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2008.12.31 (Wed)

冷たくて 空を見ると暗く光が無い世界

翼が役に立たず
飛べなくなってしまった
真っ暗な世界から君の光を集めて世界を白に塗りかえた
その世界を持って
その光を集めて
僕は今ここに来た

星を持って
君に届ける
君に会うための
大切な鍵となるであろうこの星のカケラ

けれど、君の心が僕を殺そうとしている
悲しみに満ちて
僕が側にいることを忘れている

気がついて
僕は君を愛していることを
気がついて
僕は君の側にいることを
気がついて
僕が君を探していることを

願い続けるよ
祈り続けるよ

君の幸せを
僕の幸せを

目を閉じないで
僕を見つけて

大丈夫 怖くないよ
今度は僕が君を迎えに行く

大丈夫
約束しただろう
思い出して
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08:31  |  星に願いを  |  Trackback(0)  |  Comment(4)

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お金と強盗と居合わせた真犯人

2008.12.30 (Tue)

それは、銀行が終了する5分前のこと。
すっかり忘れていた銀行へ入金するために、普段使わない体力を極限まで消耗して走った。
ぎりぎり間に合った銀行へたどり着いた時に「いらっしゃいませ」ではなく、はじめて「動くな」という声をかけられた。
「動くな」といわれても、その声が聞えた方向を振り向きたくなるのは自分の状態を確認したいという本能的なものだろう。
なんとなく、言われてもいないが両手をばんざいしつつちらっと後ろを見ると大きな銃を持った目だし帽を被った男が自分にその銃口を向けていた。
こんな状況下であるというのに、自分は「入金が間に合わないんですけど!」という事が何よりも頭をよぎっている。
現実味がないせいだろうか。
銀行は、多分沢山お金があるところ。
銀行の置く深くにあるであろうどでかい金庫の中には、多分、沢山の紙なんだけれども物と交換できる不思議な力を持ったお金というやつが積まれている。
どっさりと。
それは、人の生活を潤す物であり、生活から全てを支配している。
金さえあれば何でもできる。
多分、それは、本当のことだと思う。
愛情も金で買える。
偽者でも、嘘だと気付かなければ、愛に変わりは無い。
そんな魅力を放った紙切れ。
これを何枚持っていて、どの種類を持っているかで、その人間がどれだけのキャパシティーがあるかわかるわけだ。
どれだけ持つかということに関して、手段で言えば働いて稼ぐというのが通常当たり前の話だろう。
よほど、お金持ちで遺産などで暮らしていけるくらいたんまりと持っていれば働かなくてもいいわけで。
働いても生活していく上でどんどん減っていくし、貯めようとしても中々たまらないのが現実。
更に、追い討ちをかけるように景気は不況の一途をたどり能力の無い人間はお金を会社から追い出されることになる。
これも、自業自得といえばそれまでだ。
会社にとって利益になる存在であれば、追い出されることも無い。
つまり、その程度の価値しかないという通知表だ。
わかりやすいものだ。
学校では、いくら通知表が一番下でも学校を追い出すことは無い。
お金を払っているのは、自分たちの親なのだから。
お客様である以上、注意はしても、追い出すことは無い。
学校の名を貶めるようなことを居ない限りは。
簡単にお金を稼ぐという方法は、限られている。
その中のひとつ。
それが今、自分の居る場所で起きている。
銀行だ。
人のものをとってはならない、そう教えられてきたとしても手段を選ぶ余裕すらなくなるほど追い詰められれば人間なんでもするってのが本能だと思う。
で、自分の価値は今、人質となったわけだ。
銀行も終わりかけていたので、客の数も少なく合計で10人ほど。
職員は15人ほどだった。
強盗の皆さんが客の中にも混じっていたので、客はあっという間に減り客は5人となった。
つまり、5人は犯人の仲間だったということだ。
手際よく、色々調べつくしていたのだろう。
何もかもの工程を素早くこなしていく。
私たちは窓口の前に座らされ両手をあげろといわれ銃口が自分たちを見つめている。
「入金間に合わなかったな」なんてことを考えている場合じゃないんだが。
せっかく走ってきた先に飛び込んでこのような事態。
もし、銀行に間に合わなければ私は巻き込まれなかった。
人質という価値が出来ることは無かったと思う。
「金がある場所へ案内しろ」という強盗の一人Aさんとでもしよう。
皆、目だし帽にサングラスなので、Aさんと名づけたところでAさんが誰か判別できるわけではない。
Aさんは銀行員の女性と年配の男性を連れ奥へ消えていった。
私はというと、こんな時にトイレに行きたくてたまりませんでした。
で、「あの、トイレ行きたいんですが。それと、手を上げっぱなしだときついので何もしないからおろしてもいいですか?」と銃口を向けているBさんに聞いてみた。
「注文の多いやつだな」
「人質だって事は理解できてます。その上で、私が足掻いたところで何の得も無い。なら、大人しく人質になってますので。できれば、その人質の間は少しの自由が欲しいです」
「変なやつだな、殺したっていいんだぞ」
「殺したら、人質の価値はなくなりますよ。それこそ、駆けつけた警察官は手段問わず攻撃できるでしょうね。殺してもらって逆にありがたいとか思うんじゃないんですか?」
「警察は市民を守る集団じゃないのか?」
「本当に守る集団なら、一切の犯罪も犯さない完璧人ですよ。そんなの、人間でいるわけないじゃないですか」
「なら、なんだ?あいつらは」
「その権力を利用して人生を安泰に送ろうと考えている自己中心的な組織なんじゃないですか?建前として、ある程度の騒がれた事件に関しては動いてもそれ以降なんにもしてないでしょ?どうせ」
「詳しいな」
「憶測ですよ、そう感じられる情けない世の中になったってことですよ」
「そうだな・・・」
「あの、トイレ・・・」
「わかった、おい、お前ついていけ」
頷いたCさんがついて来た。
Cさんは一言も話さずじっと私を監視して、いつでもぶっ殺してやるというような雰囲気をかもし出している。殺気だっているのは、自分たちもそれだけ危険なことをしているという自覚はあるようだ。
戻る途中自販機があったので、「ジュース買っていい?」というとCさんが頷いた。
お財布から小銭を取り出し、ジュースを4本買った。
それをもって、今まで座っていた位置に戻り座った。
隣に居合わせた小さな子供二人とその母親であろう自分より若い女の人。
子供は母親にしがみつき泣きじゃくっている。
声が五月蝿いといわれないだろうかと怯えているのだろう。
母親は自分にしがみつかせ鳴き声を最小限にしようと必死になっていた。
「ジュース買ってきたよ、飲む?」
そういったらきょとんとした顔して、ジュースを手にとった。
あれだけ泣いたんだ。喉もからからだっただろう。
「お母さんもどうぞ」
お母さんには暖かいココアをあげた。
震えている。
「大丈夫だよ」
何の根拠も無い言葉だが、そう言った。
私も暖かい飲み物を飲んで飲み終わったとき、声が響いた。
大音響で。
「無駄な抵抗はするな!出て来い!」
一気に緊張が走る。
窓という窓は、全部ブラインドが下がって見えなくなっている。
外からも中がどういう状態かは把握して無いだろう。
私は、着ていたコートを脱いで子供たちにかぶせた。
「寒いだろう、被っておきなさい」
と、子供たちには微笑みながらかけた。
そっと母親の耳元で囁いた。
「窓ガラスを割って入る可能性があるから頭からかぶせておいたほうがいい」と。
「通報したのか?」
「わからん、こっちから通報は無理だ。システムを切ってある」
「切った時点で自動的に異常値になるんじゃないのか?」
「もちろんだ、その点はきちんと対処している」
「通報システムじゃないとすればなんだ?」
「ブラインドが下がっているのがおかしいと考えた通行人が居たとか?」
「15時過ぎれば銀行は閉まる。おかしいと考えるほうがおかしいだろう」
「じゃぁ、なんだ?」
「わからん」
「くそっ、後どのくらいだ?!」
「まだ時間がかかる、全部持ち出すには」
「途中でもいい、脱出の準備にかかれ」
「わかった」
「お前たちは動くな、いいな」
Bさんは、私たちの見張りをやめるつもりは無いらしい。
ぎりぎりまで見張っていらぬことをしないようにと監視していたいのだろう。
どうやら、不測の事態というのが起きたようだ。
「もう無駄な抵抗はするな!そこにいることはわかっている!」
更に、警察の声が煽りをかけて焦らせる。
強盗の皆さんは行動が顕著におかしな動きになっている。
「落ち着いて計画通りに行動しろ!」
それに一括を入れたのはBさん
どうやら、リーダーか?
突然、電気が落ちた。
もう日も落ちて真っ暗だ。
目が慣れない。
まるで見えない。
ガラスの割れる音がする。
沢山の音が響いて、何が何の音なのか判別できない。
いきなり失われた明るい光のせいで目がまったく暗闇になれない。
「うわっ!」
「きゃぁー!」
混乱している。
突入したのは誰だ?
相手は、こっちが見えているのか?
強行突破にしても、あまりに無謀じゃないか?
これじゃ、犯人が銃を持っていることもわかってない。
人質はどうでもいってか?
まったく、おかしな世の中だ。
目がなれるまでじっとしていようと身を端に寄せていた。
突入してきた人間が立派な銃を向け低い声を発した。
「動くな」
突入者の仲間が囲むような陣形を取り、全員銃口を向けている。
「クリア、電気をつけろ」
真っ暗闇から、明るい電気が回復した。
皆、身を縮め割れたガラスから体を守ろうとしている体勢をとっていた。
「もう逃げきれんぞ」
追い詰めて勝ち誇った声を搾り出すように最初に突入してきた人間が言う。
「よくわかったね、私がここに居ること」
向けられている銃口は、今にも玉が飛んできそうな勢いで震えていた。
「でも、残念だわ。あなた、仲間が本当に仲間だと思ってた?」
私を取り囲んでいた銃口が、一斉に私に最初に銃口を向けた人間に狙いを定めた。
「なにっ!?」
「突入部隊のフルフェイスは便利よね。仲間の顔すら認識できないから」
再度、電気が落ちた。
直後に一発の銃声が鳴り響く。
次に電気がついたとき一人だけが残っていた。
00:07  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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進化した世界

2008.12.29 (Mon)

ちょっとだけのつもりだった。
それが、こんな世界になっていようとは思いもしなかった。
見たことも無い家電機器。
目の前にあるものが何なのかすら理解できない。
説明されても納得がいかない。
どいうことなんだ?
一体、これは、何が起こった?
自分がいた世界では、こんな形状したテレビも無い。
信じられない世界になっている。
あの時、スリープモードに設定した。
大体、2000年くらいだろうか。
確かに技術の進歩は素晴らしい。
どうしてこんな事ができるようになったんだと開発者に聞きたいものだ。
一体、何が起こったのだろう。
本当に理解が出来ない。
通信も出来ないんだ。
何故か連絡がとれない。
システムがエラーを表示してる。
どういう事だろか。
このエラーは接続不可能という表示。
今までこんなエラーが表示された事など一度も無い。
初めて見た。
こんな事があるとすれば太陽からの電磁波がとうとう地球にまで影響し始めた時代に目を覚ましたというわけか。
いくら先だって技術開発が現状ではうまくいかないからといて先の未来まで有望な研究者をスリープさせ未来に送らなくてもと思うが、そこまでしないと研究が進歩しない時代になった。
先を求めるものがなくなってしまったからといって、結果進化の仕方を間違えたのではないかという結論に至ったというわけだが。
しかし、ちょっと困ったことが起きたんだ。
今までにあった当たり前の技術。
それは、自分たちが開発したものではなく先人たちの功績だ。
その上で自分たちはそれを生かした又は更なる進化を目指した。
基礎を全て理解しているわけではない。
利用はしても、理解を確実にしているかというとそこは難しい話だ。
少し、考えが甘かったかもしれない。
今、連絡を取りたいので通信したいと近くに居る人間に聞いてみた。
すると、「電話をしたいならどうぞ」といって家に招きいれた。
意味がわからない。
そして、指を指す先にあるものは黒いもので数字が書いてありその数字の下には穴が開いている。
アクリル板だろうか?
これをどうしろというのだろう。
通信したいのだが、一体どこに中継ポイントがあるのかわからない。
通常であれば自動的に中継ポイントへ接続しているはずだ。
ここは、本当に先人たちが若い頃に住んでいた世界なのだろうか。
とても同じ世界と思えない。
同時にスリープに入り時間転移をした同期の人間たちとはぐれてしまった。
どこにいるのか現在地さえ表示されない。
一体、どうやってここの人間たちは相手の居場所をわかるのだろうか。
独り言を聞いていた家に招きいれた主が笑いながら話しかけてきた。
「そりゃ、あんた、待ち合わせくらい出かける前に電話しないと」

ところで、デンワってなんだ?
09:00  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(2)

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嘘つき

2008.12.28 (Sun)

「君にプレゼントを買ってあげる」
笑っている顔は、普通だった。
普通に笑っていたの。
急に言い出したからどうしたのかと思ったわ。
でも、そう、クリスマスが近いからだったのね。
私は、お化粧品が欲しいといったの。
そうしたら、彼はにっこりわらって「いいよ」って言ってくれたのよ。
私が欲しがって諦めていた限定品のお化粧品。
その事、彼、覚えていたの。
「欲しがってたよね?あれでしょ?」
そういったのよ。
びっくりしたわ。
あぁ、覚えててくれたんだって。
だから、本当に嬉しかったの。
でもね、あの時ほしがっていたものは売り切れていることは知っていたから違うものを買ってもらおうって思ったの。
気持ちが嬉しかったから。
気にかけてくれてたんだって。
我慢してたけど、買いに行こうって売り場に足を運んだわ。
久しぶりのその場所。
大好きなブランド。
一番、私の肌に合うの。
大好きなのよ。
そして、選んだわ。
素敵なアイシャドウ、チークなど。
そして、それを持って帰ったの。
彼は一緒には来なかったけど。
カードを渡して買っておいでって言ったのよ。
そして、私は帰ってきて彼に言ったわ「ありがとう。これ、買ってきたよ」って。
そうしたら、彼は目もあわせずに「別にいい、見なくても」といってパソコンの画面を見てる。
え?って思ったわ。
そうだと思って、カードを返したの。
そうしたらその時私の目を見て睨みつけるようにして口を開いた言葉よ。
「いくら使ったの?」
私は、レシートを見て答えた。
返答は「そのくらいならいい」それだけ。
何、この態度は。
なんなの?
つっ立っていたら、彼はパソコンの前に座ってまたカチカチと何かを操作し始めた。
操作しながら一言彼の口から出た最後の言葉。
「クリスマスだからって何かあげなきゃいけないなんて面倒だから、勝手に好きなの買ってくればそれでいいだろ」

この、私の今持っている、袋の中に入ったお化粧品に「気持ち」は無い。
ただの、体裁で与えられた「嘘」だけの品物。
お金を出したのが自分だから、それで、プレゼント。
それが、プレゼントっていう意味なの?
「与えてあげた」という意味なの?
あなたにとって。
私は、あなたにとってなんなの?
プレゼントすら面倒な人?
それなら、何故あなたの側にいるの?
適当にお金や品物でご機嫌をとればそれでいいわけ?
それで、あなたにとっては都合がいいわよね。
あの時、買ってやったじゃないかとかって言い出せる武器を蓄えてるんだもの。
自分が不利になったときに。
そうやって、私を追い詰めるためのものがあなたにとって「プレゼント」という定義なの?
悲しい。
悲しすぎる。
私は、そんな嘘はいらない。
急いで手をつけてはいけないお金をだけど、ATMからおろして掴み取って叩きつけた。
「気持ちのない物なんていらない」
「どうして?」
それが、嘘で作られた最後の最後の言葉だったよ。
気付いてないのね。
人に嘘ついて、自分の体裁を守るためだけに、餌をぶらさげて、いい顔して、お金だけだして
後は、「面倒な作業」だと言い放った。

面倒な存在なのね、私は。
08:47  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(2)

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2008.12.27 (Sat)

付き合い始めてもう五年。
そろそろ、学生の時からの付き合いだし結婚を考えてもいいんじゃないかなって思うの。
もう回りも結構、結婚してるし。
結婚するにしても今とそう生活は変わらないだろうし。
同棲しているわけじゃないから今よりもっと一緒に居られる時間が作れる。
一緒に家族になることが出来る。
素敵じゃない?
私も仕事しているけれど、結婚してすぐはまだ共働きかなって思う。
結婚式の資金とか全体的に考えると意外とかかるんじゃないかな?
本屋に立ち寄って、乾坤式場の情報誌を購入した。
そんな雰囲気が昨日の電話であったし。
もしかしたら、今日は指輪を見に行こうっていってくれるかもしれない。
人生の中で一番気恥ずかしいかしら?
どうなんだろう?
「遅れてごめん」
少しだけ遅れてきた彼は、寒い中どうやら渋滞に巻き込まれてバスを降り走ってきたようだ。
「ううん、今来たところ」
「じゃぁ、いこうか」
「うん」
いつもどおり、手をつないでまずカフェに行く。
二人とも実家暮らしなのでゆっくりと話す時間が無いのだ。
あまり、実家に顔を出すというのも気がひけるので。
まだ正式に挨拶したわけではないしね。
それから、カフェで色々話した。
会社も業種も違うから新鮮。
仕事の話や今読んでいる本の話とか。
ふと、一息ついたところで彼が切り出した。
「そろそろ、結婚考えようかと思うんだけど。昨日、電話で…その…言った事なんだけど」
「うん、嬉しい」
「本当?」
「うん」
少し顔を赤らめ照れている彼が可愛らしかった。
待ってましたといわんばかりだったかな、と思いつつも先ほど買った雑誌をめくりながら話した。
指輪を購入するにしてもなんにしても、まず、親に挨拶が必然だ。
どうしたらいいものなんだろう?
どっちの親に先に挨拶に行くものなんだろう?
まったくわからない。
仲人、なんていう人が居ないからどうしようかと悩んだ。
両親共に父親は働いている家庭なので、土日の休みの日で都合がいい日を選ぶしかない。
お互い親に話して、挨拶をしたいということを報告しようと決定した。
結果として、私の家に来るのが先になった。
両親もカチンコチンに固まって挨拶をした。
彼氏が居ることはもちろん知っていたが、結婚まで至るとは父は考えていなかったらしい。
父の挨拶の場を設けたいのですがといった私の口から出た言葉に、硬直したのはいうまでもない。
それから、相手のご両親への挨拶にいく予定が中々都合がつかなかった。
出張が多いというお父さんの都合がどうしても合わないというのだ。
結局、私の両親の挨拶から一ヶ月以上も間を開けて挨拶の場が設けられた。
だが、その席に出席した時私は目を疑った。
「今更、結婚相手を変えたいというのは本気なのか?」
その、相手の父親から発せられた言葉は私を凍らせた。
どういうこと?
「いえ、変える気はありません」
「では、どういうことだ。この女は」
「囲い女です」
「二号にするつもりか」
「はい」
「なら、好きにしろ」
そのまま、立ち去った父親。
顔も見せない母親。
そして、この会話を平然とする結婚を誓ったはずの相手。
「言い出せなかったけど、俺、もう結婚してるんだよ。子供も居る」
「は…?」
「でもね、大丈夫。君は、僕の愛人になればずっと一緒に居られる」
「なにいってんの?」
「何って、僕らの将来の話だよ」
「だって、子供が居るって」
「それは、君に関係の無い話だよ。僕たち二人の将来にはね」
笑って話す。
平然と。
突然開いたふすまの先には、五歳くらいの女の子が立っていた。
「お父さん、その人、誰?」
「ん?この人は、恋人ごっこをしている人だよ」
その言葉を聞いて、私は手を叩いて大笑いした。

「なんだ、あんたも結婚してたんだ」
08:49  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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夢と現実の境目

2008.12.26 (Fri)

頭がおかしくなりそうだった。
全部。
人生全部投げ飛ばして、カセットテープのように好きなところまで巻き戻して。
もう一度、録音ボタンを押したい。
そうして、新しい歌を上から録音するの。
人のことも、自分のことも、何もかも。
全部、自分を置いてぐるぐると回るんだよ。
洗濯機のスイッチを押したみたいに。
勝手に全自動で動いていく。
気持ちなんて後からの味付け次第で左右されるもの。
どんどん変わっていくの。
止められないのよ。
感情が。
悲しみが。
怒りが。
笑えないのよ。
頭が割れそうなほど痛いの。
何でわかってくれないの!
何でこんな事になったの!
どうして!
どうして!
それ以外、私には言葉が見つからないんだ。
いつも飲んでいる安定剤の他に違う薬をもらった。
もっと強力なものをもらった。
しょうがないじゃない。
頼るしかないんだもの。
頼るものが薬しかないのよ。
みんな居なくなるんだよ!
私の声を聞いてくれる人は!
誰も、誰も居ないんだよ!
どうして!
叫び続けた。
名前を。
叫び続けた。
悲しみを。
叫び続けた。
怒りを。
叫び続けた。
自分の不甲斐なさを。

目が覚めたとき、その原因となる全てが自分の側から居なくなっていた。
夢じゃなかったんだ。
夢だと思ったから、散々めちゃくちゃにしたのに。

手には、はさみが突き刺さり
手首には、カッターで切り刻んだ後がある。
ベッドは、生ぬるくて気持ち悪い。
それでも、もう、動く気力は無かった。
力も。
どうして? それ以外の言葉を私は知らない。

だれも、答えなど持ち合わせていないのに。
08:23  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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幸せの下に

2008.12.25 (Thu)

「配置完了、アリス確認」
「了解、ラビット確認。接触まで後、2ブロック」
「配置完了、すまん遅くなった。途中、魔女と遭遇。クイーン確認、範囲確保」
「了解」
「魔女は何人?」
「ウィッチとウィザード」
「了解」
「ガラスの靴を発見。処理に入る」
「了解、注意しろ」
「アリス予定ポイントより離脱。捕捉開始する」
「どこへ向かっている?」
「ラビットはすでに予定ポイントへ到着。現在、アリスを待っているものと思われる」
「アリス予定ポイントから、北方向へ移動。目的不明」
「ガラスの靴を入手成功」
「了解、一旦戻れ」
「了解」
「クイーン移動開始。アリス・ラビットへの予定ポイントへ移動している模様」
「何だと?!」
「邪魔だな、俺が行く」
「ダメだ、お前は魔女に会っている。クイーンに素性が割れている可能性がある」
「わかった、私が行く。アリスは、現在北へ移動中。どうやら、携帯の電池が切れた模様。充電している」
「了解、そちらへ移動する。アリス担当交代する」
「了解」
「クイーンへ向かう前に、魔女を捕まえる」
「出来るのか?」
「魔女を仲間にすれば問題は無い」
「了解」
「ラビットへ連絡。ポイント地点から動くな。アリスがそちらへ向かっている」
「了解、靴は?」
「準備できている」

待ち合わせの時間が近いというのに、こんな時に限って充電が切れかかってしまう携帯電話。
なんで充電してこなかったんだろう。
その思いでいっぱい。
急いで充電できるスポットを探して、充電する。
10分間100円。
その、10分で待ち合わせ時間になってしまう。
遅れたらいけないと早めに来たというのに意味が無い。
大体、何でこんな妙な待ち合わせをさせられているかも不明。
やっと充電が終わった。
急いでここで待っていてくれといわれた場所に行く。
そこは、横断歩道。
とてつもなく人通りの多い都心だというのに、わざわざこんな見つけにくい場所で待ち合わせ。
理由不明。
変わったことをする人だとは思ったけれど、付き合って二年にもなるのに相変わらずやっぱりわからないことは多い。
戻った横断歩道には沢山の人が居た。
そりゃそうだ。横断歩道なんだから。
青になった瞬間、見知らぬその横断歩道に居た人達が一斉に私に向けてクラッカーを鳴らした。
凄い音だ。
びっくりした。
小さな子供たちが、バラの花を一本ずつ持って横断歩道にずらっと勢いよく並ぶ。
バラを差し出すので一本ずつもらっていく。
横断歩道の真ん中には、ガラスの靴が置いてある。
片方だけ。
そっとひろいあげて、前を見ると待ち合わせている人物がいた。
もう片方を持って。
子供たちに背中を押され、前に進めと促されてやっと足が前に出た。
横断歩道を渡り終えるとガラスの靴が揃った。
「中を見て」
私がもっているガラスの靴を見ると、指輪が入っている。
「指輪・・・」
指輪を彼が手にとり片膝を曲げ、差し出すように手のひらにおいて見せた。
「結婚してください!」
ものすごい叫び声といっていいほどの声量を持った彼の声が響いた。
それと同時に、横断歩道に居たクラッカーを鳴らした人達が今度は紙ふぶきを散らした。
クラッカーも鳴っている。
彼は、白いタキシード姿にマントをしている。
私の夢を言ったことがあった。
王子様が迎えに来てくれるのよ!って。
まさに、絵に描いたような王子様の格好をしている。
ものすごく恥ずかしそうにしているが、必死に私へ思いを伝えようと頑張っている。
絵本作家の私が、夢ばかり見る子供のままだから、夢をそのまま現実に見せてくれた。
王子様が迎えに来てくれた。
笑いながら泣いて、私は左手を差し出した。
王子様は、ゆっくりと私の薬指に指輪をはめた。

「作戦終了、解散」
「聞いていいか?」
「何だ?」
「プロポーズのために、これだけの作戦する馬鹿がいるか普通」
「仕方が無いだろう、狙撃部隊の本領発揮だ!どんな獲物でも撃ちしとめる」
「本領って・・・」
「いいじゃん、誰かを撃つわけじゃないんだから」
「撃ったんじゃないのぉ~?」
「何を?」
「あの、女の子をさ」
「うわっ!何そのセリフ!」
「次はこいつがなんかやらかしそうじゃないか?」
「どっちかというと、本気で撃たれるんじゃない?ふらふらしてるから」
「やめろよ・・・俺、色々心当たりありすぎて後ろめたいから」
「さて、本部にもどれ。協力感謝だ諸君」
「あれ?ねぇ、クイーンはどうしたんだよ?そういえば」
「あぁ、あれ。面倒だったから撃っちゃった。あはは。後始末してくるわ」
「撃ったって・・・おい!」

「大丈夫だよ、見つからなければ。幸せなんて誰かの不幸の上にあるものなんだから」
08:21  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(4)

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2008.12.24 (Wed)

たった一人で君は僕を見つけて
僕の中を照らしてくれた

漆黒の闇 その海の中にいる僕を見つけて
たった君一人で
僕の側に来てくれた

怖がることもなく

僕は怖くて
突然現れた君が怖くて
闇を深くして
僕を見えなくしようと必死だった

けれど、君は笑って僕に光を見せた

やさしい暖かい光
ほんの少ししか光は差し込まなかったけれど
君は一筋のやさしい光を僕にくれたんだ

悲しみに満ちた僕の闇で出来た海

君の優しさで目を覚ますことが出来たよ
今海面から、君を見上げる

側にきて、笑ってくれた君を
今度は、僕が探し出すよ
僕が君の側に行くから

待ってて
僕が星を届けに行く
08:12  |  星に願いを  |  Trackback(0)  |  Comment(5)

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真夜中の叫び声

2008.12.23 (Tue)

電気を消して寝ようとした瞬間だった。
外から小さな「きゃぁ」という女性の声が聞えた。
ような、気がした。
とはいえ、今日は夜更かしをして十二時を回っている。
すでに次の日である。
こんな夜更けに、この恐ろしく暗い裏道を通る馬鹿がいるとすればこの辺に住む住人かあるいは別の迷い人か。
しかし、気のせいだろうと思ってそのままベッドに寝た。
毎日仕事が忙しく、今日は明日が休みということもあって夜更かしが出来たというわけだ。
ゆっくりと朝寝坊をするために、いい夢を見て寝ようと思う。
 それが、叶わぬ日だった。
「きゃぁ」
その声が、また聞えた。
眠りに落ちるところだ。
正直、無視したい。
というわけで、そのまま眠った。
何時ごろだろうか。
突然、出窓から赤い光が煌々と私の部屋を照らしている。
目が覚めて何事だ?と。
宇宙船でも着たのかと思ったほどだ。
ブラインドをすり抜けて入ってきた明かりは、赤い光。
「きゃぁ」
また、あの声。
何?
目を開けて、耳を澄まして外の音に集中した。
「さがって、さがってください」
そんな男性の声が聞える。
赤い光だから、警察かな?
なに?
警察が来ているということはもう対処するって事だよね。
なんにしても、この赤い光を消してくれないかな。
眠れないんだけど。
上半身を起こして、ブラインドをきっちりと閉めてそれからまた眠りについた。
朝、それは、また、悲鳴に起こされてしまった。
「きゃぁああ!!」
今度はつんざく様な叫び声。
その声は、あの真夜中の叫び声と同じもの。
同じ声だ。
段々と近づいていたということか。
何故?
ベッドから起き上がり、ガウンを着て外に出た。
そこには、警察に囲まれた家。
そして、こういわれたんだ。
「出てきなさい。抵抗をするな、もう、君は何も出来ない」
叫び声は、段々とうちに近づいていた。
だって、面倒になってきたから。
うるさい近所づきあいも、勝手な住人たちも、居なくなればいいと思っただけよ。
あそこまで叫び声をあげられたらばれちゃったかな。
黙らせればよかった。
助け舟を出すフリでもして。
そうすれば、皆、消せたのに。
後片付けはきちんとすべきだったな。
だって、私は悪いことしてないんだもん。
悪いことって決めてるのは、そっちの見解じゃない。
私の子供を殺したのは、あなたたちなのに。
それを、わかってるの?
そんな考えが巡らせながら、ゆっくりと外に出た。
警察が私を取り囲む。
野次馬がニヤニヤと笑いながら私を見る。
楽しそうに。
嬉しそうに。
面白そうに。
私が何をしたのかを知っているのにもかかわらず、こいつらは笑えるんだよ。
それが、正しい人の形なのか?
それが、正しい人間なのか?
答えてくれ
ガウンの下にある体に巻きつけた、適当に作ったお手製爆弾のスイッチを押した。

これで、全部、片付いた。
08:33  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(2)

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夜道に立つ女

2008.12.22 (Mon)

そこは、裏通り。
表通りと違い信号も無くバスも通らないため、とても好都合な裏通り。
知る人ぞ知るという道で、まっすぐではあるがすごく細い道。
間違って曲がってしまおうものならどこにたどり着くかはわからないくらい入り組んでいる。
表通りとまっすぐに伸びたその道でところどころ曲がり角がある。
だが、ほとんど車の通りは無い。
そのための油断かスピードを出す運転者が多い。
どれだけ事故がおきたか数知れず。
いい加減どうにかならないのだろうかと思うが、やっぱり何度警察が来ても警察自体は何も考えてないらしい。
「また、この場所か」などとつぶやいてもそれだけだ。
またと思うくらいなら、何らかの対処をすべき立場じゃないのかお前たちはと怒鳴りたい気分をいつも抑えている。
ある日、私は夜に星を眺めていた。
パジャマ姿で。
夏の日。
でも、意外と涼しい夜。
濡れた長い髪をタオルで拭いてそのままくしでとかしながら玄関にある街灯だけの明かりの元、夜空を見上げていた。
理由は、その日が七夕だったから。
私は見たことが無い。
七夕の日に見えるはずの星の河。
そんな綺麗な星空を見たかった。
でも、見あたらない。
じっと眺めていた。
綺麗に髪をとかして、長い前髪をそのまま顔面に沿わせた状態で。
髪の間から星を見ていた。
ふと、バイクが近づく音がした。
それに気付いて音がする方向を見た。
表通りと平行している裏通りのまっすぐのみちを私の立ってる方向へ曲がってきた。
ゆっくりと。
そのバイクは、ものすごい音を立てるとても不愉快にさせるバイクだった。
確実に改造車だろう。
バイクに乗っている若い青年たちが、ゆっくりとこちらを見た。
そして、二人の顔が凍りついていく。
なんだ?
瞬時に顔を下げて二人は猛スピードで私の前を通り過ぎて行った。
玄関をあけ、家に戻った。
すると、家にいた母が「うわぁ!!」と驚愕の声を出して驚いた。
「なに?!」
その声にびっくりするほどだ。
「そんな顔で、そんな髪で出てたらびっくりするよ」
と、指摘された。

あ・・・。

すっかり忘れていた。
私は、濡れた長い髪をだらんとさせ前髪も長いから綺麗にくしでといたあとだったので
顔面に沿って顔が隠れている。
そして、その下の顔にはパックをしていたままだった。

それを、街灯のみの姿で私を見た彼らは背筋が凍る思いをしただろう。
そうおもって、鏡を見てみたら自分でも自分の顔が恐ろしかった。
こんな顔の女が夜中にぼぉっと立ってたら明らかに化けて出てるとしか思えないって。

以来、彼らを見たことは無い。
08:50  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(6)

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飛べ 星に願いをⅠ

2008.12.21 (Sun)

ただ待っているだけじゃダメなんだ
ただ奇跡が起こるのを待っているだけじゃダメなんだ
ただ願いを星に預けるだけじゃなくて
自分で両手を広げて
自分の足で立って
自分の意思で
自分の心で
自分の目を開いて
飛ぶんだ
僕は君を必ず見つける
消えてしまった君を僕は見つけるよ
大丈夫
約束したじゃないか
必ず守るって
ずっと一緒にいようって
僕を信じて
僕の側にいて欲しい
だから
君の側に行く
君を一人にさせない
僕は信じている
君を探し出して
君の側にいけることを
今この星空のしたで僕は叫ぶよ
君の名前を
お願いだよ
僕に座標を教えて
僕はずっと空を飛んでいる
僕はずっと君を探している
君の心が感じられないと僕は見つけることが出来ない
お願いだよ
僕を信じて
僕を呼んで
僕は叫び続けるよ
君の名前を
どうして僕の前から消えてしまったのか僕はわからないよ
だからちゃんと話がしたいんだ
ちゃんと目を見て君の手をとり体温を感じて
君の声を聞きたいんだ
抱きしめていたい
もうに度と離さない
お願いだよ
僕は空にいる
ずっと飛んでる
君の名前を呼んで
叫び続けてる
僕の声が聞えるかい?
僕だよ
僕はここにいる
僕が見えるかい?
一緒に居たあの頃に戻ろう
戻れるよ
戻ることが出来るんだよ
世界は進むことしか出来ない
でも僕たちは進むことで時間を取り戻すことが出来るんだ
新しい時間を
必ず君を見つけるから
08:15  |  星に願いを  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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リブート

2008.12.20 (Sat)

世界は止まっていた。
ずっと静止したままだった。
静止した世界に、たった一つの出来事が大きな振動を起こしこの世界へ呼び戻した。
自分を完全に起動させた。
完璧に故障させたまま。
気がついたときには、手遅れだった。
手遅れどころではない。
もう、終わっていたのだ。
事の始まりも、事の終わりも、自分でシステムを動かしたというのに。
フルスロットルの世界の中で、自分だけ時間を止めていた。
それが当たり前だった。
時間を戻すことは出来ない。
時間を先に進ませることも出来ない。
時間を上書きすることも。
その振動は、自分を止まらせていた世界のスイッチをオンにして稼動させるのではなく
一発の爆撃でぶち壊し目を覚まさせた。
目を覚ました時、それが始まりであって終わりであり動いた瞬間だった。
君はいつからいたのだろうか。
ずっと側にいたはずなのに。
それを、当たり前だと思っていた。
当たり前だからこそ、時は止まっていたんだ。
必ずそこにいる。
手の届く場所に。
それが、自分の世界をOFFにした途端、世界はフルスロットルだったことを忘れた。
時間が止まることは無いということも。
全部聞えていた。
悪魔の囁き声。
そう、きっとあれは悪魔の声だったんだ。
本気なのかって。
俺自身、まったく気付いてなかった。
何故なら、自分は起動していなかったから。
俺はずっとフルスロットルの世界の風を受けるのが精一杯で、世界の風と、その世界から派生された新たなる風に飛ばされてぐるぐると竜巻のように上昇し放り出されるまで気付かなかったんだ。
起動するかそれとも自分の制御システムを完全にオフにするか。
世界ってのは、小さいんだよ。
大きくても実際存在している世界は小さい。
自分は世界のその一部でしかない。
一部である以上世界の流れに乗っている。
その波があって、その風にあたって、それに耐えながら進んでいるのが時間だと思うんだ。
自分で波がつかめて、その波に乗れて、うまく操縦できるようになれば君を失うことは無かった。
きっと。
俺自身が、自分の制御システムをオフにしようとしてしまったために。
悪魔は囁いたんだ。
本気なのかって。
本気だと答えた後なのに。
オフに出来なかった。
防御システムが働いた。
本当に防御システムかどうかわからない。
自分でコントロールできる範囲じゃない。
自分を会席できるやつがいたら、全システムをメンテナンスして欲しいくらいだ。
書き換えて、初期化して、もっとスペックを高くして。
そうすれば、こんな悪魔と俺は会話をすることは無かった。
イエスは取り消されない。
それを忘れていた。
自分の世界をオフにしていたから。
そう、自分のことだけしか頭に無かった。
ごめん。
俺は、自分のことだけで精一杯だったんだ。
本当に精一杯で。
起動することが出来なかった。
悪魔との交渉を決裂させた俺の前から悪魔は去り、君の元へ向かった。
君の狩る為に。
君が犠牲になった事、それは悪魔が残した言葉そのものだ。

お前に、死ぬ覚悟が本当にあるのか?
これが、死ぬということだ。

それを一番側にいる当たり前の存在である君の死で世界をオフにしていた俺を叩き起こしたんだ。
一番惨い殺し方をして見せつけて俺に言ったんだ。
俺は、なんていえばいい。
君に、なんていばいいんだ。
世界は、いつもフルスロットル。
どんなに俺が拒んでも、起動しなくても、俺が悪魔を呼んだんだ。
俺が制御システムを切断しようなどと考えた。
本気で考えたから。
そして、それに答えた悪魔と会話して本気だと答えたのに。
俺が切断できないと諦めてしまった。
デリートが効かない悪魔との会話。
制御システムはほとんど止まりかけていたのに。
最後の一本の切断が出来なかった。
何もしなくてもいつかは止まる。
俺は君になんていえばいい。
俺のせいで君が犠牲になった。
ごめんなさい、それ以外、なんていったらいいんだ。

一度止まった君の鼓動を、再起動させるすべを俺は知らない。
08:01  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(7)

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予告編で終わる物語

2008.12.19 (Fri)

テレビをつけて長い予告編があっていた。

突然起きたこの難事件。
巧妙なトリック。
主人公が巻き込まれる殺人事件。
行く先々で起こる謎の他殺。
主人公と行く謎に包まれた事件を解くための旅に同行する男。
その男に怪しい動き。
過去にとらわれた犯行の可能性。
全ての謎は、昔起きた事件の背景にある。
それは、全て主人公を取り巻く人間たちの見えない繋がり。
絡まった糸は解けるのか?!
糸を解くたびに増える犠牲者。
その面々が全てかこの事件との関連性をうかがわせる。
男との関係が主人公を追い詰める。
絶体絶命の危機!
真犯人に追い詰められた主人公。
断崖絶壁の最初の事件が起きた場所で全ての謎が明かされる。

次回 主人公は何故死んだ
お楽しみに!

次回は、見なくていいやと感じるこの番組。
いつまで続くのだろう。
08:38  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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あれ

2008.12.18 (Thu)

「あれ、買っとくべきじゃないか?そろそろ」
突然、夕食が終わった後兄が言い出した。
兄弟合わせて今時珍しいと思われるだろう。
7人いる。
一番上の兄を筆頭に、男男女男女女女という順番だ。
最後は、三つ子である。
一卵性の双子ともう一人が一度に生まれた。
大体、歳は4~5歳離れている。
よく生んだものだ。
私は、上から三番目。
でも、長女だ。
一度に三人の妹が出来た時は驚いたけどね。
「あれもう買うの?」
「じゃぁ、これとそれも必要じゃない?」
一番下の弟が言う。
「そうだな、だったら早めに揃えたほうが色々好都合だろうし」
二番目の兄が言う。
「私達は?」
同じ顔した妹たちがハモって聞いてくる。
「準備をしてもらえると助かるけど」
私が答える。
「これって、あれでしょ?私が買ったほうが違和感無いと思うよ」
冷静沈着な双子と一緒に生まれた妹が言う。
この妹は、誰に似たのか本当に頭の回る子供だ。
「そうね、まかせるわ。これはあなたが買ってきて」
と私が答える。
「わかった。他は誰が行くの?」
更に問いかける妹。
「そうだな、俺があれを担当するから、お前がそれを担当でいいか?」
と一番上の兄が言う。
「私でいいなら」
と答えた。

次の日、買出しに出かけた。
二番目の兄の車に乗って。
二番目の兄は、車で待機しているとの事。
「じゃぁ、買い物終わったらここに集合って事で」
と、提案した。
「わかった」
一番上の兄と冷静沈着な妹が返事をする。
店に向かおうとした時、一番上の兄が言った。
「気をつけろよ、足がつかないようにしろ」
間髪いれずに精霊沈着な妹が言う。
「いわれなくてもわかってる。誰かさんと違ってミスはしない」
嫌味も誰に似たんだか。
「可愛げない妹だな」
苦笑した一番上の兄が言う。
「まぁ、失敗すれば殺されるかもね」
私が答える。
更に苦笑する兄。
「わかったわかったよ。俺が一番気をつけるよ」
そういって兄は売り場に消えていった。
「じゃぁ、私二階だから」
というと、冷静沈着な妹が意外な顔をして見せた。
「え?私が二階じゃないの?」
「だって、私あれ担当っていわれたし」
「え?あれって私でしょ?」
「いや、あなたは一階の一番奥の店だよ」
「あれは、兄さんの担当だよ」
「ちがうちがう、それはあなただよ」
「ちがわないよ!あれを買うんだから。二階だもん」
「ねぇ、あれって何のことを言ってるの?」
と、話しているところに一番上の兄が帰ってきた。
「まだこんなところで話し込んでるのか。早く買ってこいよ」
兄は、大きなのこぎりを買っていた。
その兄に聞いた。
「ねぇ、私たち何をするものを買いにここに来てるの?」
08:07  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(2)

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パンドラの箱 結末は流れのまま

2008.12.17 (Wed)

一日目
この箱をもらったのは、私の願いをかなえてほしいからだ。
引き換えとしてこの箱をもらって七日間の苦しみを伴うという代償を払わなければならない。
それが、どれほどの苦しみなのか具体的なことは教えてもらえなかった。
正直怖かったが、私はただ幸せになるために何かを犠牲にする必要があるということが
本当に幸せになれることになるのか疑問だった。

二日目
結局、寝付けない夜をすごした。
寝ていたかもしれないが浅い眠りだ。
何が苦痛なのか。
それを考えていた。
どんな苦痛が待ち受けているのかということを。
私は、仕事をしていない。
実質的に。
仕事は正社員ではなく派遣社員をしている。
派遣社員といえば聞えはいいが、人身売買に変わりは無い。
都合のいいときだけ雇って、後はさようならだ。
仕事の紹介料として自分の受取る額以上を派遣会社は手にしている。
もちろん、そこから派遣会社に勤めている営業や事務全体の給与になり自分の社会保険も含まれているだろう。会社負担分の。
最近は、本当に単発の仕事が多くなった。
昔は嫌われるので単発の仕事というのはほぼなかった。
あったとしても販売関係だった。
現在では、口約束で半年くらいは雇うからというクライアントの言葉を信じ一ヶ月更新なんていう話が多い。
結局、いつでも切れるようにしておきたいのだ。
こっちはたまったもんじゃないのだ。
毎月、ハラハラしながら仕事をしているわけで。
それが、ぱたんと電話が来なくなった。
貯蓄していたお金は全部税金に取られた。
何のために働いているのか私にはわからない。

三日目
これといって苦痛という苦痛は感じられない。
日々、生きているのか死んでいるのかわからない生活をしているからだろうか。
朝起きて、夜寝るまで。
いつも飲んでいる安定剤の効果が体性がついたのか薄れてきた気がする。
より強力なものをくれといいたいが、薬代が増えるだけだ。
いいのかわるいのかわからないが、以前もらった腐っては無いだろうと思われる強めの安定剤を飲んだ。
一緒に服用していいかは不明。
飲めば、意識は薄れベッドの中にもぐって寝てしまえるから。
夢の中でうなされること無いほど眠れる。
その代わり、途中目が覚めていても記憶がまったく無い。
なんとなく言葉を覚えているが現実感が無い。
段々、危ないやつかもしれないと自覚はしてきた。
だが、やめられない薬だった。

四日目
友人に勧められてみたアニメが偶然テレビで再放送されている。
それを録画しているのだが、ハードディスクの容量がパンパンになってきた。
デジタルに対応していないので強制的に圧縮されてしまう。
はっきりいってデジタルにした意味が無い。
このDVDレコーダーを買ったのはいつだったか・・・。
覚えてないが、デジタルがどうのとかいう以前だったのでそんなことを気にしていなかったのだろう。
DVDとブルーレイディスクの規格についてもあまりの画質の悪さが故障かと思ってDVDのメーカーに問い合わせたら勉強になった。
教えてくれたのだ。
何を屋っても今もっているDVDプレイヤーではデジタルの美しさを録画することは出来ないとの事。
ブルーレイの時代というのは、本当にやってきたのか。
出た当時は、何故必要なのだろうかと思ったんだが。
その綺麗さは、ゲームでしか知らない。
今のところ。
今日は、ハードディスクにたまった録画したものをDVDにダビングした。
DVDファイルが満杯になったのでダビングを中止。

五日目
やっぱり、苦痛というのが気になって薬に頼ってひたすら寝ている。
夢なのか。
現実なのか。
境目がわからなくなってきた。
死んだような顔をして、泣きはらしたまぶたが重く頭が割れそうに痛い。
なんとなく雰囲気を察してかいつもなら甘えても来ない猫がすりっと側にきて寄り添っている。
時々、顔をじっと眺めている。
気にしているのだろうか。
抱っこしてもいつもなら嫌がって降りるのに顔をすりすりと腕にしてくる。
もう随分と歳をとり、辛い人生を歩ませている猫にまで心配かけたのか。
最低だ。
涙がまた溢れた。

六日目
寝たり起きたりを繰り返しても、夜は眠れる。
薬のおかげだろう。
それでも、起きたら悪夢を見続けることになる。
苦痛が襲ってくるというあの言葉が支配して縛りつける。
たった一人で家にいると、もういいだろうと思って適当に紐を持ってきて梁に引っ掛けて
首をつってみたらめっちゃ苦しくてやめた。
何度も泣きながらチャレンジしてみたが、こんなに苦しいのをどうして出来たんだろうと
実際にやった人に聞きたいが皆死んでいるので聞けません。
何時間も戦って、自分はなんて覚悟の無い人間だとその不甲斐なさにもっと泣いた。

七日目
長い長い七日間が今日で終わる。
苦痛は、どれが苦痛なのかわからない。
生きていること自体が苦痛だ。
仕事がないこともそうだが、財政難も危機に瀕している。
病院に行くにもお金がかかるし、薬をもらうのもお金が必要。
ずっと服用しているため急にやめてはいけない薬なんだそうで。
飲んでいて効果があるのかどうかすら私にはもうわからない。
飲んだことで安心しているのはあるが。
じんましんみたいなのが出てきた。
やっぱりよくなかったかな?
あんまり、勝手に人の安定剤を以前飲んだことあるからって勝手に飲み続けたの・・・。
かゆくてたまらない・・・。

「箱をあけたら?」
夜になって横になった瞬間、声が聞えた。
びっくりして手元にある小さな電気をつけた。
「開けていいの?」
「七日間過ぎたわ」
私は、その箱を開けた。

八日目
ならない電話が鳴った。
「ご報告の連絡です。先日エントリーされたお仕事が受かりましたよ!」
私の望みが何なのかわからなかったけれど、仕事が見つかった。
財政難が解消されれば気持ちに余裕は出来るだろうか。

もうひとつの気がかりがあったのだが、ならない電話が聞き慣れた音を発した。
聞きたかった彼女からのメールが届いた。
それは、なにより望んでいたことだった。
ありがとう。
また、涙があふれ出てとまらなくなった。
それを、部屋にいる猫がぎょっとした顔で見ている。
いや、お前さんがどうかしたわけじゃないんだよ。
外猫が寒がって私の部屋に入ってきてヒーターの前でくつろいでいる。
子猫だったが大きくなったな。
08:53  |  パンドラシリーズ  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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おしごと

2008.12.16 (Tue)

伝統的に私たちの居る世界では職業が世襲されている。
別の職に、生まれたときから就けない。
生まれた瞬間将来何になるのか決められているのだ。
はっきりいって、忙しい仕事だ。
大変な仕事である。
そして、多種多様ある仕事なのにもかかわらず世襲されている。
違う職業体験くらいしてみたいものだ。
私は、日本の担当。
世界各国色々文化はあれど、人間たちは私たちの存在をなんとなく意識はしているものの生きている間に会ったことはないから死んだらびっくりするだろう。
私の職業は、役所勤め。
役所といっても、ここは天国か地獄かを分ける場所なんだけれど。
簡易的な審査がこの役所に着く前に終わっているから、天国コースのどれにするかとか地獄コースのどれにするかとかそういうのを振り分けるのが仕事。
生まれたときから白い羽は生えている。
どうしてそれを生きている人間が知ってるのかは謎。
神様業はもっと大変だ。
今までに会った神様は、数知れない。
神様というのは、私たちの上司である。
葬式に結婚式と大忙し。
一応、神様業も一人ではこなせないので神様は沢山いる。
日本担当の神様も沢山いるけど、残業を減らして欲しいなとつぶやいていた。
そうそう、事故とかの突然死。
そういう対応はイレギュラーなので大変。
突然、プリンターから書類が出てきて死亡になっちゃうんだもん。
本人もショックで泣き喚いてるし。
そういうときはね、ちゃんとカウンセリングコースがあるのよ。
最近天使の役割として一番活躍しているかな。
日本は独自に三途の川というシステムを導入してるの。
三途の川を渡るにはお金がいるんだけど、いい商売してるわよね。
そこわたらないと役所にこれないってのにさ。
戻ったら生き返るらしいけど、私は三途の川の向こうに行ったことが無いから船頭さんに聞いた話。
元々、天使だった私たちも人間だったの。
死んだ後、その後の人生は人間にまた転生したり色々選べるの。
でも私は、しばらく考えようと思ってこの職業に就いた。
いや、ま、単に白い羽の生えた綺麗な天使になってみたかったんだけどね。
時々交流って事で、地獄の職員の方とお食事会があったりするんだけど向こうもすっごく大変みたい。
つーか、話きくかぎりぜったいSだよ。
じゃなきゃ、やれねーって・・・。
なんにしても、地獄行きってなったらあんな地獄絵図なんていうのが本当だったとは思わなかったな。
どっちかというと、もっと酷いけど。
地獄の職員っていうと聞こえがいいけど、つまり死神だからね・・・。
怖いのなんのって。
でも、あれ制服なんだよ・・・。
一応神様クラスの人達なんだけど、こっちの神様とはなんか違う雰囲気。
さてと、今日も仕事を頑張ろう。
何より特別な日だからね。

私を殺した犯人が捕まって死刑執行されたってプリンタから紙が出てきたときは驚いたよ。
犯人名が、お兄ちゃんだったから。
08:34  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(2)

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事件発生 <リゼット・クライトマン シリーズ Ⅱ>

2008.12.15 (Mon)

勤務している病院に検視の依頼が警察からきた。
検視するということはなんらかの不審な点があるということだろう。
あまり、グロテスクな遺体はみたくないんだが。
という思いだけ過ぎったがこれも仕事だ。
「刑事さん、この事件があった場所って一体どこなんです?聞いたことないんですが」
もらった資料で書いてある住所はまったく知らない地域だった。
「あぁ、すまないね。かなり、田舎の村なんだよ。どこの警察も管轄だというのに、どうしてもあの村には行きたくないと拒んでいるそうだ」
電話した先は、この検視を依頼してきた警部のアルヴァ・オルブライトだ。
自分のいる街も大して大きいわけではないが、このあたりでは一応大きな街と言えるだろう。
アルヴァとは長い付き合いだ。
といっても、彼のほうがダイブ年上だが。
「何で拒んでるんです?」
「よくわからんが不吉なんだとよ」
「は?不吉?今回の事件がですか?」
「いや、あの村自体の存在とかなんとかわけのわからんことをいっておった」
「確かに、わけのわからないことですね」
笑ってしまった。
「一緒に連れて行ってもらえます?」
「車に乗れる人数は限られておるんでな、後ろからついて来い」
「えぇ、それでかまいません。方向音痴なもんで」
かなりかかる難事件になるだろうという話は前もってあった。
どうして難事件といえるのかは、まだ聞いていない。
死体を見ればわかることだ。
しかし、ついて行くと言った自分が馬鹿だったと本気で思った。
なんという悪路だ。
山道をひたすら越え続け、やっとくだりになったかと思ったら、また山。
そんな長い道のり。
更に驚いたことは、なんと一日がかりでやってきた道は半分だという。
検視官の自分が言うのもなんだが、まさに何かが化けて出てきそうなモーテルに一泊。
女を呼んでもそれが化けてきた何かかもしれないと思うほどだ。
そのモーテルの主人が聞いてきた。
「あんた、あの村に行くのか?」
ロビーにあった動いているか定かではない自販機にコインを入れると電気がついたのでビールが買えた。
「あぁ、仕事だよ」
「仕事か・・・。なんにしても、早く出ることだ。あの村は呪われているんだ」
「呪われる?何に?」
「女だよ」
「なんかあったのか?」
「あの村には、死なない娘がいるんだよ」
「死なないなら呪いもしないんじゃないか?」
「死なない娘なんかいるもんか」
「どっちなんだよ」
「死んでるが生きてるんだ。何世代も同じ顔した女が生まれてるんだよ」
「へぇ~興味あるな」
「興味だけですめばいいがな」
話の内容は興味的なものだが、ビールがまずくなったのはいうまでもない。
せめて、休んでいるときくらい仕事モードの頭を解除したいのだが。
どうやら、尾ひれのついた噂はあるようだ。
大抵そんな噂は、何かを隠したい事があるからこそ村に誰も寄せ付けないようにするためというのが目的ではないだろうか?
今回の事件は一体なんだというのだろう。
朝起きて、事件は起きた。
モーテルの店主が死んでいた。
理由は不明。
だが、病死でもない。
表情は、おびえた顔をした状態で固まっており死後硬直というより冷凍されたように冷たくなっている。
この事件は、この地元の警察を呼び対処してもらうことにした。
地元警察がやって来たとき、自分たちを見て全員が怪訝そうな顔をした。
そして吐き捨てた言葉。
よそ者が来るからだ。呪われた村に行こうとするからだ。
なんだか、よほど今から行こうとしている村は嫌われているようだった。
また、あの山道をひたすら運転するのかと思うと気が重くなった。
やっとたどり着いたところには、日が暮れていた。
その村ははやり因習漂っているというほど、よそ者が入った形跡はない。
自分たちが入るや否や、事件があって要請されてきたというのに出て行けなどの声が時折聞こえる。教会のシスターが村の案内役として出てきた。
病院もなく、教会と病院が併用しているんだそうだ。
シスターは医師の知識はあるようだ。資格があるかどうかは知らないが。
泊まる場所まで案内してもらい荷解きをした。
仕事道具を取り出して、白衣を着て外に出るとアルヴァがかなり不機嫌な顔をして下の会にある談話室でタバコを吸っていた。
なんかあったなというのは、すぐわかった。
それも、アルヴァがあんな顔をするときは警察が関与することを断られたときだ。
「で、なんていって断られたんです?」
「もう葬式が終わったとさ」
「え?」
これほど苦労して必死に来た道は無駄となったということか。
「まったく、何考えているんだか」
「あれほど嫌がっていた地元警察が処理したんですか」
「いや、勝手にやっちまったんだよ」
「勝手にって、警察を呼んでおきながら争議をさっさと警察が来る前に終わらせたって事ですか?」
「そういうことだ!」
「それはまた、いいように使われてしまいましたね」
「そうだ。この村の人間が仕組んでたってわけだ」
「建前で警察には連絡をした、来た途端葬儀は終了して遺体も無し。僕の仕事も無いですね」
「一応、死体を確認した人間に聞いてみてくれ」
「じゃぁ、あのシスターですか?」
「いや、それが、死んだはずの人間がいるそうだ」
「は?」
「死んで葬式をあげた人間が突然どっかから出てきて同じ名前を語って同じ記憶を持っているそうだ」
「アルヴァ、呪われてませんよね?」
「ふざけるな!」
相当、怒っているな。珍しいことだ。よほど阻害されたのだろう、捜査に対して。
「じゃ、会ってきますよ。その、死んで生き返った人間に。どこにいるんです?」
「教会の隣にある併設さされた病院だ」
その病院に行ってみることにした。
時間はもう夕刻だったが挨拶がてらと思っただけだが。
病院について出迎えたのは、あの村に入ったときに自分たちの案内役といって出てきたシスターだった。
あぁ、そういえばそうだった。
シスターは病院も担当しているといっていたな。
次の日、死んだ人間の記憶を持った女の子が来るということがわかったがシスターは別人だと言っている。
どうしてそこまで確信をもてるのかはわからないが明日になればわかること。
朝から支度し朝食を済ませた後、病院へ直行した。
病院にはシスターだけが居た。
女の子は16歳の少女だという。
葬儀すでに終わってしまった最初の事件の被害者も16歳の少女。
何故、死んだのか。
それは、シスターに聞いてみるしかできなかった。

「リゼットは、殺されたんですよ」
「え?」
それが、シスターの第一声だった。
意外にもそんなあっさりと他殺を認める発言をするとは思わなかった。

「ですが、リゼットの遺体はあっという間に埋葬されて」
あっという間というのなら何故警察を呼んだのか。
こんな僻地で他殺事件があったとしても、周りの人間はこの村には近づかない。
他人など入れなければ事件だったとしても、誰にも知られずに隠蔽することも可能だった。
それを、わざわざ何故外部に知らせたのだろうか。

「何故です?」
「見るに耐えないものだったから」
「損傷がひどかったということですか・・・」
他殺だと犯人が断定できる何かがあったということか?

「いえ、違います」
違う?なら、一体何があったというんだ?
「では、何故?」
「理由はわかりません。どうやったらあんな死にかたが出来るのかも」
「死にかた?」
「教会の十字架に上から突き刺さっていたんです」
「え?!あの、教会ですか?」
相当高い位置にある十字架だぞ?
それに突き刺さって死ぬなんて梁の上から飛び降りるしかない。
誰かが突き落とすにしても死体を抱えて上れるほど立派な梁じゃない。
子供ならまだしも16の女性を抱えてなど。
絶対に無理だ。
なら、自殺ということになるじゃないか。

「はい、それが、二週間前なんです」
二週間前?
二週間前に、アルヴァの所属する警察署に連絡が来た。
だが、現地警察が動かない理由がわからず管轄外なので勝手な行動はできないということで時間がかかってしまった。
この二週間の間、それがなぞを解く鍵なのだろうか。

「リゼットは、死んだのです」
「どうして、そういい切れるのですか?見てないんでしょう?遺体を」
話の内容から察したことはひとつ。
このシスターは死体を確認したわけではなさそうだということだ。
シスターはその問いに答えなかった。
はぐらかされてしまった。
神にどうとかという話ばかり。
つまり、このシスターもその事件の当事者ということになる。
リゼット・クライトマン。
それが、今回の事件の被害者。
十字架に突き刺さって死んだ娘。
そして、死んだと同時にどこからか同じ顔をした同じ記憶を持った人間が現れるという言い伝え。
それが目の前に起きている。
リゼット・クライトマンと言われる少女の生前の写真を見せてもらった。
現在のリゼットの両親だ。
だが、彼らの子供ではないそうだ。
では何故そんなリゼットを育てているのかというと、この両親は代々リゼットと名乗る少女が現れると必ず保護して育てているという風習があるそうだ。
何故なら、初代リゼット・クライトマンの子孫だからという話。
どこまでが事実なのかわからないが。
その生前の写真は、小さな頃から大体16歳から大きくても20歳くらいまでの写真しかない。
それ以上生きたことが無いという。
子孫ということは、彼女は一度は子供を生んでいるということだ。
多分それは、初代のリゼット・クライトマンだろう。
だが、そのリゼット・クライトマンの人生はどういうものかというのは絶対に一族以外に伝えてはならないという面倒なしきたりの為聞くことができなかった。
 だが、このリゼット・クライトマンに会った事がある。
それは、自分が小さな頃自分の父親が担当した殺人事件。
否、殺人事件かどうかすら判断のつかなかった怪奇事件の唯一の写真。
その写真の提供者は、当時の事件関係者から内密に受け取ったものだったという話を聞かされていた。
昔、その写真はさすがに気持ち悪かったがその美貌の少女にあってみたいと思った。
その少女が、今、死んだという連絡を受けたのにもかかわらず目の前に居るのだ。
リゼット・クライトマンと名乗って。
だが、シスターは頑なにリゼットではないと否定する。
その根拠はわからない。
あの写真をいつも持っていた。
教会に行ったとき、シスターにその写真を見せた。
シスターの顔が一瞬にして青ざめた。
やはり、同じ死に方をしたようだ。
腹から貫通した十字架の上部。
十字架の真ん中で体は止まり、顔を上げて手を祈るように手を合わせ笑顔で歌っている。
その、異様な姿。

「では、ひとつだけ確認を」
「何でしょうか?」
「リゼットの生前の写真を見つけました。ご意見をお聞かせください」
もちろん、この写真は現在の事件に関与したリゼットの写真ではない。
父親が持っていたリゼットの写真だ。
リゼットという名の少女かどうかはわからないが、背景にうつる教会のステンドグラスも十字架も同じ形だ。
同一人物と考えて間違いは無いだろう。
もちろん、謎はこの写真が自分が十五歳の時に撮影されたもののはず。
「こっこんな!こんな写真を、どうして・・・」
さすがに動揺しているな。
しかし、隠したいのはなんだ?
十字架に刺さったまま歌うやつがいるとすれば、リゼットはそのまま行き続けているのではないか?
「十字架に刺さったまま生きて歌っていたなんて、信じがたいですがね」
「・・・どうか、どうかその写真のことは誰にも話さないでください」
「なら、全部お聞かせ願えますか?」
「・・・わかりました」
やっと話す気になったのか。

「死なないリゼットが死んだのですか?」
「はい、死にました」
「どうやって」

自分とシスターしか居ない教会ののドアが開いた。
そこは、教会の十字架の前。
血の跡が拭いたとはいえ残っている。
最近のから随分昔のまであるようだ。
錆びの様に見えるが、全部血で染まった十字架だ。
ドアが開いた音と同時に声が聞こえた。
リゼット・クライトマンと名乗る現在のリゼットが立っていた。
「こうやって、死んだんだよ。リゼットは」
彼女は首に巻いていた包帯を取った。

「まさか・・・」
「首を斧で切られの。それでも私は話し続けた。
首だけこの教会に置かれてたのだけれど。私が歌い続けるから、別の体に縫いつけたの。
皆、私に歌をやめさせるために」
「これが、リゼット・クライトマンの残った体です」

現在のリゼットと自分の持っているリゼット・クライトマンとの違いのひとつ。
それは、髪の長さ。
ちょうど、彼女が言うように首の位置でばっさりと乱雑に切られている。
冗談だろ?
首を縫いつけた?
じゃぁ、この体は一体誰のだ?
「シスター、彼女の言うことが真実だとしたら彼女の体は誰のものなんですか?」
「貫通した体をそのままにしておくことはできません。リゼットを死なせるわけにはいかないのです」
「何故ですか?何故そこまでリゼット・クライトマンにこだわるのですか?」
「彼女は、神の歌を歌う人なんです」
「歌?」
「そうです。その歌を歌い続けるためにこの村に居るのです」
「歌って何かそんなに意味があるものなんですか?」
「歌い続ければ、災いは一人だけに訪れるという言い伝えがあるんですよ。この村には」
この村が、嫌がられる理由はすでに他の村にも伝わっているだろう。
なんせ、どういう仕組みなのか理解はできないがリゼットは生き続けている。
首を据え変えて、同じ人間を言い伝えのために思春期の娘の首を切断し体をリゼット・クライトマンに渡す儀式。
更に理由が不明なことがある。
それは、何故同じ死に方をするのか。というところだが、深くかかわるのは恐ろしい。
正直、あの教会のドアを開けたリゼット・クライトマンの目は背筋が凍る思いをした。
死亡診断書には、検視をしていないがシスターと話し合った結果を記載することにした。

リゼット・クライトマンは、死亡。
死亡原因は特定不可能。
事故により死亡と断定。

彼女は、一体何者なんだろうか。
村を出る前に一度だけ聞いた。
教会から響く、彼女の歌声が。
それは、とても美しく響いて村中に聞こえていた。
村人の顔も安堵したような顔をしている。
たった一人の人間が災厄の根源だとも気付かずに。
言い伝えにとらわれた村の謎か。
首を切断してもなお生きている人間が居るというのは、信じがたい話だがね。
08:56  |  リゼット・クライトマン  |  Trackback(0)  |  Comment(2)

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見知らぬ訪問者

2008.12.14 (Sun)

次々と、突然何の前触れも無く現れて
ただ私を見て出て行く。
何も言わず。
何も語らず。
昼夜問わず、私のところへやってきては私を見て出て行く。
私はいつもここにいて、ここ以外の居場所は無い。
出て行くにもどこに行ったらいいのかわからない。
何をしたいのか。
何が出来るのか。
私は、ずっとここでつながれているのだろうか。
どうしてここにいるのかは思い出せない。
何があったかというと、気がついたら病院で、気がつけばここにいる。
どのくらい時間がたっているのかはわからない。
でも、何故かわからないけれど思い出したくないと思ってる。
どうしてだか、わからないんだけれど。
大きなガラスの窓越しに人々はやってきて、そして私を見ている。
見るだけで何もしないし、話している様子も無い。
ずっと明るい部屋。
外が見える窓は無い。
私の視界には。
だから、昼なのか夜なのか朝なのかそれすらもわからない。
いつ私は、地面に降りられるのだろうか。
ぶら下がっているんだ。
ずっと。
どうして?
思い出したくないという言葉だけが巡っている。
きっとよくないことなんだね。
どのくらいたったのか。
もう何十年と過ぎたように感じるくらい。
私はつながっている。
首に巻きついた紐に。

聞える言葉はこれだけ。
「何故、死なないんだ!この女は」
08:16  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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パンドラの箱 身代わり

2008.12.13 (Sat)

「この箱をあげるわ」
「これが、あのパンドラの箱なの?」
「そう、7日間の苦しみの後箱を開けると幸せが待っている」
「幸せ?」
「そう、あなたの願いが叶うわ」
「苦しみに耐えれば?」
「耐えることが出来ればの話ね」

一日目
その箱をもらって私は早速、実行した。
「ねぇ、今日誕生日でしょ?由佳にこれプレゼント!」
「うそ!ありがとー!」
「これさ、あのパンドラの箱なんだよ!」
「何?パンドラの箱って?」
「今日から、七日後に箱を開けると願いが叶うんだよ!」
「七日後?」
「そう!だから、七日間絶対あけないでね!」
私は、パンドラの箱を由佳にプレゼントした。
彼女に苦しみぬいてもらうために。

二日目
「ねぇ?聞いた?」
「聞いた!聞いた!」
「びっくりだよねぇー」
「うん、すっごくびっくりした」
クラスメイトが朝から騒いでいる。
何があったのだろう?
「どうしたの?」
「聞いてないの?由佳から」
「今日まだ会ってないよ」
「会えないよ、絶対」
「何で?」
「由佳のお兄さん、事故で死んだんだって。それもさ、変な死に方でさ」
「変な死に方?」
「事故起こす前に、すでに死んでいた可能性があるとかニュースでいってたんだよ」
「何それ?じゃぁどうやって運転してたのよ」
「だから、気持ち悪いんじゃない」
7日間の苦しみがあることを由佳には伝えていない。
由佳に苦しみを味合わせて、私があの箱を開ければいい。
そうすれば、手に入るわ。
私の望みが。

三日目
意外なことに由佳は登校してきた。
全員、どういったらいいのかわからず遠巻きにしていた。
「登校してきて大丈夫なの?」
由佳に聞いてみたが、普通に笑って
「全然平気!大丈夫だよ!」
というのだ。
どういうことだ?兄が変死したというのに。
その日の午後、自体は急変する。
兄の死に由佳の母親が加担しているという容疑がかかったのだ。
早退する由佳の姿を見て少し気になった。
「ねぇ、由佳」
「何?」
「あの箱、開けてないよね?」
「うん、まだ七日たってないし」
「開けちゃダメだよ。こんな時だからこそ七日後きっと好転するって」
励ますフリをして、開けないように釘を刺した。
苦しむがいい。
もっともっと。
どれだけ、今まで私はあなたたち家族が憎かったか。
思い知ればいい。

四日目
証拠になる物証は出なかったが、由佳の母が事件に関与している可能性は高いという状況証拠だけが浮き彫りになっていた。
丸一日否定したが、信じてもらえなかった精神的疲労からかその日の朝、家の中で自殺していた。
それは、ニュースで知った話。
さすがに、学校に来ないだろうと思った由佳は何故か登校してきた。
クラス中が由佳の姿を見て、固まったのは言うまでも無い。
由佳は、悲しみの顔をするどころか満面の笑みといっていいほど明るかった。
それが異様さを放ち、噂は尾ひれがついてあっという間に学校中に広がった。
由佳が全部仕組んで家族を殺しているんじゃないかという話だ。
噂はあっという間に広まり、尾ひれがついてどんどん広がっていく。
由佳が兄に暴力を受け絶えかねて殺した。
由佳が母に迫って自分が殺したって言えと脅迫したなど。
面白がって話している学校中の人間だ。
結局、人が死んでもその不幸が自分に関係なければ面白いネタの話になるほどこの世は腐っているという状況を今目の当たりにしているんだろうな。
同じ状況を味あわせないと気がすまないんだよ。
私の気がすまないよ。
由佳。
覚えてないなんていわせないからね。

五日目
噂は広まって、もちろん先生の耳にも入りしばらく学校を休んではどうかという提案をしたそうだ。
というのは、建前で警察に事情聴取に行ったというのはもう誰しも気付いていることだった。
由佳は今何を思い、何を苦しみ、何を考えているのか。
便利なもので、由佳に直接聞かなくても近所のおばさんたちの情報ソースは素晴らしい。
それに、ニュースもこぞって取り上げている。
手に取るようにわかる状況は、楽しくて仕方が無い。
後ちょっと。
後、ちょっとだよ。
由佳。
あんたが、苦しんで苦しんで泣き叫ぶ姿が見たいな。

六日目
由佳の父親が愛人を殺した罪で逮捕された。
私は、学校に行けなかった。
どうして?
なんで、殺す必要があったの?
私のお母さんを。
由佳の父親は、元々私の母と結婚していた。
それを、由佳の母親が無理やり奪い去って行ったのだ。
何より驚いたのは、自分と同じ年の子供がいたこと。
それも父の子だという。
異母兄弟がいたのだ。
愛人関係にあった。
いや、愛人じゃない。
結婚前から二人は恋人で、親同士の紹介で知り合った母とは義理で結婚したようなもの。
私が生まれてすぐに父は女のところに行ったのだ。
結婚して二年後には離婚。
愛人だった女をと入籍した。
その子供がクラスメイトになった時、私は絶対に口を利かないしかかわりたくないと思った。
だが、由佳からこっちに来て行った一言が私をこの世から突き落おとすほどひどい言葉だった。
「私たちを選んだお父さんのことなんて気にしないで仲良くしよう。
 どうせあなたのお母さんとはどうでもいい関係だったんだから。
 子供の私たちには関係ないじゃない?一応兄弟になるんだし。一緒に仲良くしようよ。
 お金が必要だったらおとうさんにねだってもらってきてあげるから」
満面の笑みを浮かべ、施しをやるよと初対面で平気な顔してやってきた。
この女だけは、許さない。
そう思った。
私から、母から、お父さんを奪った。
何より許せなかったのは、母の下を去り籍を入れたのにもかかわらず父は相変わらずうちに出入りしていたことだ。
当たり前のように。
母も追い返すことなく、何も咎めずにいた。
どうして?
どうしてなの?
私には理解が出来なかった。
本妻だったはずの母が、愛人と呼ばれている由縁はそこからである。
母と二人きりの生活で、何故父は母を殺したのか。

七日目
母の葬儀に、なんと由佳が来た。
親戚一同追い返せと大騒ぎになった。
由佳は笑みを浮かべながら言った。
「そんなに騒がなくても。父は選んだんでしょう。一緒に死んでくれる人を」
父は、その日、母を殺したことを悔やみ自殺していた。
由佳の母親は、父とは結婚してもうまくいっておらず他に男を何人も作っていた。
由佳に兄弟はいるが全員、異父兄弟だ。
それでも、父は全員を育てるため働いていた。
その環境が嫌になってうちに来ていることは知っている。
だが、そんな女を選んだのは父自身だ。
戻ってくるなら戻ってくるでけじめをつけるべきだ。
離婚して、もう一度籍を入れればいい。
それは、叶わぬ夢になったけれど。
葬式もひと段落し、人がまばらになった頃由佳からメールが入った。
裏に来て欲しいと。
行ってみると箱を持った由佳がいた。
なんて、都合のいいときにきてくれたのだろう。
「今日七日目だから。どうしても、会いたかったの」
「嬉しい。私も見たかったの。箱を開けた後どうなるか」
「じゃぁ、開けていい?」
「待って。私が開けちゃダメ?」
「え?なんで?あけた後に中身を見せてあげる。ちょっと仕掛けてあるのあけた後にびっくりさせたいから」
「わかった」
由佳から箱をもらって、箱の蓋を開けた。
ゆっくりと。
中には封筒が入っていた。
「ねぇ、見せて?」
由佳が、箱を覗き込んでその封筒を手にとった。
なんの疑いもせずその手紙の封を切った。
「うれしい!私の夢が叶ったわ!」
何?
何が書いてあったの?
「ちょっと見せて!」
手紙にはこう書いてあった。
大切にしている異母兄弟の由梨と一緒に住み暮らすことが出来るようになる。安心しなさい。
そんな。
どうして、こんな女と私が住まなくちゃいけないの?!
「独りになったからどうしようかと思ってたの。よかった、由梨がいてくれて。一緒に暮らしていこうね。じゃぁ、私見つからないうちに帰るね」
手を振りながら笑ってこちらを見て走り去っていった。
呆然と立ち尽くしていた私の背後から声がした。

「使い方を間違えれば、あなたが不幸になるの。不幸だけしか手に入らない。最高の不幸だけ」
08:29  |  パンドラシリーズ  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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乾杯

2008.12.12 (Fri)

「お前は、いつも俺の側にいて笑っていてくれればそれでいい」
それが、彼の口癖。
彼は時折、私の部屋に来てソファーに並んで座っているときに決まって言う台詞。
恋人になって半年経つが、恋人らしいことはしたことが無い。
付き合い始めたきっかけは、私が勤めている会社に営業としてやってきていた彼と受付の私。
色々話しているうちに気が合うなと思っていた矢先、彼から食事に誘われた。
それまで、何の疑問も持たなかった。
付き合い始めて気付いたことがある。
それは、彼が何の営業職をしているのか謎だったのだ。
会社名からわかるようなものでもなく、彼自身から聞いても営業だよただの。という素っ気ない返事。
彼が会社に訪ねて営業に来るとき、決まって女性社員が出てくる。
アポイントはとっているようだ。
不思議なことに、女性社員は入れ替わり立ち代り多数の人間と仕事をこなしているようだった。
会社内でその女性社員の一人に聞いてみた。
「あの、時折来る営業の坂口さんっていう男性の方いらっしゃるじゃないですか?」
「あ、うん」
「あの方って何の仕事をしてる営業なんですか?」
「え?なんで?」
「いえ、沢山の女性社員の方と取引をしているので何をなさっているのかなと思って」
「販売だよ」
「販売・・・ですか?」
「うん」
それ以上、彼女から聞きだせる情報は無かった。
というより話を切られそそくさと席を立っていったのだ。
まるで、触れられたくない何かに触ってしまったようだ。
 偶然、という言葉にこれほど驚いたことは無かった。
彼の職業がわかった日。
それは、私は受付をしているが社長の付き添いということで立派なホテルに言ったときの事。
素敵なレストランでの会食。
取引先は大手の会社で、もっとうちの会社と綿密な関係を気付きたいということからセッティングされた接待だ。
その、とても立派なレストランで彼の姿を見た。
いつもの営業にしてはリッチなスーツを着た彼の姿が。
女と共に楽しそうに話している。
女は、財布から現金を彼に渡し彼は何も言わず受取った。
笑った彼はこのホテルに部屋を取っているからと女に告げると、女はいつも手際がいいのね。と答えた。
彼の営業、それは彼自身が商品だということはすぐわかった。
愕然としたまま、私は接待の席に戻り営業スマイルで乗り切った。
その女と寝た後、私の部屋に来ていたということか。
私に手を出さない理由は、客ではないからということか?
わからなかった。
確かめようが無かった。
直接聞く勇気なんて無い。
だから、彼が家に来た時にワインを開けた。
「美味しそうなワインだったから買ってきたの。飲むでしょ?」
「あぁ、飲む」
私は、ワイングラスをふたつ取り出し片方に白い粉をいれた。
赤ワインに白い粉だ。
目立つだろう。
沈殿していく粉。
彼がこの後、どういう行動に出るかが私にとっての答えにしようと思った。
「おまたせ」
そういって、テーブルの上にふたつのワイングラスを置いた。
彼の前に粉の入ったワイングラス。
それからキッチンに戻り、クラッカーにチーズをのせたちょっとしたオードブルを取りに行った。
オードブルを持ってテーブルに戻ると、粉の入ったワイングラスは私の席の前に入れ替わっていた。
何もいわず私は笑って言った。
「乾杯しよう?」
「何に?」
「二人の出会いに」
グラスを鳴らして、二人で一緒にワインを飲んだ。
すぐに彼は咳き込み始め、ワイングラスを落とし床に割れたグラスの上にもがくようにして倒れそのまま動かなくなた。

「グラスを入れ替えたりするからよ、私を信用してなかったんだね。
 粉砂糖をいれただけ。毒入りは私のワイングラスだったんだよ」

彼にとって不都合な結果を残すように仕組んだ。
私が死んでも。
彼が死んでも。
私はあなたの商品じゃないの。
あなたが商品なの。
だから、廃棄するわ。
08:30  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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最後の本

2008.12.11 (Thu)

私はよく本屋さんへ行く。
近所には大きな書店があり、その書店は漫画や小説など多彩な文庫を取り揃えている。
私の大好きな店だ。
その書店に来るのが、今日は最後の日。
「あの事で相談があるの」
それは、血縁関係にある人間からの言葉だ。
あの事とは、その人の恋人が浮気をしているかもしれないという相談を受けた。
まさか、と思いつつ過ごしていると恋人のほうから電話があり慌てた様子で助けを求められた。
結局、浮気かどうかというと本気ではないというだけであってどこまでの関係なのかというのはわからなかったが女の影は明らかにあった。
その事は、すでに相談者には発覚しており、発覚後それ以上の事態に陥ったため私を呼んだのだ。
で、丸く治める方法を私は考えた。
結果的に、詐欺のようなものにあっていたわけなんだが。
なので、丸く治めようと考えたのもある。
それは大変な作業であり、私はパニックになっている恋人をどうにかして全部吐き出させて全ての対処をした。最悪、裁判沙汰になる話だった。
そして、相談者にはこの事を知らせない方針にした。
すでに解決していることであり、問題を増やすだけだと判断したからだ。
更に、懲りただろうというのもあった。
相談者が家に来た理由。
それは、まだ懲りていないということがわかったからだ。
進行しているような浮気の雰囲気を漂わせているというのである。
そこで、話しているとどうも話がおかしい。
私はその恋人の行動が浮気とは結びつかない話に思えた。
どちらかというと、病的な何か。
そっちを心配した。
親身になって対応したその事件は、自分の家族から相談者に漏れており緘口令を出しても意味が無いということを思い知った。
何故、その緘口令が破られたかというと同じ気持ちだったからだ。
病的な何か。という心配である。
その相談者が家に来た時の会話。
その一言が私の全てを完全に否定した。
否、潰したといっていいだろう。
親身になって、必死に翻弄して、事あるごとに私は走り回った。
だが、その相談者の口からすらりと出てきた言葉が私をどう見ていたのか理解できた。

「信用できない恋人のほうがあんたよりはしっかりしてる。絶対」

じゃぁ、一体、私は何なのだろう。
この相談者にとって一体なんだったのだろう。
思いついた言葉は一つしかない。
都合が悪くなった時だけ利用する価値くらいはある。
その程度の、存在ということだ。
一緒に聞いていた家族は、その言葉を聞いても何も言わなかった。
私を庇うことも。
私をフォローすることも。
だから、思った。

家族もそう思っているんだと。

「めずらしいね。漫画じゃなくてムック本なんて」
「うん」
「・・・買ってくるように頼まれたの?」
「いや、私に必要なの」
「は?」
「今日でここに来るのは最後だね。今までいっぱい本を読んできたけれどこんな大きな書店が近くにあって助かったよ」
「この本・・・」
「もう、決めたの。いらないものは捨てなさいってよく言われない?」
「え?」
「だから、買うの」
この本を買い、中身を書き終えれば私はもうすることは無い。

否、ひとつだけ残っているか。
斧を買っておかなくちゃ。
いらないものを捨てるために必要な道具だから。
08:19  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(6)

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タイムチェンジャー

2008.12.10 (Wed)

未来とは、こういう世界だったと誰が思っただろうか。
だからこそ、この機械は発明された。
タイムチェンジャー。
タイムマシンは随分昔に開発されていたが、その時間に干渉するという行動が未来の人間にはどうしても出来ないことだった。
なので、タイムマシンは過去をさかのぼるための歴史旅行業者が現在使用している。
だが今日、私達はタイムチェンジャーとして働いている。
事前に起きたことなら防げるという発想から生まれた。
悲惨な事故や事件を起きる前に未然に防ぐ。
その犯人を拘束し未来へ連行。
そこで裁判を受ける。
自然災害も、予知をしたということで住人を避難させる。
そういうことを繰り返した。
それが、タイムチェンジャーの仕事内容。
時として、見たくも無い現実を見せつけられるわけだけれど。
時間を変えるということが、どれだけ危険なことなのか実際やってみないとわからないというのがこの研究の落ち度だった。
それは、対して影響が無いだろうという結論から実行に移ったがその結論はもの見事に外れた。
そして今私は、タイムチェンジャーとして未来にいる私に連行され裁判所の被告人席にいる。
「あなたは、タイムチェンジャーとしての能力を利用して恋人であるローラン・ベネディクトを殺害した。タイムチェンジャーの職権乱用且つ重大な犯罪だ」
「自覚しております」
「そのため、過去の君も連行した」
「はい」
「過去の君はわけがわからないだろうが、そこにいるのが未来の君自身だ。そして、君は恋人であるベネディクトを殺害した。過去に飛んで車の単独事故で死ぬはずだった彼を」
「死ぬ人だったのなら、わざわざ殺さなくたって・・・」
「一旦は助けたんだ、その事故にあう前に。だが、彼は君を手に入れるために裏でとんでもない諸行をしていることがわかった」
「とんでもない所業って?」
「過去の君に言うのも辛いことだが・・・」
「え?私が、辛い?何故です?」
「彼はね、過去の罪人だったの。この未来でさえ彼が脱走したことを誰も気付かなかった」
「まさか!そんなはずあるわけが!」
「変な気分ね、自分と話しているなんて」
「どうでもいいです!そんなこと!何で脱走に気付かなかったんですか?!」
「彼は、もっと未来から来たタイムチェンジャーの人間だったんだ」
「え・・・?」
「未来から来た人間が死ぬと時空のズレが生じることがわかった。過去で死んだ場合のみだ」
「時空のずれ?」
「そう、未来と過去が入り混じるの。そして、無くなるのよ」
「なにが?」
「現在が」

「いかがですか?以上を持ちまして、タイムチェンジャーによる現在をなくした世界をご覧頂きました。このタイムチェンジャーを開発した会社は、現存しておりませんがこの未来ではタイムチェンジャーの危険を予知して全てのチャイムチェンジャー操縦士を排除しております。このような、恐ろしい未来があったということを肝に銘じてタイムとラベルをお楽しみください。」

旅行会社の女が、別の未来から来ていて、その台詞を傍聴席にいる人間にむけて言った。

現在の人間が、この世界にはいない。
08:51  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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生き写し

2008.12.09 (Tue)

高校に上がってすぐ私は同じ中学出身の友達がいないことでクラスで中々輪に入れず、なじめない日々を送っていた。
だけれど、高校に転校生という珍しい人が入学早々来たのは驚いた。
そしてになりより、彼女の容姿と声は私の生き写しだった。
お互い驚いて、お互い見合って、お互いにらみ合った。
そして、大笑いした。
きっかけはそんな事くらいで。
仲がよくなったのも嬉しかった。
高校生活というちょっと不安な日々が始まったばかりだったので浮かれていたのもある。
同じなのは、容姿や声だけでなく髪型も同じだった。
あと、趣味も。
そうそう、それとね名前も同じなんだよ。
私の名前は、由貴。
彼女の名前は、雪。
毎日一緒で、毎日側にいた。
それが、崩れた瞬間が訪れたのは一年後の話。
雪に彼氏が出来たのだ。
本来、親友ならば喜んであげるところだと思う。
でも私は、寂しかった。
彼氏が出来た彼女は、私とは別人のようだった。
皆にとっては何もわかってない様子で。
雪なのか私なのかいつも間違える。
笑って私は由貴だよって答える。
彼女といる時間は、日に日に目に見えて減っていった。
登校も帰宅も彼氏と一緒に居る、雪。
手を振って、バイバイって笑顔で見送るけれど私はその後姿を見つめるのが辛かった。
なにより、あの幸せそうに笑う雪が私の横に居ないことが悲しかった。
ある日、突然雪の彼氏から電話があった。
話したいことがあると。
何事かと思って夜、家を出た。
待ち合わせは近くの公園。
そして、彼は遅れてきた。
「ごめん、急に呼び出して」
「いいよ、どうしたの?突然」
「ちゃんと、話そうと思って」
「何を?」
「俺、俺さ・・・ 雪と別れたいんだ」
「え?」
「本当は、由貴ちゃんのことが好きで少しでも由貴ちゃんの近くにいられたらなってくらいだったんだけれど雪から告白されて・・・おんなじ顔してるし、同じ声だし、断れなくて・・・。今まで、ごめん」
私は、何もいえなかった。
雪の家も、すぐ近く。
彼は、私を雪だと思っている。
何より許せなかった言葉が渦巻いている。
私に似ているから雪を代用しただと?
私から雪を奪い取った理由が、私を好きだから?
なんなの?
なんなのよそれ?
「どういうこと?」
振り返ると雪が立っていた。
「どういうことよ、それ?!」
「由貴ちゃん、・・・いつから」
「さっきから居たわよ!!」
「本当の気持ちなんだ!由貴ちゃん。辛いんだ、君が俺たちに手を振って居る姿を見るのが」
「何言ってるの?私は・・・」
「待って」
私は大声を出した。
二人ともこっちを見てびっくりしている。
「由貴ちゃん、私は平気だよ。だから、由貴ちゃん彼と話して付き合ってみたら?」
私は、雪のフリをした。
それを察した雪はちゃんと答えた。
「・・・突然だから、ちょっと考えるわ・・・。後で電話する」
「うん」
その後、解散となった。
私と雪は電話した。
そして、彼を呼び出すことにした。
学校の屋上に。
雪が由貴になって会っている。
「私ね、雪には悪いと思っていたけれど私も本当はあなたの事好きだったの」
「本当・・・に?」
「うん、私も後ろから手を振っているの辛かった」
「雪は・・・怒ってた?」
「いや、なんとなく気付いていたみたいだよ。私を見ていないことくらいっていってたから」
「そう・・・か」
「だって、私と初めてキスした時あなたこういったじゃない。由貴ちゃんって」
「え?」
「私と由貴を、見分けも出来ないのね。一年以上も付き合ってて」
勢いよく、雪は彼を突き落とした。
私はその頃、雪が通っている塾に顔を出している。
雪として。
それから、時間を抜け出しては由貴に戻って同じ塾の別クラスに授業に出た。
「自殺の原因はわかりませんか?」
警察が来た時そういわれたけれど、二人で答えた。
「わかりません」
「あなたたち、どちらかを見たという証言もあるんですが」
「どっちですか?」
「いや、それが、どっちかといわれるとわからないそうで」
「私達は塾に居ましたし。塾の先生に聞いてください」
こうも全てがうまくいくとは思わなかった。
雪は私の元に返ってきた。
あの幸せそうな笑顔をして。
私の横に居る。
二度と離れられない秘密も共有して。
私は、彼の唐突な電話の前にメールをしていた。
由貴です。雪には悪いけど、私あなたのことが好き。それを伝えたくて と。
08:43  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(3)

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ダミーシステム

2008.12.08 (Mon)

対策を練る。
これは、真剣勝負だ。
どうやれば、どうすれば、やつから逃れられるのか。
否、やつの所業から脱出できるのか。
それが私の目的だ。
毎日毎日インターホンを押してやつはやってくる。
一度話を聞いてしまったのが馬鹿だった。
色々なものを売りつけに来る。
それを、何度断っても毎日来る。
やつのねじまがった根性は計り知れない。
だからといって、居留守を使ったら一体どれだけ時間を裂いたんだと問いたいくらいの長文の手書きで書かれた便箋が残されていく。
その便箋を触るのも気持ちが悪い。
大体、B5サイズの便箋にびっちりと文字が書き連なっている。
居留守もしくは本当に留守の時にその手紙は最大十通に達したこともある。
嫌がらせにしてもほどがある。
その十通手紙の内容は全て違う。
十通どころではない。
手紙がおかれている場合は、全てありとあらゆる文言を取り入れた商品の説明とそれがどれだけ素晴らしいかそれをひたすら説明している。
正直に言おう。
何度も言ってやった。
買うつもりはありません。
何度も、何度も、何度も。
私は、ついに戦う覚悟をした。
手紙を避けるにはインターホンに出るしかない。
だからこそ、この作戦ならばきっとやつも悔しがるだろう。
ぎゃふんと言わせてやりたいんだ。
なんだか、目的はすり変わってきたがやつのねちっこさに私もムカついて対抗したくなったわけだ。
そこで、この作戦だ。
見事だといっていいだろう。
私の勝ちだ。
さぁ、来るがいい。
そして、驚くがいい。
私のこの作戦を。
インターホンにでてやろう。
見事この作戦をクリアできたのなら私は次の手を考えよう。
負けない。
絶対に負けないぞ。
私は、玄関にインターホンを20個装備した。
そして、玄関に張り紙をした。
「どれかが本物のチャイムです」 と。
08:25  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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無人自動車

2008.12.07 (Sun)

一人で出かけた。
車を運転して。
大通りに出てから意外と込んでいないことに感謝しつつ、のんびりとアクセルを踏む。
時折、信号停車。
買い物する目的でちょっと田舎のほうに出来た大きなショッピングモールを目指す。
カーナビがその新たに出来たショッピングモールを建設予定の時から覚えていてくれたらしく、行きがけは行きにくい道を教え帰りは行きやすい道を教えてくれる。
どうして、同じ道を教えないのかな。
カーナビは・・・。
行きやすい道を最初から案内して欲しいものだ。
だが、方向音痴の私はカーナビが手に入ってからというもの本当に助かっている。
自分が今どこに居るのかまったくわからなくなるからだ。
更に、道を聞いても理解が出来ない。
行動範囲は今まで生息地域だけだったしな・・・。
長らく信号に引っかからず、青信号ですーっと行けたときちょっと得した気分になる。
私だけだろうか?
で、赤信号に引っかかった。
この信号は長い。
ギアをニュートラルにして、サイドブレーキをひく。
両足を休めて。
ふと、左横の斜線にいる車を見た。
運転席には、ダックスフンド(小型犬)が立ってハンドルを握っている。
人間はいない。
「うそぉ?!」
ダックスフンドは、まっすぐ前を見てハンドルを握っている。
人間がいない。
でも、ここは3車線ある大きな道路。
その車がいるのは真ん中の車線。
だから、人が降りるはずは無い。
いくら見ても、身を乗り出して見ても人がいない。
信号が青になった時、走り出したらどうしよう?
止めたほうがいいよね?
いや、アクセルに足届かないでしょう・・・。
どうやってここまで来たの?
信号が青になった。
瞬間、突然座席がぐいーんとあがって人間が出てきた。
犬はハンドルを握ったまま。
その上から人間がハンドルを握って走り去っていった。
信号待ちが長いので、シートを倒して寝ていただけだった。
後ろからのクラクションで自分も慌てて、ギアを1速にいれサイドブレーキを下ろした。
一人車の中で爆笑しながら運転した。
「だよね、んなわけないよね」
大真面目に心配した私は何だったのだろう。
次の信号停車の時、また、その車の横に止まった。
また、犬だけがハンドルを握っている。
くすっと笑いながら見ていた。
信号が青になったとき、シートは上がらずに発進して走り去っていった。
08:11  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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窓から見えたもの

2008.12.06 (Sat)

会社帰りのバスの中。
必ず私は窓際の席に座る。
入り口から右側。
入って二番目の席。
何故なら、その席の窓際だけタイヤがあるため床が高くなっている。
背の低い私は、足が届く席なので小さな頃から大好きな愛用席である。
窓に頭を預けて、揺られながら目を瞑る。
疲れきっているといつの間にか夢の中。
イヤフォンから聞えてくる音楽は私だけの世界にしてくれる。
苦痛のバスの中を楽にしてくれるアイテムだ。
寝ていたら乗り過ごすのでは?という疑問があるだろう。
それが、ほぼ、ない。
理由は、大きなカーブがあるため思いっきり頭を窓にぶつけて目を覚ますのである。
というわけで、私の左側の側頭部にはよくたんこぶが顔を出している。
ごっちん。
痛い・・・。
たまに、いい音を出すのでバスの中の注目を浴び恥ずかしい思いをする。
今日は、遅くなってしまってバスの中の人もまばら。
二人用の席をひとりでゆったりと座っていつもどおり頭を窓に預けた。
ゆらゆらと揺れながら、この日は眠くならずただ音楽に全身を浸らせて。
ぼーっと窓の外に目線をやっていたものの視界には入っていない。
そんな目をしていた。
もう、夜の11時を回っている。
どの店も店じまいをしてシャッターが下りている。
家に近づくにつれ田舎になるので、どんどん回りは暗くなっていく。
街灯も少なくぽつんと灯りが真昼のように光っている店があった。
なんだっけ?この店。
それがきっかけで目をしっかりと開けて私はその店の前を通る時、じっと中を見た。
私は、固まって動けなかった。
通り過ぎたバスの速度がどのくらいかはわからない。
でも、中を見ようとしてちゃんと目を見開いて私はその店の中を見た。
その店には、生首が沢山並んでいた。
通り過ぎた後、あの店が何だったのか思い出せない。
次の日、帰りに何の店だったかだけでも見たいと思った。
バスの中からその店を見た。
ありがたいことに、店の前で信号停車した。
じっくり見れると思ったのもつかの間シャッターが閉まっていた。
張り紙がしてあり、読んでみるとこう書いてあった。
「勝手ながら都合により閉店いたします。店主」
店の看板も、何もかもが、すでに剥がされていつ閉店したのかわからないくらい時が過ぎた風貌だ。
だが、私が見たのは昨日の話。
沢山人が居て、沢山の生首があった。
ぼーっとしていた?
いや、店の中を見ようと思ってちゃんと顔を上げた。
ちゃんと目を開けた。
ちゃんと起きていた。
なら、あれは何だったんだ?
私は、何を見た?
バスの後ろの席で主婦の会話が聞えた。
「この店でしょ?あの噂の店」
「そうそう、この店よ。もう潰れて半年は経ったわよね」
「あんな恐ろしいことをするなんて」
「こんな近所であんな事件が起きたらそりゃぁ店もたたむわよねぇ」
「この辺りも物騒になってきたわね」
何があった・・・?
本気で、後ろを振り返り何があったんですか?と聞きたかったが聞けなかった。
でも、昨日見たぞ?
閉店したが半年前?
なら、あれは一体・・・。
母に聞くと笑いながら答えた。
「あんた、あそこ、こんど美容室になるっていってたよ」
まじかよ!
あれ、練習カット用の人形頭だった?
この2日間を返せ!
本気で怖かったのに!
08:52  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(2)

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お手紙

2008.12.05 (Fri)

「あの、すみません」
「はい?」
横を振り返ると青年が立っていた。
横断歩道の赤信号で足止めを食らっている私に、突然声をかけてきた。
「ポストってこの辺どこにありますか?」
青年が手紙を見せて私に聞いてきた。
少し考えて、ポストの位置は思い出せなかった。
「郵便局なら、この道をまっすぐ行ったつき当たりにありますよ」
と、青年に言うと困った顔をする。
「いえ、ポストがいいんですが」
信号が青になった。
受け答えに面倒になったので
「あぁ、すみません。わかりません、じゃぁ」
といって、そそくさと後にしようとしたら手を捕まれた。
さすがに、びっくりした。
「あなたにあげます」
青年は持っていた封筒を私に手渡して、私をぬいて横断歩道を歩いていった。
残ったのは怪しげな青年からもらった手紙だ。
つまり、これを、私がポストに出せって事ね。
そう解釈した。
横断歩道を渡り終わった後、手紙を見た。
ポストに出せないことが判明する。
まず、住所が書いていない。
その次に、切手が貼られていない。
何より、宛名ががない。
封筒の裏を見ると、青年の名前だけ書いてある。
切手代を踏み倒したのかと思ったのだが。
もっと面倒な話になった。
ぴっりちと封をされている手紙。
今時、蝋印が押されている。
蝋印なんてはじめて見たなぁ。
印には何かのマークであり文字ではない様子。
文字だったとしても読めない。
何語?
家に帰り、手紙を前に考えた。
さて、どうするべきか。
青年は、あなたにあげますといった。
それをどう解釈するのか。
私に読めということか?
ならば、最初からポストなんて聞かないだろう。
ということは、もうどうでもいいから好きにしろということ?
じゃぁ、自分で捨てるだろう。
手紙を手に取り、灯りに照らして封の中を覗いてみる。
やはり、手紙が入っている。
あと、何か、小さな写真かな?
どうしよう?
かかわらないほうが身のため?
そうだ、警察に届けるという手もある。
拾ったということにして。
このまま捨てるのも気がひけるしなぁ。
なんだかんだ悩んでそのまま手紙はリビングの机に置いたままにした。
次の日には、その手紙のことは忘れていた。
それから、どのくらい経ったか覚えていない。
リビングに手紙が開いた状態で置いてあった。
家族の誰かが開けたのだろう。
しまった。
すっかり、忘れていた。
そして、手紙を手にとって中身を見た。
”記念にこれを贈ります。”
それだけ書いてある。
封筒の中身を見た。
ロッカーの鍵だ。
この鍵には見覚えがある。
駅にあるロッカーの鍵だ。
いつもあの道を通って会社に行くから知っている。
会社に行く途中、少し早めに出てロッカーに行ってみた。
その鍵の示すナンバーを見つけ、鍵を差し込んだ。
鍵を回して、開けた。
ゆっくりと。
中を見た瞬間、勢いよく閉めた。
「どうかされましたか?」
駅の職員が私に声をかけてきた。
「…なんでもありません」
何故、こんなところに。
どうして。
これが、見つかったら私は終わりだ。
ロッカーのドアを開かないように押さえつけて、震える手でコインをポケットから取り出して鍵を閉めた。
「来るのが遅いよ、ずっと、待っていたのに」
真後ろから聞えた聞き覚えのある青年の声に体がしびれた。
「思い出した?僕のこと」
08:42  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(2)

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局地的大地震

2008.12.04 (Thu)

ふと、音で目が覚めた。
窓がガタガタとゆれている。
なんだ?
この心地いい揺れは。
少し、目が覚める。
その揺れが段々と大きくなっていく。
あぁ、まさか、地震?
なんか、すごい揺れてる。
揺れてるよ。
どうしよう。
怖い。
でも、目が覚めない。
体が動かないよ。
車のエンジン音がずっと聞えている。
近所の明らかな改造車のうるさいエンジン音がなり続けている。
その音が邪魔して地震かどうか確信がもてない。
どんどん揺れが大きくなる。
体が揺さぶられるようにぐわんぐわん揺れ始めた。
怖い!
はやく起きて私!
なんで、起きられないの!
動け体!
恐怖で萎縮した体が動かない。
更に、熟睡していた時に急に起こされたら私は体が動かないのだ。
部屋の家具がぎしぎしと揺れている。
ものすごく詰め込んだ本棚がベッドの横にある。
これが落ちてきたら確実に圧死する。
いやぁ!
それだけは!
本が好きだが潰されたくない!!
とはいえ、揺れは止まらない。
揺れる方向から考えて、倒れてくる方向ではない。
ぐわんぐわん揺れている。
長い!長すぎる!
この地震、長いよ!!
ガタン!
一気に揺れが止まった。
やっと、目が覚めた。
体が動いた。
その、音で。
体がびくっと震えて動いたのだ。
目を何度も瞬きさ掛け布団にくるまって震える。
怖いよぉ・・・。
ふと思い出して、一緒に寝ている猫が居ないか部屋を見る。
どうやら、夜中にトイレに行ったとき部屋を出て行ったらしい。
居ない。
こんな時にどうして!!怖いんだよ!もぉ!
じっと構えていたが地震は来なさそうだ。
起きて母が寝ている部屋に行く。
ふすまを開けて「起きてる?」と声をかけるも、熟睡中。
何故、寝ていられる?!
あんなに揺れたのに!!!
部屋に戻り、ベッドにもぐりこんで考え込んだ。
何だったのよ!!一体!
そうだ!と思い立って携帯を取り出し時間を見る。
それから、ワンセグを見る。
地震なら速報が出るはず。
ところが、地元チャンネルを見ても普通にニュースしかやっていない。
なんでー?!?!
絶対、震度3はあったって!!
結局、中途半端に目が覚めてしまって震えながら頭から布団をかぶって寝ていたら寝付いたらしい。
起きたら、朝の8時を回っていた。
起きて速攻で母に聞いた。
「ねぇ!すっごい揺れたでしょ?!」
熟睡していた母に聞いても意味ないということはこの時点で気付けなかった。
「え?!嘘?」
「すっごい揺れたって!」
「ネットで見ればわかるんじゃない?」
「そうか!」
ネットで地震情報を見て見る。
なんとそこには・・・
地震があったなどという記載は無かった。
うそだぁ!!
じゃぁ、何だったのよあの揺れは!
夢じゃないもん!
ちゃんと、起きてたもん!
あの改造車のエンジン音もずっと聞えてたもん!
大きな車とか通ってないもん!
そんな揺れじゃなかったもん!

「じゃぁ、あんたの部屋だけ地震が来たのよ」

局地的過ぎないか?
08:36  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(2)

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営業マン

2008.12.03 (Wed)

最初は、ちょっと気に入ったかもしれないというきっかけから始まった。
そして、そのときに私の担当となった営業マンが竹村さんという男性だ。
当初の金額より、ちょっとはみ出ていたので割引は聞かないだろうかという下心を抱えつつ品物を見に行った。
実際に見て見ないことには、わからない商品もある。
そして、実際に見てみると検討していたものじゃないほうが気に入ったなんていう話はよくあることで。
それが、金額がはみ出ていたというわけだ。
色々、交渉はしたものの中々反応は鈍い。
だが、無いわけではない。という印象を受けた。
そう、値段の交渉に入った途端線引きをしたのだ。
彼は。
これ以上は出来ないと。
買うとなれば出来ないことは無いかもしれないという。
かなり、曖昧な線引きだった。
もちろん、こちらの所持金をある程度予想しての行動だったのだろう。
この時、彼は線を引かず一発で金額を提示していればよかっただろう。
印象は。
そして、購入にいたったに違いない。
一週間の猶予をくれという竹村さんの提案により、こちらも購入の検討をしていた。
実際、竹村さんがどの程度値下げしてくるかはわからない。
線引きした時点で、それ以上は無理という可能性もある。
ならば、正直言って買えるものではない。
諦めようという言葉がよぎるわけだ。
別の会社を当たってみるかと。
検討した結果、一週間という期間は冷める方向へ向かっていた。
そして、一週間後。
竹村さんとそして購入に至るには夫婦で決めるべきものなので今日は旦那も一緒だ。
さぁ、どう出る?竹村さん。
すると、一週間経った彼の反応は一週間前とは違うものだった。
結果として、これ以上は引けないという値段を大幅に超えて値引きされプラスしておまけまでつけてくれるというのである。
一体何が起きたのか。
いや、何よりこの商品を買いたいという人が居ると言っていたではないか。
そいつらはどうしたんだと突っ込みたい。
値引きに関しては、予想を超えた意外性を見せたためにふーんというくらいだった。
それくらい焦って売りたいわけだということがバレバレだ。
こういうときに限って。
というのが、一番いい言葉だろう。
当初予定していた会社から、急に電話がかかってきた。
なんと、諦めていた本当に欲しかったほうが買えることになったのだ。
購入を検討していたが先を越されてしまい断念していた。
ところが、購入をやめてしまったらしい。
ありがたい話だ。
というわけで、他者へ直行した。
話を聞くと、こちらも当初の値段より値引きをすると言い出した。
そうなると、もう魅力はこちらにあるわけだ。
その当日夜に、竹村さんから電話がかかってきたものの断りをいれた。
次の日の朝、なんと竹村さんがうちに来るというのである。
何事だ?
値段交渉をさせて欲しいとの事だ。
明らかに焦りは募っている。
だが、気持ちは向いていなかった。
こられてもねぇという部分が往々にして気持ちを占めている。
なんにしても部屋を片付けなければ・・・。
早々に部屋を片付けて竹村さんが家に来た。
なんと、更なる値引きをしたのだ。
当初の線引きはどこへやら。
当初の別の購入予定者はどこへやら。
嘘を重ねると手の打ちようがなくなるということを知ったに違いない。
売り方が下手だという事意外、言葉は見つからない。
もちろん、こういうときに限って。という現象が起きなければ検討対象に入っていた。
少しはね。
そうして、他社の値段を聞いてきたので正直に言ったらその値段に下げるから考慮して欲しいとまでいうのである。
お前はそこまで権限があるのかよ!
当初の上司が居るので権限が無いといったのはどこへやら。
逃がした獲物は出かかった。
釣ってみなければわからない。
釣れると思った思い込みが彼を油断させたのだろう。
即決させるには、それなりの魅力とそして誠意が大切である。
でなければ、下手に回るしかなくなり首が回らない状態になる。
相手の言いなりになってしまい、線引きなど言っていられない。
現状この状態だろうな。
すると、おもむろに竹村さんはこういった。
「わかりました。この商品は、お二人のために言い値で売ります」
あほだろう。
というしかなかった。
じゃぁ、100円というぞ?
いいのか、おい。
竹村さんは、考慮してくださいと言って帰っていった。
どう考慮しろというのだ。
ただより怖いものは無いというではないか。
安いだけだと、何かあるんじゃないかと疑ってしまう。
煽るように、焦りようだと余計だ。
3日後、竹村さんから連絡があった。

「あの、お宅に伺ってもよろしいですか?値段交渉をしたいのですが」
「いい値でいいといった件ですか?」
「え?そんなこと、言っておりま・・・せんが・・・」
「でも、3日前こられた時いってたじゃないですか」
「3日前??あの、自分はお宅に伺ったことが無いのですが・・・」
「は?」

竹村さんと顔をあわせたのは一回だけ。
三日前にあったのが初めて。
電話中に、インターフォンがなった。
画面をみると、3日前に来た竹村さんが立っていた。
電話の向こうにも竹村さんが居る。

私は、誰と話しをしているのだろう。
08:05  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(4)

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変わったお客様

2008.12.02 (Tue)

「これをください」
「これを・・・ですか?」
「はい」
「・・・えっと、ご自宅用ですか?」
「いえ、プレゼントです」
「・・・プレゼントですか・・・。有料の包装になりますが」
「・・・わかりました」

見た目は、小学生・・・になったばかりくらいだろうか。
本当に長い髪。
綺麗な黒髪。
子供には似つかわしくない目つき。
そして、この商品を迷うことなく手に取った。
というより、この店に一人で入ってくること自体が異様だ。
トイレでも貸して欲しいというのかと思ったら、迷わず商品ケースの前に立ちこれをくださいと私に向かっていったのである。
どう対応したらいいものかと、口から出た言葉は普通の売り場で交わす会話しか思いつかなかった。
どちらかというと、反射的に出たものであり通常この店でこんな言葉は発せられない。

「え?あの子が?プレゼント???何それ」
「・・・・さぁ・・・」
「結構、値段するよ・・・これ」
「そういう問題以前の話じゃ・・・」
「そっそうだけど・・・」
「プレゼント用の包装紙とか無いから、ちょっと隣の店に行って来る」
「わかった・・・」
隣の店は、この店の経営者の兄弟がしている店であり普通に行き来している。
そこで、プレゼント用の包装紙、リボンなどをもらってきた。
気になったので、包む前に女の子に確認をした。

「あの、プレゼント用の包装紙はこちらでよろしいですか?」
「・・・・」
かなり、不服だという顔をしている。
「どういった感じのものがいいでしょうか?」
「白と黒の紙を重ねて、白と黒のリボンで結んで欲しいです。蝶々結びで」
「白の無地と黒の無地ですか?」
「ムジ?」
「模様が無い・・」
「あ、はい。それがいいです」

もう一度、隣の店に行き白の包装紙と黒のやわらかい包装紙を持ってきた。
リボンは、白と黒の大き目のリボンと、細いリボンを。
それから、女の子に確認すると、頷いたのでそれで包み始めた。

「本当に売るの?」
「じゃぁ、なんていって断るの?」
「うーん・・・」

色々、めぐる考えはあるものの客対店であることに違いは無い。
それが、幼い少女であり、この店で似つかわしくない客だったとしても買うといえば売るのが商売である。
買う人間がいるからこそ、商売が成り立つわけで。
それを無下に、理由も無く断るというのは出来るわけが無い。
ましてや、私達はただの雇われ店員。
通常の手続きをして買うというのだから、問題はない。
手続き・・・という言い方は変だけれど。
ただ、子供は絶対に買わない。
というか、この店に入ってこない。
それも、一人だけでなどありえない。
普通は。

「お待たせいたしました」
包まれた商品を持って私は女の子をレジのほうから呼び寄せた。
女の子はその包みを見て目を輝かせた。
「24000円になります」
「はい」
そういって、お財布の中から25000円取り出した。
「25000円頂戴いたします。1000円のおつりです」
「ありがとうございます」
女の子は、1000円をお財布に閉まった。
レシートを渡そうとしたら、いらないといわれた。
レジカウンターから、女の子の側まで行き、商品の入った袋を手渡した。
「少々重いのですが・・・持てますか?」
そっと、袋を渡してみる。
重たそうだ。
「抱えてみます?」
「はい」
商品を抱えるようにすると持てた。
「大丈夫ですか?歩けます?」
「大丈夫です、近くなので」

聞いてはいけないと思いつつも、どうしても気になったので聞いた。
「あの、どなたへプレゼントされるんですか?」
「お母さん」
「え?お母さん・・・ですか?」
「はい」
「あ、もしかして・・・」
「お母さん、私にこういったんです。赤ちゃんが生まれるって。私に兄弟ができるって」
「え?」
「だから、用意しておこうと思ったんです」
「用意って?」
「私は、兄弟なんて要らない。一人がいい。だから、プレゼントしようと思って」
そういって、女の子は出て行った。

「何だったの?あの子・・・骨壷をプレゼントなんて。誰にあげるとか聞いた?」
08:14  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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