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ベランダの世界

2011.04.24 (Sun)

明日仕事だというのに寝付けない。
寝返りを打ちながらも寝る努力を試みるが、寝付けそうに無かった。

見慣れた天井。
なれない照明。

いつもの、溜息。

「タバコでも吸うか」

時計を見ると既に二時を回っている。
おきっぱなしにしたタバコを探す。
見つけてはまた探すライター。

大抵、机の上かスピーカーの側。

明日は出張で六時に起きなければならないというのに、どうしてこういうときに限って寝付けないんだろう。
遮光カーテンを開け鍵に手をかけたとき目の前にあるアパートの玄関が開くのが見えた。

こんな時間に?

鍵を開けベランダに出ると二階から見える小さな景色のなかでオレンジ色に光るひとつの部屋が目立つ。
真夜中の二時に来訪者というのは珍しい。
若い女が中年の男性が部屋に招き入れられ、溢れんばかりの笑顔を見せる。
玄関は閉めら、小さな窓が開けっ放し。

部屋の中は見えている。

興味があるわけではないが目が追ってしまう。
部屋の中で行われるのは愛の無い行為。

もしかして・・・。

予測通りお金を渡されると女の行動は激しくなる。
男はただ目の前にある食料を食い漁る動物のように見えた。

淡白な関係。

昔は身売りなど誰が好き好んでした女など居たのだろうか。
吉原なんて言葉は誰でも聞いたことがあると思うが、
遊女という存在は大抵が借金が払えない親が娘を売り飛ばす場所だったはず。
娘達は終わるはずの無い借金を背負わされ、吉原で春を売る。
病気になれば治療などされることなく捨て置かれ、死んでしまえば寺に投げ込むだけの存在。
確か死体と十円を投げ込むから十円寺とかいうのではなかっただろうか?

そんな物に自ら落ちるのだ。

性病なんて関係ないのかな。
病気の恐ろしさもさることながら理性を取得した生き物にとって感情は重要な要素だと思うが、それを超えさせるお金という存在は人を滅ぼす魔物なのだろう。
とはいえ、仕事しないと私も食べていけないし家賃も払えない。
その現実は変わらないから手段が違うだけだといわれればそれまでだ。

安定した職種として選んだ公務員。
ただ、その中で感じるのは私の苦労した学生生活はこんなものになる為だったのかと自問自答の日々。
よくわからない進む将来に不安が無いといえば嘘になる。

正反対の彼女は今の人生をどう感じて生きているのだろう。

眠れない朝を向かえ出張の身支度を整えた私は家を出た。
偶然、あの女性が玄関から出てくる。
一瞬私はハッとした顔をしてしまったがやり過ごそうと目線を誤魔化した。

「二階の人でしょ?」
「え?」

まさか見られているのはこっちも同じだったとは。

「私がしてるの見てたんでしょ?」
「・・・いや」
「見てたのを責めてるんじゃないんだ。聞きたかったんだ、まともな人生の人に」
「は?」
「あなたは普通に会社勤めで生きてるんでしょ?それって楽しい?安定した収入で生きて幸せ?」

聞きたかった。

私が彼女に聞きたかったこの質問に私が答える事になろうとは。

答えが出なかった。
私はどう思っているのか。

「私はね、幸せだよ。愛されてるもん、その時だけは私を見て私だけを感じてくれてるその瞬間が幸せなの」

そういって笑った「カオル」と名乗った女性は幸せそうに見えた。
褒められた人生でもうらやましいと思う人生でもないが、人は幸せを手にするとこうなるのかと感じた。


同じ空の下にいるというのに。


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テーマ : 超短編小説 - ジャンル : 小説・文学

21:44  |  ANDIS  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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ANDIS mission4

2010.10.20 (Wed)

「今日の当番はソウタだから、きっと和食だね」

広いリビングルームにある50インチのフルハイビジョン液晶テレビ。
インテリアは古いゴシック的な洋館を模したものが多い。

すべて、大家の趣味であるが三階にあるこの共同キッチンがある古びた部屋にはとても似合っている。
司のいるメイド部屋は三階にあるが203という部屋番号がある。

そのため、203という部屋番号は実際は存在しない。

三階に住むユキは夜の仕事をしている。
司を連れて帰ってきたカレンは実は男だという事が判明した司にとって
目の前に出されたソウタの夕食はまったく味がしなかった。

「それで司はどこで働いていたの?」
律の言葉に真っ青な顔をした司の顔色は真っ白へ変化した。
「え?柴原のところだよ」
「マジで?司はそういうのって経験あったんだ?」
「無いね。俺が初の客だったからよかったけど、もし違うやつだったら今頃首つってると思う」
「そこまでいうか?」
「司って子供だと思うけど、実年齢は」

司は蒼白のまま箸を動かしていた。

集まった視線に気づいた司は声も出ずYESの意味で頷いた。

「なんにしても、生活のために体を売るって事の覚悟がわかってないガキなんだよ」
「経験者は語るってやつか」
「そうだな。まったく、その通りだ」

経験者・・・?

司はその言葉が引っかかり目が覚めた。

「あの・・・」
「おいしいか?」
司の言葉を遮りカレンはにっこりと笑い話しかけた。
「あ・・・はい。あの、御飯代払いますから。今は無理ですけど、いつか・・・」
「いいよ。食費は家賃に含まれてるから」
「へ?!」
「俺達の場合は、だけどね。司の契約は知らない」
「えっと・・・どうだっけ?」
「なんにしても、司はもう少し自分の立場と年齢は考えて仕事探した方がいいよ。目先の金額だけに釣られたってどうせ長続きしないし、第一鳴いて帰ってくるのがオチ」
「・・・・」
「酒の相手をする商売ならまだしも、風俗は行き過ぎだと思う」
「とはいえ、カレン。お前がどうこうできるのか?司の生活を」

律は煙草を取り出し一本カレンに渡しながら聞く。

「ユキの店においてもらえないかと思って。打診はしてみるよ」
「ユキの店?!それはそれで、大問題じゃないか?!」
「柴原の店よりはマシだろ?」
「どっちもどっちだと思うが・・・」

煮物を作り終えたソウタが席に着く。

「で、お味はどうですか?」

にっこりと司に聞くその顔は幼い感じを漂わせる。

「おいしいです」
「よかった。御飯をおいしいと感じられるなら大丈夫だよ」
「え?」
「笑えるならよかった。取り返しのつかないことになりかねないからね。柴原も結構大変だったんだから」
「・・・柴原さんをご存知なんですか?」
「うん。みんな知ってるよ」
「お友達です・・・か?」
「友達という仲かというと難しい質問だね。知り合いではあるけれど友達いえるほどの距離感ではない気がする。カレンがつれて帰ってきたんなら、わかるだろうけれどあいつは柴原の客だからね。
俺も含め他の皆が柴原との関係はどうか知らない。
カレンは恋愛をしないやつだから、あぁやって風俗にしか行かない性格だというのを
カミングアウトしているからそれを皆は理解している。
まぁ、何でそんな考えなのかとか深く聞いたことは無いけど」
「俺言ったことなかったっけ?」
「まぁ、聞いてないしね」
「そりゃそうだね」

司はこの大人たちの関係が理解できなかった。
目を丸くしたまま、ソウタの作った食事を終え風呂に入れという律の言葉のまま行動した。

「なんじゃこりゃ?!」

司は風呂に入って驚いた。
風呂桶から足が生えたような映画に出てきそうな外国の形状をしている。
薔薇の香りがたちこめ、シャンプーなども高級なもののようだ。

「これ、ユキさんの趣味なのかな・・・」
「そうだよ」

勝手に開けられたドアのそこには律が立っていた。

「ぎゃぁ!!」
「そう恥ずかしがらなくても・・・」
「だ・・・だって!!」
「バスタオル、ここに置いておくから」
「あ、ありがとうございます」
「タオルはあの棚にあるから」
「はい」
「それとさ、誤解があるようだから言っておくけど僕、生物的には女だからね」

「へ?!?!」


もう何がなんだかわからないアパートだというのを理解した司だった。





10:15  |  ANDIS  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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ANDIS mission 3

2010.10.16 (Sat)

「じゃ、今日から仕事よろしくね」
「はい!」
「えっと・・・初めてだったよね?この仕事」
「はい!」
「じゃぁ、決まりがひとつだけあるけど性的なサービスは一切禁止だからね」
「はい!」
「あと、お客さんとプライベートで会うのも禁止」
「はい!」

司は緊張の度合いを限界に感じながらも必死に笑顔を努力していた。

キャバクラのように見える店内だが、実は単なる風俗の店である。
司は幼い頭で必死に考え生活するのにまったくの貯金の無い状態で生きる事を選んだ。
正しいかどうかといわれれば、あまり進められない方法ではあるが許せるギリギリのラインでこの仕事を選んでいた。

「触らせるだけ・・・ね」

呆れたようにつぶやく司の横には、普段自分達を律する立場の大人が次々と沸いて溢れかえる。
「時間をかけて出来上がったのがこんな大人・・・ね」
司の横を通り過ぎたとても美人な顔の女性がこぼして言った言葉。
その通りだと思った司は指定された部屋に入り待機した。

ピンク色の店内。
薄暗い証明。
長くやわらかいソファーがひとつ。
小さなテーブルと見たこともない何か。
何に使うのか理解できないそれに司は単なるインテリアだと考えた。
カーテンのようなうす布が店内の天井から垂れ下がり視界を遮る様に配置されている。

トントン

壁がノックされる。

「はい?」

壁に向かって返事をすると、先ほどの女性が壁の隙間から司の部屋を覗き込んでいた。

「ここ、隙間があるから。何かあったら言ってね。隣の柴原、よろしくね」
「よろしくお願いします。つか・・・いえ、えっと・・・」
「名前は決まってからでいいよ。新人さん」
「あ・・はい」

司の源氏名はまだ決まっていない。

「いらっしゃいま・・・」
「・・・マジで?」
「・・・」

司は真っ青になった。
入ってきた客は驚きの顔になった。

「ここに今日新人が入るって柴原から教えてもらってたんで来たんだけどね」
「いつも、来られるんですか・・・?」

下を向いた司はばつ悪そうに話す。

「うん。俺、恋愛とか苦手でこういうビジネスで割り切った方がわかりやすいから」
「割り切った方が?」
「うん。でもまさか、こんな店を選ぶとは驚いた。その覚悟はあるの?経験も?」
「・・・」
「ま、俺が初の客でよかったんじゃない?途中でイヤだといって逃げやすいでしょ?」
「そっそんな事しません!!」
「ふ~ん。じゃ、遠慮しなくいいんだね?」

ここで「うん」といえない自分に苛立った司は目に沢山の汗を溜めて溢れさせた。

「涙?」
「大量の汗です」
「汗ね・・・」

苦笑する男は遠慮せず続ける。
どんどん奥へすり抜けていく手は止まらない。

「ぎゃぁ!!」

悲鳴というよりは奇声を上げてソファーから転がり落ちた。

「どっどうした?!」

驚いた男は手を伸ばし抱き上げた。

「く・・・くすぐったいです・・・それは我慢できません」
「くすぐったいって・・・おなか触っただけで・・・」
「む・・・無理です。それだけはご勘弁を・・・」

あまりに怯える顔を見た男は腹を抱えて笑い出した。

「それじゃ、何も出来ないじゃん」
「あの!!この仕事してる事はアパートの皆には内緒にしてほしいんですけど・・・」
「なんで?」
「え?!だって・・・あんまり・・・その・・・」
「別に平気だよ。皆大人だから」
「え?どういう」
「他人のことなんて、どうでもいいんだよ。他人の人生に首突っ込むほど責任も持てないし。
自己責任で行動するしかない。気づいていると思うけど、あのアパートは訳ありしか来ないからね」
「はい・・・」
「でも、俺口出していい?」
「は?!」
「司は今日でここ辞めて、とりあえずユキの店の方がいいと思う」
「話し違いませんか?!」
「いいから、いいから。早く支度して!帰るよ!」
「いや、あの、ちょっと!困ります!本当にお金ないから今日食べる御飯も・・・」
「柴原!こいつ、失格!連れてかえるから!」

手を引っ張る力は振りほどく事ができず、夜の街に叫び声と強引な言葉が響いた。

「ごーはーん!!」

司にはその言葉だけが頭を支配し、ただただこの先の生活が心配だった。


「で、つれて帰ってきたの?」
紅茶を注ぎながら律は呆れた声で話しかけた。
「そう」
「仕事に口出しするのは賛成できかねるが、何でまたそんな面倒な事を?」
「律って相変わらずだな。俺は心配な事はちゃんと心配だと相手に伝えるの!」
「だからってお前が司の生活面同見れるわけじゃないだろう?」
「そうだけど・・・」

明るい共同のキッチンがある部屋に帰ってきて司は気づいた。
この男性が自分の考えている人ではないと。

「私てっきり律さんだと思ったんだけど、あなたは・・・」
「え?誰かわかってなかったの?」
「律さんだと思ってた」
「よく言われるんだよね、この格好してると。俺、カレンだよ」
「・・・マジで?」

その言葉の後に、盛大な司の腹の音が部屋中に響いた。

「い・・・いやぁ!!」

顔を真っ赤にした司は豪華な食卓テーブルクロスの中に入り込んだ。

20:54  |  ANDIS  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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ANDIS mission 2

2010.10.15 (Fri)

「ここが司の部屋だよ」
「ここですか?!」

一面に広がる広いリビング。
二十畳ほどある広さ。
飛び出した空中庭園のようなベランダは屋根があり雨の日でも使用できるようになっている。
インテリアは少し異国を漂わせる雰囲気。
古びたシャンデリアが部屋全体の統率を取っているかのように鎮座している。
中央には王室のような背の高い椅子が七個。
長いテーブルに色あせたテーブルクロス。
中央には生花が生けてある。

ここはペントハウス。
一番上の階に存在し、通常は家賃が一番高いとされる位置にある。

「ここはペントハウスっぽくみえるけど共同のキッチンだから」
「え?」
「各部屋にキッチンはあるけど使用できないんだ。助け合いの精神が必須なので、食事は当番制。
司の部屋は横にある物置に見えるだろうけれど、あれが個人の部屋。ベッドくらいは入るよ。
それ以外は、向こう側の同居人のスペースを使って」
「使っていいんですか?」
「うん。使うしかないし、物置けるスペースなんて無いし」
「そうですね・・・」
「あぁ、一応言っておくけどあいつは男だから」
「はぁ・・・」
「会えばわかるよ。同居人としても最適だと思うけどね」
「最適ですか?」
「うん、女の人と一緒にしてあげたいという気持ちもあるけどね」
「はぁ・・・」

ベランダ伝いに入ってきたこの部屋はもったいないほどの広さが存在する玄関。
司のベッドが置ける部屋より広いのが現実だ。

「玄関の方が広いんですね。私の部屋より」
「うん。たしか、あの部屋メイドの部屋だったらしいから」
「メイドさんですか・・・」
「うん。大家さんが言うには」
「はぁ・・・」

足音が近づいてきた。

「すいませーん!ぴょこたん引越しですけどー!」
「あ、はーい!」

何故、この部屋が203だとわかったのだろうか。
表になんて書いてあるのだろうか。

玄関を開けると引越し業者が立っていた。
「あの、荷物はどこへ?」
「えっと・・・」

さっき着たばかりの部屋で、突然相部屋と判明した状況下。
どこにおいて欲しいなど指示できるはずも無く、開いた口は動く事を忘れたようだった。

「寝具周りのものは、奥にある小さな部屋へ。それ以外は、このリビングにおいてください」
「え、あの・・・律さん?!」
「後で皆で片付ければすぐ済むよ。引越しのとき皆手伝うのが当たり前だから気にしないで」
「いや、そうじゃなくて」
「何?」
「一応私女性ですよ?あまり男性に私物をあれこれ見られるのは・・・」
「気にしなくていいよ。気にしてたら生活できないし。何かするってわけじゃないのは
信用してもらうしかないけど、家族と同じだと思うのがベストだよ」

田中 律は次々と司の荷物を整理し片付けていった。
司はただ呆然と見ているだけで集まってきた子のアパートの住人達に驚いていた。

「あらあら、あなたが新しい住人の方ね」
「あ、はい。相野ヶ原 司です。よろしくおねがいします」
「あいのがはらさん?珍しい名前ね」
「はい。長いからアイちゃんとか呼ばれてました」
「司さんはお仕事何してるの?」
「今日から仕事なんですけど、サービス業です」
「サービス業・・・?」
「はい」
「私もある種のサービス業かしら?私は202の花蓮(かれん)。お店の名前は字を変えて可憐としてるわ」
「お店ですか?」
「えぇ。男性とお風呂に入るのよ」
「お風呂?」
「そう」

司には理解できなかった。
男性と風呂に入るという職業が。
単なるソープ嬢である。

「新入りさん、俺は101の颯太。そこの律と同じ大学生」
「大学生なんですか?」
「律は研究生だけどね。俺は3年」
「大学ってあのそこにある大学ですか?」
「うん。美大」

あと二人の住人が居るはずだが今のところ見当たらない。

「引越し作業終わったよ。寝具類は司の部屋に運んでもらったから荷解きは自分でしてね」
「ありがとうございます」
「あとさ、さっき仕事用っぽい服が出てきたけどあれはないと思う。
ここの住人に指導してもらった方がいいよ。じゃないと、クビになるんじゃないかな」
「そこまで言いますか・・・」
「コレは無いよ。場末のバーだろ」

律が見つけた服を見たカレンとソウタは噴出して飲んでいたお茶をぶちまけた。

「コレは無いわ」

大爆笑である。
司は顔を真っ赤にしたままうつむいた。

「ま、ちょうどいいじゃん。ここの住人がファッション系とかすごく知ってるから
教えてもらえばいいよ。君の体格なら借りる事もできると思うし」
「え?貸してもらえるんですか?」
「うん。あいつが一番服持ってるし。ここの部屋の家賃払えるくらいの額を稼いでるからなぁ」
「そういえば、ここの住人ってどんな人なんですか?」

司の言葉を聞いた三人は目を合わせ、同時に答えた。

「オカマ」

「ただいまぁ~ん」
その声が部屋に響き、司は声の方向にくるりを顔を向けるととても綺麗なお姉さんが立っていた。
「こんにちは・・・」
「あぁー!あなたが新入りさん?!やっだーん!かわいいー!!」

・・・この人がオカマ?違うよね、知り合いかなんか?

「あの、相野ヶ原 司・・・です」
「あーそうそう!変わった名前の人だったよね!」
「私はユキ!よろしくね!」
「ユキさん・・・」
「そう!私、男だから」

・・・やっぱりそうなんだ

「男性に・・・見えないですね」
「仕事上オカマにしてるけど、別にそんな趣味は無いんだけどね」
「じゃぁ、何で女装なんか」
「これって整形も何もしてないんだけど、こんな体つきなの。生まれつきなんだけど性別上は男なんだよね。
気持ちっていうのかな?そういうのも男性なんだけど、完璧な男性とはちょっと違う感じ。
どちらかというと女性よりみたいだけどね」
「難しいですね・・・」
「聞いたこと無いかな?両性具有ってやつ」
「両生類ですか?」
「まぁ、そんなもんだよ」

苦笑しながらユキは答えた。

友紀と書いて本当の名前はトモキなんだよと小さな声で教えてくれた。
よくわからないが、女性の体つきをしているけれど心は男性なんだそうだ。
あれ?
でも、女に興味ないって言ってた律さんの言葉は?

大人ってよくわからない。

「司、仕事は何時から?」
「六時からです」
「そろそろ用意した方がいいね」
「もうですか?まだ、五時ですけど」
「ユキ。こいつ、仕事にコレ着ていくつもりだったらしい。どうにかしてくれ」

律が服を見せた瞬間、ユキは絶句した。

「子供ね・・・」

司はユキの部屋に連れて行かれ化粧をされる。
ヘアメイクもばっちりとしていく。
どんどん変わる自分の姿に驚きの意味で絶句していた。

「司ちゃんは綺麗な顔立ちしてるわね。でも、あなた子供ね。すぐわかるわ」
「そう・・・ですか?」
「十五歳くらいかしら?」
「その通りです」
「やっぱりね。年齢詐称は簡単なように見えて意外と大変だからね。ばれたら大変だからちゃんと変身しなさい」
「止めないんですね。大人なのに」
「人生は人それぞれその人のものよ。選んだ道に対して手助けできるならするけれど
よほど間違った道じゃなければ手出しはしないわ。それが大人よ」
「冷たい感じがしますね」
「あら、何言ってるの?あなたはもうわかってる人だと思ったんだけど」
「確かに、そうなんですけど」

ヘアメイクが終了すると、すぐにユキは服を探し始めた。

「そうだ。部屋なんだけど、私はこの301の借主。この301の規定はキッチンを開放し全員で使用する事。
それと、メイド部屋に人を入れたら共同で部屋は使用する事ってなってるの。
だから気兼ねせずに私の部屋のテレビとかも使ってね。
電気水道料込みの家賃五百円って話だったでしょう?」

「はい」

「ただし、プライベートもあるのであの奥の部屋の寝室は立ち入り禁止。
私もメイド部屋には入らないわ。出来れば男を連れ込んで泊まりはやめてね」

「そっそんなことしません!!」

「初々しいわね。まぁ、律には気をつけなさい。あの人、愛を欲しがるけれど埋め合わせのためだから」
「え?」
「あ!ほら、もう出なきゃ!間に合う?!」
「はい!行ってきます!」

飛び出した部屋からリビングを通って玄関に行くと、途中皆の目が驚きの顔になっているのが見えた。
似合ってないのかな?
気になりながらも初仕事に向かった。

「ユキ、そういえば司って何の仕事してるの?」
「え?律しらないの?あなたがあんな服持ってるからキャバ嬢かなんかだと思ったけど」
「そうなの?」
「さぁ・・・」





09:00  |  ANDIS  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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ANDIS mission 1

2010.10.14 (Thu)

レンガ造りのアパート。
錆びたアパート名のローマ字が辛うじて飾りとして機能している。

「203ってどこ?」

見当たらないその部屋番号に首をひねっていると、煙草を咥えた学生さんらしき人と目が合った。
「もしかして、203の人?」
「・・・はい」
「あぁ、ならわからないよね。203なんて無いから」
「は?!」
「こっち」

学生さんについていくと彼の部屋らしき玄関前にたどり着いた。
「あの・・・」
「ちょっと大家さん旅行に行ってるから、しばらく帰ってこないと思うよ」
「え?!でも、私今日引越しだってわかってるし・・・」
「そういう人なんだよ。引越しや来ちゃうから、俺の部屋のベランダから入って玄関開けるしかないね」
「そんな事できるんですか?」
「あぁ、このアパートベランダが繋がってるから出来るんだよ」
「防犯上ありえないですね・・・」
「あれ?広告に書いてなかった?近所の繋がりと助け合いの精神が必須ですって」
「あぁ、あれ。確かに書いてありました」
「そういうこと」
「そういうことって・・・」

彼が玄関を開け部屋に入っていくと手招きする。

「お邪魔します」
「こっち。ベランダ」

想像以上に物が無い部屋で、生活感の無い空間。
畳まれた洗濯物が視界に入ってしまう。
目を逸らしつつベランダに出た。

「へ?!」

そこは驚いた空間で、とてもベランダとは思えなかった。

「これが、必須条件」

同フロアの住人の洗濯物をたった一人の女性が干していた。
「あら?新入りさん?こんにちは!」
穏やかな笑顔を見せる女性。
「こんにちは・・・」
「どちらのお部屋ですか?」
「203です」
「え?!203・・・?」
「はい」
「えっと・・・」

女性は悩んだような困ったような顔をしている。
どこにそんな要素が?

「203だから、あいつと相部屋って事だよ」
「あ・・・そういうことなのね」
「相部屋?!そんな事聞いてないですよ!」

驚いた。

ルームメイトが居るなんて聞いていない。

「うん。言ってないと思うよ。大家さん、すげーのんきな人だから」
「いやそんな簡単に・・・」
「大丈夫。あいつ、女に興味ないから」
「そういう問題じゃなくて!」
「契約書にどんな条件も了承する代わりに家賃は五百円って馬鹿みたいな書類にサインしたあんたの責任だよ」

何も言い返せなかった。

そう、家賃が五百円という格安の家。

家出少女の私にはもってこいだ。
といっても、家出をしたくてしているわけではないのだけれど。

「で、そのお馬鹿さん。お名前は?」
「相野ヶ原 司です」
「司?」
「はい」
「女の子だよね?」
「はい」
「珍しいね。じゃぁ、司。これあげる」

握られた何かに対して手を差し出した。
手のひらに落とされたキーホルダー。

「それが、司専用」
「決まってるんですか?」
「うん。前住人から置き土産」
「え?前に住んでいた人から?」
「そう。馬鹿は司一人じゃないんだよ」

そういうと大学生の彼はちょっと寂しそうな顔をしてみせる。
わけありって事だろうか?

「ところで、あなたのお名前は?」
「田中 律」
「田中さん」
「律」
「律さん・・・?」
「そう。それが決まり」
「はぁ・・・」
「ところで、会社はどこに勤めてるの?」
「いえ、私まだ学生です」
「え?そうなの?みえなかった?どこの大学?」
「いえ、中学生です」
「は?!」

老け顔の私はいつもこうだ。
引越しやさん遅いな。
部屋もどこかわからないし、いきなり相部屋だし、不安いっぱい。

どうしよう。

私は今日からここに住む。
人生初めての一人暮らし。

そして、人生初の仕事は年齢詐称します。
14:34  |  ANDIS  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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