻だったはずの母が、愛人と呼ばれている由縁はそこからである。
母と二人きりの生活で、何故父は母を殺したのか。

七日目
母の葬儀に、なんと由佳が来た。
親戚一同追い返せと大騒ぎになった。
由佳は笑みを浮かべながら言った。
「そんなに騒がなくても。父は選んだんでしょう。一緒に死んでくれる人を」
父は、その日、母を殺したことを悔やみ自殺していた。
由佳の母親は、父とは結婚してもうまくいっておらず他に男を何人も作っていた。
由佳に兄弟はいるが全員、異父兄弟だ。
それでも、父は全員を育てるため働いていた。
その環境が嫌になってうちに来ていることは知っている。
だが、そんな女を選んだのは父自身だ。
戻ってくるなら戻ってくるでけじめをつけるべきだ。
離婚して、もう一度籍を入れればいい。
それは、叶わぬ夢になったけれど。
葬式もひと段落し、人がまばらになった頃由佳からメールが入った。
裏に来て欲しいと。
行ってみると箱を持った由佳がいた。
なんて、都合のいいときにきてくれたのだろう。
「今日七日目だから。どうしても、会いたかったの」
「嬉しい。私も見たかったの。箱を開けた後どうなるか」
「じゃぁ、開けていい?」
「待って。私が開けちゃダメ?」
「え?なんで?あけた後に中身を見せてあげる。ちょっと仕掛けてあるのあけた後にびっくりさせたいから」
「わかった」
由佳から箱をもらって、箱の蓋を開けた。
ゆっくりと。
中には封筒が入っていた。
「ねぇ、見せて?」
由佳が、箱を覗き込んでその封筒を手にとった。
なんの疑いもせずその手紙の封を切った。
「うれしい!私の夢が叶ったわ!」
何?
何が書いてあったの?
「ちょっと見せて!」
手紙にはこう書いてあった。
大切にしている異母兄弟の由梨と一緒に住み暮らすことが出来るようになる。安心しなさい。
そんな。
どうして、こんな女と私が住まなくちゃいけないの?!
「独りになったからどうしようかと思ってたの。よかった、由梨がいてくれて。一緒に暮らしていこうね。じゃぁ、私見つからないうちに帰るね」
手を振りながら笑ってこちらを見て走り去っていった。
呆然と立ち尽くしていた私の背後から声がした。

「使い方を間違えれば、あなたが不幸になるの。不幸だけしか手に入らない。最高の不幸だけ」
08:29  |  パンドラシリーズ  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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パンドラの箱 恨み

2008.11.30 (Sun)

「この箱は、あなたにあげるわ」
「綺麗な箱ですね」
「そう見える?パンドラの箱。聞いたことくらいはあるでしょう?」
「あぁ、希望しか残らなかったとか言う・・・なんでしたっけ?」
「そんなところよ」
「貰っていいんですか?」
「ええ。7日間の苦痛の後あなたには望んだ幸せが訪れるわ」
「幸せか・・・」
「頑張ってね、あなたの7日間を楽しみにみているわ」

一日目
こっそり外出した事がばれた。
母親から、はさみで切り付けられ。
父親から、殴られて。
服を破かれ、ほぼ裸の状態になったら今度は兄がやってきて自分の部屋に連れ込んで。
後は、おもちゃとして遊ばれる。
兄の友達も一緒だ。
むちゃくちゃにされたら、部屋から追い出される。
「汚らしい」
そういって、母親が首をつかんで風呂場まで連れて行き洗剤をぶっ掛けられ水で流される。
湯船にたまったお湯に顔を突っ込まれて、暴れる自分を見て笑う母親。
飽きたら風呂から出て行く。
その後、自分でゆっくりとお湯に浸かれる。
水は、そのときに沢山飲んでおく。
風呂を上がると服は置いてある。
部屋に上がれば、皆の食べ残しが置いてある。
これが、私の日常。
どれが、箱の苦痛なのかわからない。

二日目
朝起きた時、8時を回っていた。
何故、寝坊してしまったのか。
慌てて服を着て、部屋を出た。
そこには、鬼の形相をした母がいた。
「何様だと思ってんのよ!」
朝は、5時に起きなければならない。
掃除・洗濯を音を立てずにしなければならない。
それをしなかった。
殴られ、蹴られ、ぶっ飛ばされて壁にぶつかる。
その勢いで、棚にあった花瓶が落ちた。
ごろっという音を立てて。
母親の顔を見た。
花瓶を見た。
私は、迷わず花瓶を持って母親に向かって思い切り殴りつけた。
花瓶が割れる音と、母親の頭が割れる音が聞えた気がする。
崩れ落ちるガラスのカケラが自分に突き刺さり。
こんなにも吹き出るものかというほど、あたりに血がスプリンクラーのように舞った。

三日目
父親は、母の虐待があって追い詰められていたのだろうと警察に話した。
全ての原因を母に押し付けた。
死んだ母は、何も言うことが出来ない。
自分たちまでもが虐待をしていたなどとわかってしまえば社会的制裁を受ける。
それならば、死んだやつに全てをかぶせてしまえばいいという連中だ。
そして、それから生まれた自分はなんなのだろうか。
家に帰って、母の葬儀などはすべて密葬で終わらせた。
終わったあと、父親からの暴力が再開した。
今まで以上にひどかった。
「お前というやつは!殺しやがって!お前が死ねばよかったものを!あの女が死んだせいで俺の人生まで狂わされたらどうするんだ!」
父親にとって、妻を失ったというのは問題ではないらしい。
ある程度、殴るのが疲れたのか終わった時、兄が二階から降りてきて「何か作れよ、腹減った」
といってきた。
そこで、私は料理を作り始めた。
料理は、昔やらされていた。
だが、突然母がするようになった。
理由はわからない。
父は、酒を飲んでいて食べる様子はなかった。
兄はテレビを見ながら料理が出来るのを待っている。
ふと、台所の調味料のところを見ると見慣れない粉があった。
それは、薬が入ったビンに入っている。
どうやら、薬を粉上にして入れていたらしい。
まさか、母はこれを混ぜて私を殺すつもりだったのか?
確かめるには・・・。
匂いをかいでみたが、特に何も無い。
作った料理のスープを器に入れる。
一応、食べないだろうが父の分も用意した。
そして、兄のスープのほうに粉を全部混ぜて溶かしてみた。
もちろん、自分の分は用意していない。
後で食べようと思う。
皆が寝静まった後にでも。
兄の前に料理を並べた。
父の前に並べようとしたら、俺はいらん!と一喝された。
兄は無言のまま料理を食べ始めた。
私は、その部屋を後にし自分の部屋に戻った。
一応、納戸が私の部屋としてあてがわれている。
「おい!どうした?!」
父の慌てる声が聞えた。
やっぱりね。という考えがよぎっただけで特にこの部屋から出ようとは思わなかった。
都合のいいことに、騒ぎが収まった後部屋を出てみると兄はスープを全部食べていた。
食器を急いで洗って何も無かったようにした。
救急車で運ばれた後の静けさは居心地が良かった。
帰ってきた父親は、落ち込むどころかニヤニヤと笑っていた。
「あいつには、結構保険金かけてたんだよな。まったく、偶然とはいえ発作を起こして死んでくれるとはな。結構遊んで暮らせるかもな」
そんなことをぶつぶついいながら帰ってきた。
どうやら、私が粉を入れたのが原因というのはわかってないらしい。
ご機嫌なのか、この日の暴力は殴る蹴るなどではないものだった。

四日目
朝、5時に起きた。
ふと、思った。
父しか居ないと。
掃除などする必要があるのだろうか?
特に父は気にしていないはず。
昨日もかなり遅くまでおきて酒を飲んでいた。
リビングを見ると散らかった酒のビンや缶が転がっていた。
そこに、父も転がっていた。
どのくらい眺めていたかわからない。
でも、不思議と手は動いた。
転がっている一升瓶を手に持ってうつ伏せで寝ている父の頭に思い切りたたきつけた。
割れたビンを更に突き立てた。
転がっている父は、動かなくなった。
汚れたので部屋をきれいにして、その後にシャワーを浴びた。
ゆっくりと。
それから、朝ごはんを食べた。
どれくらいぶりか、自分でテレビをつけ、チャンネルを選んだ。
そうだ、あの箱を飾っておこう。
部屋に戻って、鞄を持ってリビングに戻った。
鞄を見ても箱がなかった。
どうして?!
鞄に入れておいたはずなのに。
無い!無い!
家族が私のものを触るはずが無い。
どこに?!どこにいったの?
どこかに置いた?
いや、そんなはずは無い。
突然、インターフォンが鳴った。
出てみると、聞き覚えのある声が聞えた。
「箱は、必要なくなったわ」
「箱が無いんです。鞄に入れていたはずなのに」
「そう、必要なくなったからよ。あなた、自分で叶えちゃったじゃない。家族を消したいという願いを」

警察のサイレンが響く。
家の前で止まった。
私の人生も終わったのか。
全部、バレたんだ。

「警察です!開けてください!あなたを保護しに来ました。大丈夫ですか?!」
08:22  |  パンドラシリーズ  |  Trackback(0)  |  Comment(2)

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パンドラの箱 リカバリー

2008.11.28 (Fri)

望んだ望みが叶った後で、それが望んだ結果と違うこともある。
それが今、目の前にある。
昔の私がここに居る。

一日目
箱をもらったが、問題は七日間の苦痛に耐えられるかという恐怖が自分を縛り付けた。
まったく眠れず朝を迎える。
階段を下りるとき。
キッチンへ向かう時。
母が包丁を握った瞬間。
全てが、恐ろしかった。
何が、自分に、降りかかるのかと。
「おはよう」
後ろからした声に飛び上がるほど驚いた。
「どうしたの?顔色、悪いよ」
「別に・・・」
妹が話しかけてきただけでも、背後から何かが起きるのではないか。
「学校休んだほうがいいんじゃないか?」
朝ごはんに手をつけない自分を見て父が心配そうにこっちを見ていた。
「・・・そうする、ごめん朝ごはん。食欲ない・・・」
二階に上がって、ドアを閉めた。
カーテンもぴっちりと閉めて。
気が狂うと本気で思った。
勝手に薬箱から取り出した睡眠薬を飲んで寝てしまおうとベッドにもぐった。

二日目
睡眠薬のおかげで眠れたはいいが、目が覚めたのが朝の4時。
風呂にも入らず、まったく何も食べずに一日を過ごした。
さすがにおなかが空いてしまった。
シャワーを浴びて、台所に行くと母が居たのでびっくりした。
「どうしたの?こんな朝早くに」
背中を向けている母に声をかけても返事をしなかった。
冷蔵庫を開けて取り出したペットボトルのジュースを飲もうと口をつけたとき、母は、ゆっくりとこちらを振り返った。
その手には、包丁が握られていた。
瞬間、自分は殺されると思った。
持っていたペットボトルを投げつけた。
ペットボトルはまったく別の方向へ飛び、食器棚にぶつかった。
ガラスが割れる音が響いた。
「どうした?!」
家族が起きてきた。
「何をやっているんだ?!」
父が慌てた様子で自分に駆け寄ってきた。
「え?」
包丁を持っていたのは自分だった。
母は、どこにも居なかった。
ガラス片を浴び血だらけになった自分。
その状態で包丁を持っていた。
その姿を見て、妹と母は怯えた顔をして近寄ってこなかった。

三日目
無理だと。
もう、無理だと。
箱を開けずにもらった人に返そうと思った。
そして、今、この場所にいる。

「わざわざ返しに来たの?」
「はい」
「随分とひどい怪我ね」
「7日間苦痛があるとおっしゃったじゃないですか」
「苦痛は、肉体的苦痛だけじゃないわ」
「そうですね、気が狂いそうですよ。何が起こるのかとびくびくして過ごすのなんて。自分には無理です」
「そう、あなたには必要だから渡したのだけれど」
「何故、必要だと?」
「ここは、その人にとって必要なものしか売れない場所なのよ」
「そんなことを言ってましたね」
「別人になった。それなりの人生を楽しんできたはずよ」
「確かに、この人間になってから楽しい生活はできました。普通に」
「でも、まさか自分が別に存在するようになるとは思っても見なかった。というところかしら?」
「はい、あの時自分は別人になりたいと思っていました。でも、まさかあのまま自分のままだったらあんな人生を送っていたなんて思いもしなかった」
「素敵よね、時々テレビで見るわ。元のあなたを」
「はい、テレビ出てますね」
「取り戻したくないの?あなたの人生よ」
「都合がいい話じゃないですか。それに、苦痛に耐え切れません。今のままでいいです」
「残念だけど、ここは返品が出来ないのよ」
「知ってます」
「じゃぁ、どうするの?」
「あなたに差し上げます」
「なるほどね」
「では、失礼します」

これでいい。
最初から、自分は間違った望みを持っただけだ。
そして、それが必要だなんてあの人が言っただけ。
それを鵜呑みにしたのはそれなりの信用があったから。
でも、ちゃんと自分の人生。
今の自分を生きていかないと。

4日目
あの箱は返した。
いや、返したという表現が正しいのかわからない。
でも、あの人にあげた時点で所有者は変わったはず。
だから、もう大丈夫。
「ねぇ、邪魔なんだけど」
階段をゆっくり下りていると後ろから声をかけられた。
「あ、ごめんなさい」
学校は、つまらない世界だ。
ただ、枠からはみ出さないことを学ぶためだけの時間でしかない。
無駄といってもいいだろう。
「存在が邪魔だっていってんのよ」
また、同じ声が聞えた。
振り返ろうとした時、声の主が背中を押した。
体制が崩れ、落ちそうになった。
何かをつかんでとっさに自分の全体重をかけて前のめりになってこけた。
こけたと同時に、何かがつぶれる音がした。
静寂の後に、悲鳴が響き、誰も居なくなった。
振り返りざまに、体制を崩し、落ちないようにと自分の背中を押した人間をつかんだ。
その反動で自分は体勢を立て直し、階段側へ倒れた。
当然、自分の体勢を立て直すための犠牲になったのが下に潰れている人間だ。

5日目
「それじゃぁ、お姉さんが亡くなったのは事故ではないと?」
「はい」
「では、何だと思うの?」
「きっと、消えたんです。姉は、嫌がってました。よくわからないけれど。元に戻りたいとか」
「元に戻る?どういう意味かしら?」
「わかりません。なんとなく、そう感じたから」
「では、遺体の確認をしたのかしら?」
「いえ、見てません」
「そう」
「お姉さんの顔は覚えているかしら?」
「覚えてます」
「妹さんの顔は?」
「妹はいません」
「兄弟は何人いるの?」
「二人です、姉と自分です」
「わかりました。ここでちょっとまっててね」
階段から落ちた。
潰れている人間が、目の前にあった。
自分が突き落としたという思いが姉にとって重圧だったのだろう。
だから、姉は事故だったとしても耐えられなかったんだ。
あんな、死に方をするなんて。
「明日もお話を伺いたいのだけれど、大丈夫かしら?」
「はい、大丈夫です」

6日目
「どういうことなんですか?」
「一体何が起きたのか私にもわかりません」
「先生!」
「落ち着いてください、お父さん」
「しかし!」
「理由ははっきりしません。ですが、現実にお姉さんは亡くなっている。そして、原因もはっきりとしている。その原因のせいで自殺した。これが、今の彼女の全てです」
「どうして、こんな事に・・・」
「あまりにもはっきりとしたイメージ、いえ、記憶があるんです」
「ショックで記憶がおかしくなったということですか?」
「どちらかというと、おかしくはありません。決して、おかしいことはひとつもないんです。受け答えもはっきりしている」
「悲惨な事故にあったのは確かです。ですが、理解が難しいですね。どうしてここまで彼女を追い詰めたのか。慎重に対応をしていかなければ」
「・・・お願いします」

7日目
「あなた、鏡を見たことはある?」
「ありますよ」
「その顔を見てどう思った?」
「懐かしく感じます」
「そう」
「あの・・・」
「何?どうして、姉はあんな死に方をしたんですか?」
「いいえ、死んでないわ。姉という存在は元々居なかったのだから」
「何を言って・・・」
「まぁ、まさか自分が自分を殺すなんて思ってもなかったでしょう。でも大丈夫よ、そのうち皆忘れてしまうから。あなたは、別人になってあの事件のきっかけに自殺したの。それは元に戻るための段階のひとつよ。そして、あなた自身の魂というべきものを妹に移した。だから、あなたは妹の顔をしているのに姉としての記憶がある。この点で、ご両親はかなり動揺しているわね。名前を呼んでもあなたは返事もしないんだもの。もちろん、これも準備が整うための必要な出来事」
「まさか、箱は、箱は返したわ!あの人にあげたもの!妹の体になったのよ、突然!意味がわからないわ!なんで、あなたが箱のことを知っているの?!」
「箱を私にあげるといっても所有者は変わらないのよ。だから7日後の今日、箱を開けた」
「え?私はあなたにあげてない。私はあの店の・・・」
「大丈夫よ、7日間耐えたのだから」
「苦痛を耐えたって何も変わってないじゃない!こんな、妹になって、私は死んで、あんな死に方・・・」
「望んだことでしょ?元のあなたに戻りたいって。今のあなたは死んだのよ、跡形もなくね。今日帰る家、間違えないでね」

窓に映った自分を見ると、それは、妹の顔ではなかった。

「嘘・・・」

8日目
「おはよう!」
「あ、おはよう」
「ねぇ、昨日のB組みの事件聞いた?!」
「・・・階段から踏み外して転んだってやつ?」
「もぉすっごい血だらけで、人間の形してなかったんだよー!マジ、気持ち悪かった」
「え?見たの・・・?」
「うん、見ちゃったんだよー。ほら、あの突然転向してきたあの子だよ」
「え?転向してきた子?」
「もぉ判別つかないってくらいひどかった!あれじゃぁ最悪だよ」
「ちょっとまって。転向してきた子が階段から落ちたの?」
「そうだよ。急に階段から飛び降りたって感じ。こけたとは思えなかったなぁ」
「・・・そっそうなんだ。今日、私モデルの仕事入ってるから、先に帰ってて」
「今や売れっ子のモデルだもんね。しっかし、人生わかんないものだよねぇ。別人になりたいなんて本探していたやつが、しっかりモデルやって自分の道歩いているんだから」
「本当、私はいい人生を送っていたのよね」
「何言ってんの?」

9日目
「ねぇ、あのB組みの死んだ子のニュース見た?」
「見た見た!」
「一家で心中だって?あれ、マジ?」
「とりあえず、家は全焼してたよ。俺んち、近いし」
「うっそぉ・・・」
「なんか、変な家族だって近所じゃ有名だったけどね」
「え?なんで?」
「おかしいんだよ。母親とか父親とか妹もいたはずなんだけど、実際に見たやつって居ないんだよ」
「なにそれ?どういうこと?」
「すっげーボロ屋だったんだよ、あの家。なのに一家四人で引っ越してきて、毎日あの家から一人であいつでてきてるのに、誰も居ない玄関に向かっていってきますとか言ってたしさ」
「うわぁ・・・なんか気持ちわるぅ~!!」
「大体、あの階段で死んだってやつも噂なんだろ?」
「まぁ、尾ひれついてるけど実際にあの子が死んだとかいうのは噂みたいだね」
「えぇー、でも見たっていってる人結構いるよー!」
「でも、警察も救急車も来なかったじゃん。普通、事件になるでしょぉ?そんな階段から落ちて形も判別できないほど潰れてたらさ」
「そうぉだけどぉ~」
「俺も、あの階段いたとおもうんだけど段々記憶が曖昧になってきて覚えてないんだよな。大体、あのB組みのやつがどんな顔だったとか言うのすらあやしくなってきた」
「存在しない子だったんじゃない、元々」
「なにそれ、本の読みすぎ!古本やめぐりもいい加減にしなさい!」
「えへへ、大丈夫だよ。もうすぐ、みんな忘れるから」

10日目
「どう?元に戻った感想は」
「あと一ヶ月の命しかないことを知りました」
「短い人生ね。でも、楽しんで。本来のあなたの人生を」
「だから、看板に書いてあるんですか?薬屋って」
「最適なものだけを、売る店だから」
「いくらですか?」
09:02  |  パンドラシリーズ  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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パンドラの箱 幸せの味

2008.11.23 (Sun)

「この箱を差し上げるわ。この箱は、あのパンドラの箱」
「パンドラの箱?」
「そう、7日間の苦しみに耐えればあなたの望む幸せが手に入る」
「7日間も?!」
「幸せを手に入れるための代償だと思えば楽なものよ」
「幸せが手に入ると確実なものなの?」
「そうよ、あなたの望む本当の幸せは受け取った7日後に箱を開けると訪れるわ」
「わかった。頂くわ」
「もし、7日間過ぎていないのに箱を開けた場合は契約が無効になる」
「うん」

一日目
学校へ行くと、今までがうそのような現状が起きた。
「おはよー!今日、自習だってよ。一時間目、超ラッキーじゃん」
「え…、あ、そっそう」
「何?どうしたのぉ?あのエロおやじの授業なんて最低じゃん!消えろってね」
「…そっそうだね」
クラスメイトどころか、学年の全員から無視されていた私。
何故、この女が話しかけてきたのか。
この女だけではない。
他の人間も、普通に話しかけてくる。笑顔で。
今までに私は経験したことのない現象だった。
どうやって他人と話したらいいのか戸惑ったが、無視されているときはそれが当たり前だと感じていた。
しかし、昼ごはんを食べるとき一緒に食べようと誘われ一緒に話しながら食べた。
それが、何よりうれしいと思った。
幸せだった。
こんな幸せってあったのかと。
驚いた。
ただ、一時間目にあった授業の先生は私の恋人である。
恋人という表現が正しいかどうかわからない。
そういう関係だけと割り切ったような大人の付き合いといえばいいのだろうか。
引き換えか、それとも私をつなぎとめておくためかお金をもらっている。
私は、愛情があれば、いやなかったとしても自分を見てくれるその存在がうれしいと思っていた。

二日目
昨日の一時間目の授業を行うはずだった先生は、自宅で自殺していた。
私は、その連絡を学校の放送で朝一番に聞いた。
涙が流れた。
そして、その放送が終わった後みなが私を見ていた。
そうか、もしかしたらみんなにばれてしまったのだろうか。
昨日は夢のような一日を過ごした。
そう、それこそまともな学園生活というものだ。
夢は夢なんだとそう思った。
「君、指導室へ行きなさい。先生たちと少し話をしよう。聞きたいことがある」
自殺していた先生の話をどう話すべきか。
それだけが、頭にあった。
自分はどうなっても、自分はいつも一人だったのだから。
失ったことはとても悲しいと感じている。
でも、彼には家族がある。
その家族を奪ってまで私は彼を独占したいとは思わない。
だから、彼をかばう言葉を捜していた。嘘でいいから。
生徒指導質に入った瞬間、物々しい先生方の険しい顔。
そして、見慣れない大人の女がいた。
「先生の遺書に、書いてあった。全部」
「え?」
校長先生の言った一言が私をどん底に突き落とした。
先生自身が、告白したというのか?
「あなたは、先生に共用されて性的虐待を受けていたのね。断れない性格、大人しいというあなたの気持ちを利用していた。もちろん、極秘に対応いたします。私は、児童保護センターのカウンセラーです。まず、あなたの体調の検査を行いたいので病院へ行きましょう。」
「あの…」
「なんですか?」
「先生の遺書には、なんと書いてあったのですか?」
「詳しくはお伝えできません。ただ、あなたに謝罪の言葉がありました。性的な関係を強要してしまったことについての…」
「そっそれは!」
「え?!」
突然の大声に室内の全員が驚いた。
「それは、誤解です。先生は、自分をかばったんです。その、自殺した原因は他にあると思います。私の事ではないと思います。その、私は先生のことが好きでした。でも、先生に家族があるのはわかっています。だから、その点は理解しています。割り切った関係でと…」
「これ以上は、カウンセラー室で聞きましょう。あなたは、精神的にもコントロールされているようですね。その気持ちは、嘘です。それを、ちゃんと理解しましょう」
「嘘じゃ…!」
校長先生が立ち上がり、窓際に行ってため息をついた後口を開いた。
「では、この先生との関係は認めるんだね?」
しまった。
「・・・・。」
「話は終わりだ。まず、カウンセラーの先生に従いなさい。」
教室に戻った私を待っていたのは、クラスメイトの涙をためた目だ。
どうしたというのだろう?
目線の対応に戸惑い、立ち尽くしていた。
すると突然、一人の女が飛びついてきた。
そして、そのまま泣き出した。
「聞いた。噂で聞いてたけど、まさか先生に。あの親父に…」
そういった後、声を詰まらせまさに嗚咽を漏らすという言葉が似合う泣き方だった。
私の一件がバレたことで、批判の眼を浴びるだろうという予測は外れた。
一体、何が彼らの気持ちをここまで変化させたのあろう。
あれだけ、無視しておいた人間たちが。
急に、私への対応は哀れみと親しみだった。
正直にいうと、気持ち悪いという思いと嬉しいという気持ちがまざっていて理解ができなかった。

三日目
カウンセラーの先生のところへ行けというのが学校からの指示だった。
カウンセラーの対応は、信じられないほど自分をいたわる対応だった。
かわいそうな子供。
性的虐待を受けた子供。
その、対応をしてくれる女医さん顔はまさに微笑みはとてもやさしいもの。
そうね、聖母マリアとでもいうような笑み。
そのやさしさは、母親のいない私には嬉しかった。
優しい手で触れてくれる。
優しい声で私の声を聞いてくれる。
その日、一緒に夕食を共にした。
外食を他人と食べたのは、人生で初めてだった。
幸せって、こんなことなのかな。
そう思った。
そして、しばらく学校は保健室登校になった。

四日目
保健室登校になったとはいえ、クラスメイトはちょくちょく顔を出して話に来てくれる。
自分への気を使ってくれる。
優しく。
笑って。
今までが嘘のような。
私も、段々とみんなとの会話が楽しいと感じてきた。
そして、会話も弾むようになってすごく幸せかもしれないと思った。
その兆候は、カウンセラーの先生もいいことだと言われた。
問題は、後、ひとつ。

五日目
問題のひとつである父親の存在だった。
父親の虐待は、小さな頃からあったものだ。
だから、これも日常と化していたため苦痛とは思っていなかった。
最初は、殴ったり蹴ったり。
暴力的な攻撃。
次は、タバコとかお酒を飲まされた。
ある時、髪を下ろした自分を見た父親は真後ろに自分を引き倒して上に乗っかった。
それは、小学生のときだったと思う。
それが、続いていたが先生との関係がばれた時はどうなるかと焦ったが鼻で笑ってもらっていたお金を渡しなさいということだけでそれ以外の攻撃はなかった。
だが、父との関係もどうして先生にまでわかってしまったのかが謎だった。
誰も、誰も知らないはずだった。
聞いてみた。
答えてくれるかどうかは賭けだったが。
そうしたら、噂だったけれどというクラスメイトの相談があたっという。
そしてそれに、ものみごとに私は引っかかってしまった。
自分で自白してしまったのだ。
大きなため息をついた。
家に帰ったら、どんな仕打ちが待っているんだろうかとそれだけが気がかりだった。
しばらく、ご無沙汰だった暴力は復活するのだろうというのは容易に考え付くことだった。

六日目
家に帰ったら父親が私を抱きしめて泣き出した。
おまえに母親を重ねていたと。
小さな頃のお前に暴力をしてすまないと。
仕事に子育て。若かった自分はどうしてもその両立が大変だった。
金を渡せといったのは、その金を相手の男につき返して関係を経たせるためだった。
どうしても、お前を人とに渡したくなかった。
それが、奪われてから気付いた。
だが、今更どうしたらそれを償えるのかわからない。
だけど、離れたない。一人にしないでくれ。
そう、懇願さた。
父親らしい言葉をはじめて聞いた。
父親らしい抱擁をはじめてしてもらった。
私の、大好きなお父さんが今目の前に出てきた。
自然に涙が出てきた。
そして、自然に手が動いてお父さんの背中に触れた。
幸せってこれなんだ。
そうだったんだ。
箱のおかげだろう。
明日が楽しみだ。

七日目
今日が苦しみの最後の日。
考えてみれば、おかしな七日間だった。
苦痛を引き換えにして、幸せを手に入れるはずだ。
だが、私にとってそれはすでに幸せだった。
苦痛ではない。
一体、何が苦痛だったのだろう。
わからない。
学校へ行こうとしたら、お父さんが今日は休んでほしいといってきた。
だから、わかったといった。
初めて、デリバリーでピザを取った。
好きなだけ、好きなものを頼んでいいということだった。
おどろいたけれど、お父さんの笑みが嬉しくて一緒に頼んだ。
どれにする?これにする?
笑いながら、そして、笑った私の顔を見ながら頭を撫でてくれて。
嬉しいと本当に思った。
沢山のご馳走を目の前に一緒にご飯を食べた。
食べ終わったら眠くなって横になって寝ていた。
ふと、目を覚ますと自分を抱きしめてお父さんが寝ていた。
起こさないようにゆっくりとかばんに手を伸ばして箱を取り出した。
そう、7日目が終わった。
私の幸せは、これからもっと素敵な時間が待っている。

箱を開けた。
そこには、綺麗な丸いクリスマスツリーに飾るオーナメントのような丸い形をしたものがあった。
取り出そうとした瞬間、全てが飛び出して目の前で弾けとんだ。
「うわっ」
避けようとして、飛び起きた。
なんだったんだろう?
これで、終わり?
箱には何も残ってない。
あの、綺麗な丸いものが飛び出して目の前で弾けとんだだけ。
キラキラとそのカケラが中を浮いている。
綺麗なそのカケラを見つめていた。
すごく綺麗で。
幸せがこれからもっと大きくなっていく。
あまりに綺麗だから、横で起き上がったお父さんに微笑んだ。
「綺麗だね」
そういったら、お父さんはにっこりと笑った。
すごく、優しそうな目で。
でも、なんか悲しそうな顔をして。
そして、すぐに首に両手が絡み付いてきた。
少しずつ力がこもって、泣きながらお父さんが私の首を絞めて。
どうして?
なんで?
その言葉がでない。
涙だけが出てきた。
体が動かない。
どうして?
幸せが待っているはず。
そう、願いがかなうって。

「自殺したかったんだろう?それを、お父さんが叶えてあげる。できることはこれだけだ。お前の望みを叶えてやる。」

それは、7日目前の望みだった。
今はもう違う。
ふたを閉じて無効にしたい。
でも、手が動かない。

幸せを味わって死ぬというのが苦痛だったんだ。
本当に、これ以上の苦痛はない。

これが私の望んだ幸せの形なの?
死ぬことが私の望みだった。

愛されて死にたいと。

それが、望みだった。
でも、愛を知ったら死にたくないって。
愛されるという意味を知らなかった。
こんなにも、自分が笑えることを知らなかった。
幸せは、もう、手に入っていたんだ。
それなのに、私は蓋を開けた。

この幸せは愛されて死ぬための用意された偽物?
だとしたら、悲しすぎる。
愛されて死ぬことが、こんなに悲しいことだったなんて。
こんな苦痛を最後に味わうのね。
でも、これが私の望みだった。
09:12  |  パンドラシリーズ  |  Trackback(0)  |  Comment(4)

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玉手箱

2008.11.20 (Thu)

帰宅すると、宅急便が届いているぞという置きメモがあった。
差出人蘭を見た。
もの見事に空欄である。
誰だよ。
送ってもらうような、通販をした覚えは無い。
品名を見る。
ワレモノという文字の上に、沢山の輪が囲んでいる。
よっぽど割れやすい物なのだろう。
品名は、玉手箱。
いや、送られても困るし。
玄関の前でじっとたっていると不審な目で近所の人間から見られていることに気付き鍵を開けて中に入った。
時刻は、20時を回っている。
宅配便のここに電話してくださいという番号へかけてみた。
「あの、すみません。宅急便届いてたみたいなんですが」
「あ、ハイハイ。えーっと、その紙に書いてあるNoをいっていただけますか?」
「759485768です」
「あ、ハイ。今からでも伺うことが出来ますがいかがいたしますか?」
「今から来てもらえるんですか?」
「近くにいますんで」
「じゃぁ、お願いします」
しばらくして、宅急便は無事届いた。
はやり、玉手箱と品物名には書いてある。
そして、差出人はやはり真っ白。
段ボール箱に入ったその包みを開けた。
きっちりと、クッション材に包まれた明らかに重箱のような黒い和風の紐で結ばれた箱がある。
クッション材を取り除き、箱を取り出した。
箱以外、何も入っていない。
玉手箱。
大体、浦島太郎じゃない。
俺は。
まして、亀も助けてない。
それよりも、竜宮城へさえいってもいない。
それなのに、この箱を空けたらじーさんになるってか?
いや、ありえないだろう!!
不条理すぎるだろう!
女も囲って、ハーレム楽しんでないし!何もやってない!
いや、そういう問題じゃない!
大体、玉手箱なんてあるはず無い!!
だが、はっきり言って気味が悪いという品物である事は変わりない。
どうしたらいいのだろう?
捨てるか?
いや、気になる。
気になるが・・・
開けたらどうなる?
どうしよう?
じーさんになったら、今日誕生日で23になったばかりというのに速攻でじじいかよ。
箱を横に置いて、コンビニから買ってきた弁当を食べた。
横目に見ながら、買ってきた弁当の味がわからなくなるほど考え込んでしまった。
馬鹿らしいという考えと、本物だったらどうしようという考えが音を立てているかのごとく頭を駆け巡る。あまりの速さで駆け巡るため、整理がつかない。
興味という言葉も加わってしまった。

意を決して、開ける事にした。
そう。
本物なわけがない。
そうだよ。
竜宮城に宅急便やが引き取りにいけるのか?
乙姫が地上に出てきてコンビニから発送でもしたか?
ありえないだろう!
・・・・・。

紐をほどく。
つばを飲み込む。
ゆっくりと、重い縦長の黒い箱の蓋を持ち上げる。
少しずつ。
ちょっと、抵抗があったので力を入れたらすっぽんと抜けるように開いた。
げ!
最悪の事態が目の前に起こった。
もくもくと白い煙。
どんどん部屋中が真っ白になる。
蓋を落とした。
「まじ・・かよ・・・」
だんだん、気分が悪くなってきた。
そのまま横になる。
このまま、じーさんになるのか。
なんで、俺なんだ?
もしかして、届け間違い?
あ、亀、助けたとか?
いやいや、亀なんて。
亀?
・・・・、そういや、亀の置物なら拾った。
先日、亀の置物があって。
道端に。
ぽつんと。
手のひらに乗るほどの。
気になって、拾った。
それ?
でも、竜宮城は?
綺麗な姉ちゃんに、もてなしとかないけど。
そこが、抜けてない?
そこで遊びまくった、浦島の太郎さんは過ぎた時間を取り戻したらじーさんだったんだろ?
遊んでないよ?
それなのに、時間だけ吸い取るつもりか?
白い煙リがだんだん薄くなってきた。
体がだるい。
本気でじーさんになったっぽい。
どうしよう、会社。
誕生日にこれ?!
こんな、こんなじーさんになるようなことしたか俺。
重たい体を引きずって起き上がった。
箱の底に紙が一枚あった。

誕生日 おめでとう。
まじで玉手箱って思った?(笑)
これ、ドライアイスだから。
凄い量つっこんでるから、はやく窓開けて換気しなよ。
二酸化炭素中毒になるから(笑)
妹より

だるい体を引きずって窓を開けた。
あけた途端、笑った。
大笑いした。
俺って、何真面目に考えてるんだか・・・。
玄関の開く音がした。
かぎ閉めるの忘れた。
そうか、そういえばこれ冷蔵で送られてきていた。
その時点で気付けって話だよな。
妹がからかいに来たのだろう。
あまりのことに、怒る気力も失せて本気であせったことを報告してやろう。

「あれ?おじーちゃん、なんでお兄ちゃんの部屋に来てるの?」
09:53  |  パンドラシリーズ  |  Trackback(0)  |  Comment(4)

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