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俺はできるっていってんだろ

2009.01.31 (Sat)

俺ができることをわかっていない。
どうしてわからないのか。
まったく、歯がゆいことこの上ない。
突然やってきて、俺の事を見てニコニコと笑っている。
なに笑ってるんだよ!
あんまり、俺を見て笑うから机を叩いて笑い声を一蹴させたかった。
ところが、その笑い声が余計に大きくなった。
何で、わからないんだこいつは!
あぁ、もぉ!頭がかゆい!!
なんで、こんな湿疹ができたんだ?
大体、医者も「疲れからでしょう」ってどういう事だよ!疲れっていったところでそんなに働いていないし動いてもいない。
そんなに自由じゃないんだよ、俺は。
まったくわかってない。
俺のことを理解していないのだろう。
湿疹がかゆくて掻いているのに、それを突然やってきた女が止めやがった。
かゆいっていってんだろう!!
手に、ミトンをつけてきた。
こんなものをつけたところでどうなると思っているんだ?
余計なことしやがって!
俺はこれ自分で取ることくらいできるんだぞ!
なに驚いてるんだよ!
って、せっかく取ったのにまたつけるなよ!
なに余計なことしてるんだよ!!
まったく!不愉快極まりないな、もぉ!
ん?なんだ?
なにをしたいんだ?
なにをしている?
まさか…。
まさか、できないのか?お前。
お前、できないのか?
そんなこともできないのか?
俺がミトンを取ったくらいで驚いたのに、俺をあやすこともできないのか…。
もう少し腕の力を鍛えたほうがいいぞ。
母さんはちゃんとできるんだから。
もう少し、お前はしっかり体力つけろよ。
たかいたかいもできないんて、情けないぞ。
俺は、…心配だ。

「大きくなったねぇ、重くて持ち上がらないよぉー!」
「本気でやってるの・・・?」
「え?本気だけど・・・」
「おっもぉーい!」
「ほら、こうやって、たかいたかーい!たかいたかーい!」
「凄いね・・・」
「もう一回チャレンジ!」
・・・・・・・・・。
「ダメだ、持ち上がらない!!大きくなったなぁ・・・もぅ7キロかぁ~」
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08:37  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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知らないほうが幸せ リゼット・クライトマンⅦ

2009.01.30 (Fri)

俺がこの村に来たのは、まだ新人の頃だ。
まったく様変わりしないこの村の因習漂う雰囲気は忘れられない。
そして、二度とここに訪れたくは無かった。
たとえそれが仕事であろうとも。
「おい、アルヴァ・オルブライトはどこだ!」
署内に響く、署長の声はいつも以上に殺気だっていた。
あまり、いい仕事ではないようだ。
「お前をご指名だとさ」
机の上に投げ捨てられた書類を見て愕然とした。
何故、俺を指名した。
もう、あの村とは疎遠でありたかった。
あの、35年前の事件。
それが、この村との出会いでありリゼット・クライトマンと名乗る少女との出会いだった。
当時、新人だった俺は20歳だった。
あの時出会ったリゼット・クライトマン。
それは、俺にとって今までの人生の中で出会った女性で一番美人だと思った。
こんな、姿をしていても。
教会にある大きな十字架に上から突き刺さって死んでいた。
その死体を検視官が来るまで動かせずにいたため、眺めていた。
他の連中は、誰一人この村に来ることを嫌がり事件としては通常十人以上投入してもおかしくない事件なのに新人の俺一人に任されてしまった。
 その死体を眺めながら、じっと目を瞑ったままの金髪の少女を眺めていた。
すると、突然、目が開いた。
びっくりして動けなかった。
とても濃い青の目。
大きな目がこちらを見ている。
「なんで、見てるの?」
死体が話したのだ。
死体…のはずなんだが。
「いや…あ…え…と」
言葉が出なかった。
「私は、まだ、最後の歌を歌ってないのよ。だから、終わらないの」
「最後…の歌?」
「そうよ」
「リゼットの血を引くもの。それは、いつどこに現れるかわからない。リゼットは、この村の罪の証」
「罪…?」
「そう、私達はこの墓の下から生まれるの」
「え?」
「ここは、教会じゃないの。元はリゼットの墓。その墓を中心に立てられた教会なのよ」
「リゼットは君じゃないのか?」
「私よ、リゼットは私。でも、リゼットは一人ではないわ」
「どういう意味…なんだ?」
「不思議な人ね」
「え?」
「こんな姿の私を見て話し続ける人初めてよ」
「俺も…初めてだよ、こんな姿をした女の子と話すのは…おろしちゃだめなのか?」
「えぇ、ダメ」
「じゃぁ、この台の上に乗ってもいい?」
「え?」
「君の顔を近くで見たいんだ」
「変わった人」
「乗るよ?」
「うん」
十字架の台座に足をかけ、十字架に突き刺さったままのリゼットと同じ高さの目線になった。
その、綺麗な瞳。
その、綺麗な長い金髪。
その、澄んだ青い目。
その、きれいな真白い肌。
「最後の歌を聞いてくれる?」
「聞いたらどうなるの?」
「次のリゼットがあなたの側に現れるわ」
「次のリゼット?」
「私の役目は終わり」
「役目ってなんだい?」
「こうすることよ」
リゼットは、急に顔を近づけ俺の唇にキスをした。
何もいえず、そのまま見つめていると彼女は歌い出した。
泣きながら最後の歌を。
その歌は、ただ罪を償い終え天に帰ることの許しを請う歌詞だった。
彼女の口から、俺の口に彼女の血が入った。
その時、心臓がドクンと音を立てた。
苦しくなって台座から降り座り込んだ。
台座に背を向けて寄りかかった。
息も段々しづらくなってきた。
一体、どうしたというんだ。
次の瞬間、リゼットの歌が止まった。
そして、一気に彼女の口から血が流れ落ちた。
その血をみて彼女が本当に息絶えたと確信した。
たったあの何分かの間だった。
でも、俺は彼女を愛した。
本気で愛した。
ただ、この気持ちだけが残った。
そう考えながら彼女から流れ出た血を手ですくいあげると、その血だまりの下から赤子の鳴き声が聞えた。
教会のドアが開き、息絶えたリゼットと同じ顔をしたリゼットより若い女の子が立っていた。
「その子が、私の次のリゼット。私は、あなたの愛したリゼットの次の世代よ。リゼットが生まれるには必要なのよ。別の村から来たリゼットを愛した男の人の血が」
「・・・俺の血?」
「そう、その子供はあなたの子よ。届けてあげて、リゼット・クライトマンの生家に」
08:01  |  リゼット・クライトマン  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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電磁波と電波

2009.01.29 (Thu)

どうやら私からは、機械に対してとても不快な電波を発しているということがわかった。

調子の悪かった冷蔵庫とテレビ。
冷蔵庫は、気がついた時は本当に驚いた。
冷蔵庫から水がじゃばぁっと上から降ってきて、履いていたスリッパがびっちょりになった。
時折、冷蔵庫付近が水でぬれているなぁと不思議に思っていたのだがどうやらジュースなどを置く再度ポケットにたまった水が開けた振動でゆれて気付かないうちに漏れていたらしい。
それが、たまりにたまってじゃばーっと出てきた瞬間にぱかっとドアを開けたためサイドポケットではなく私の足の上に降ってきたのだ。
とてつもなく冷たい水。
 否、その前に冷蔵庫から水が出ることがおかしいだろう!
よく見てみるとあちこち水がたまっており、なんと表面が凍り付いている部分もあった。
野菜室を見てみるとなんと3センチほど水に浸かっていた。
だから、野菜が買ってきたばかりなのにすぐダメになったりしてたんだよ…。
さすがに、この水はいつか治るかも?と期待したがどんどん酷くなり年末冷蔵庫自身から「もう無理です」と申告があった。
 電気屋へ行き、冷蔵庫ってこんなに高いんだ!とびっくりしつつ。
さらには、今の冷蔵庫は冷凍庫が真ん中か一番下にあるのだ。
我が家にいたのは一番上だった。
 その子に決めた次の日、不調だったテレビまで「あの、僕ももう無理なんです」といいはじめた。
勝手に電源が切れたり、そうかと思ってほったらかしていると勝手に電源がついたり。
自分が9歳くらいの時に我が家に来たでかいブラウン管テレビ。
それにつながっているDVDプレイヤー。
時代の差がありすぎだ!
「テレビも買おうか…」
溜息をついたのはもちろん出資者とお財布だ。
ところが、テレビが最近のは大きなものしかない。
で、私が現在使用しているものを壊れたテレビが置いてある部屋にもって行き移動して使用し私の部屋に新しいのを置こうというのだ。
「いや、わざわざそんなことしていただかなくても…」といったら、「別にいいじゃん、大きいほうがいいんでしょ?」というので、まぁ結果的に私が得をした。
 ふたつの機器が到着したのが、注文して3日目だった。

事件 ファイル ① 到着した日
テレビと同時購入したDVDプレイヤー。
そのDVDプレイヤーに大事件発生。
なんと、傷だらけの天板だったのだ。
どういうこと?と思いわざわざお金を支払って設置してもらったのに傷だらけを無視したの?
それとも傷つけたの?と聞きたいくらい酷かった。
アルミが見えるほど深い傷が大量にあった。
購入店に連絡したところ交換対応となったが、交換対応した業者の対応が最悪だった。
交換対応しに来た人間と喧嘩したのは初めてだ。
あまりの態度の悪さと言葉遣いの酷さに苦情を申し立てました。

事件 ファイル ② 到着後一日目
冷蔵庫の勝手にできるはずの氷ができなかった。
メーカーに電話したら「おかしいですね、不良品かも」というお話に。
買ったばかりなのに…と涙が出た。

事件 ファイル ③ 「私もちょっと気分が…」
 なんと、レンジまで動かなくなった。
朝まで動いてたじゃん!!と何度やってもターンテーブルのレンジなのだがテーブルが回らないため片方だけがあったまり沸騰してしまうという事に。
レンジはよく使うのでたまったもんじゃないと。
二日我慢したが、人間はあまりの不便さに我慢できなくなりまた電気屋へ。
レンジは、今オーブンとレンジが合体して「オーブンレンジ」とやらになっていた。
そして、めちゃくちゃ高い!!10万とか8万とか!!
嘘だろうと青ざめていたら、後ろのほうにお買い得品が・・・。
何がどう違うのかはわからないが、今までの傾向からいうと私が気に入ったものがすべて何らかのトラブルに巻き込まれている。
これを、「私電波事件」と称す。
 そこで、今回は黙って支払い者が気に入ったものに決定した。
おかげで、ご機嫌に動いている。
いっぱい買ったので、不調だったお釜も購入した。
これは、私が気に入ったものだ。
とくに故障などは無いが蓋の閉まり具合がなんだかしっくりこない。
いろんな電化製品が一気に壊れ不調を訴えたのでリタイアさせたものの、新参者たちまで私は不調にさせる電波を発しているようだ。

最後に、新しい職場の機械までぶっ壊した。
原因は不明。
何故か私が使用すると故障し「ほら、おかいしでしょ?」と上司に見せると治ってしまう。
これを、「私電磁波事件」と称すことにした。
これ以上、壊れないでくれ。
何の電波を出しているのか私自身が知りたいところだと切に願う。

まったく、私は一体何を出しているんだ?
08:57  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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ならなかった目覚まし時計

2009.01.28 (Wed)

私の部屋に時計は無い。
時計は、カチコチというあの秒針の音が大嫌いだ。
とてつもなく追い詰められた気分になる。
聞いていると、心臓の鼓動が早くなり苛々が募り最後には電池を抜いてしまう。
なので私の部屋には時計が無い。
だが、困る。
時間がわからないと困るのは日常生活で当たり前の話だ。
デジタル時計というものがあるが、デジタル時計で嫌い部分がある。
これは、個人的な主義趣向なのでどうしようもないのだが。
何故かデジタル時計には、時計以外が表示されている。
例えば、日付。
それから、曜日。
そして、温度や湿度。
最後に、値段が意外と高い。
結局、探し回った結果疲れ果てて適当な目覚まし時計を買った。
もちろん、デジタル時計。
余計な表示付だが。
決め手は、980円だったから。
 ところがこの時計、電池を入れても時間を表示しないのだ。
色々なボタンはあるが、どう見ても目覚まし設定に使用する目的のものだけで時計の時間を合わせる場所が無い。
この時計が入っていた箱はさっさと捨ててしまって説明書も何もない。
なんということだ。
安物買いの骨折り損ってやつか!
溜息をついてベッドに投げつけ私は部屋を出た。
昼ごはんを食べて戻ると、なんと時計が動いている。
それも、時間がぴったりと合っている。
どうして?!
気持ち悪さから、振ってみた。
別に音はしない。
いや、爆弾とか…考えたんだよ。
まったく理由がわからない。
一体、どうやって今の時間をこいつは知ったんだ?
謎だらけだ。
ゴミ箱から必死にあさりだして破り捨てた箱の裏を見るとなんと電波時計といって勝手に時刻を合わせるらしい。
一体何の電波を受信しているのか不明だが、もしこれを持って飛行機に乗ったら時間が逆に進むのだろうか。
 この時計と付き合い始めてもう何年もたった。
ある日、部屋の掃除をしていた時もの見事にこの時計を落とした。
壊れていなかったので安心した。
次の日の朝、聞きなれぬ警報音がどこからか響いている。
その音のする部屋に行くと私の部屋だ。
一体何の音かと思えば、この時計だった。
何年も前に設定した目覚ましを知らせてくれたのだ。
時計を合わせようとして、7:30にした覚えはある。
しかし、以前目覚まし時計として使ったとき一度も知らせてくれなかったのはどうして?
意味があるかどうかわからないが、とりあえず、もう一度衝撃を与え目覚ましがならないように祈っている。
それと気になることがある。

電池抜いたままなのに何で動いているのだろうか。
08:47  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(4)

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十一歳のリゼット リゼットクライトマンⅣ

2009.01.27 (Tue)

十一の時に、私はリゼット・クライトマンとしてこの教会に出てきた。
その前日、リゼット・クライトマンが十七歳でいつもどおり最後の歌を歌って使命を遂げた。
あの歌を知っているのは、私だけ。
リゼット・クライトマンとなる人間だけ。
どうしてかといわれたら私にもわからない。
でもね、リゼットは私と同じ顔をしていて私と同じ声をしていて私も同じ記憶を持っている。
生まれたときから私はずっと地下で暮らしてきた。
この地下から出るときは、地上で暮らしているリゼットが最後の歌を歌った時。
もちろん、このことも昔から何度も繰り返されていることだから覚えているわ。
最後の歌は、自分があの十字架と一体になれる日。
それが私達、リゼットとして生まれた者への罪を表す。
初代リゼット・クライトマン。
 彼女は、何故最初にあんな事件を起こしたのかは私達も流石に理解できない。
私達がわかることは私達の繋がりだけで、その繋がりが過去であり現在であり未来へと続いていく。次のリゼットが生まれたとき私達はすぐに察知できる。
その能力があることを知っている村人達は、子供が生まれるとすぐに教会へ来て子供を私に見せてくる。
そんなことをしなくても、わかるのにと思うが。
リゼットが生まれた家はすぐにその子供を手放す。
そして、生んだ母親には死産だったという話が伝えられている頃だろう。
リゼットは、この村にとって神の歌を歌える唯一の聖人でありながら最大の罪を犯した罪人でもある。
その罪を償い終えるまで、私達の存在はこの村から消えることは無い。
もしリゼットが生まれない年があった場合、神からの罰がくだると言われている。
実際、そのようにリゼットが途切れた時期は無い。
だけど、私は今までのリゼットの中でも異質な存在だった。
私は姉妹がいた。
通常、リゼットはリゼットとその次世代のリゼット二人が共存している。
二人は会うことはないけれど、記憶を共有しているから特にその点は問題ない。
だが、私が生まれた年それは起きた。
リゼットが二人誕生したのだ。
もちろん、私が生まれた当時のリゼットはかなりのバッシングを受けたそうだ。
前代未聞の話だからだ。
リゼットが二人も生まれるなど何か不吉な前触れかと怯える村人達にこういったんだ。
「リゼットは、殺されるでしょう。そのための代わりなのです」と。
リゼットは、必ず最後の歌を歌って十字架と一体になる。
その最後の歌が流れた時、村人は教会に集まり十字架と一体になったリゼットを前に祈りを捧げる。
命が尽き歌が消えるまで。
リゼットを殺そうとするような存在がいるなどとは誰も恐ろしくて考え付かないことだろう。
だけど、私はわかっていた。
二人一緒に育った。
私達だけが、人と会話をして笑って過ごした。

私が、殺されることは二人ともわかっていた。
だからこそ、私達は決めなければいけないことがあった。
最後の歌は、必ず歌うために。
私達は、リゼットとして生きていくために。
未来を紡ぐために。

嘘をついたのだ。

リゼットが二人生まれたという嘘を。
生まれたときに、そのことを感じ取った当時のリゼットが協力して。
私達は、二人いる。
でも、誰もそのことを知らない。

私達の本当の母親と当時のリゼット。
そして、教会のシスターだけ。

彼女が、リゼットを殺すことももうわかっている。
大丈夫。
あの人は、私達リゼットの罪そのものだから。
その、罪の証だから。
きっと、いつかはこういう日が来るというのはわかっていたことだから。
初代リゼットが行ったことは、どれだけの人が助かったとしてもこのシスターにとって、神にとっても誰が見ても残酷な罪を犯した神を裏切った子供なのだから。
神がお許しになるまで私達は歌い続ける。

懺悔の歌を。
命が尽きるとき、最後の歌を歌う。
聖歌を。

最初で最後の聖歌。

それは、唯一許された神への祝福の歌。
私の命が尽きるその苦しみを神は待っている。
何年も何年も。
何度も何度も。
その苦しむ姿を、自分と一体化させて私達を殺すのだ。

それが、私達の神。

初代、リゼット・クライトマンが眠る墓の上に立つこの十字架の上に立てた教会。
08:30  |  リゼット・クライトマン  |  Trackback(0)  |  Comment(4)

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結婚式 パンドラの箱

2009.01.26 (Mon)

「この箱を受取りなさい」
「七日後でしたね?願いが叶うのは」
「代償は、七日間の間に味わう苦痛よ」
「わかりました、結婚できるなら何も文句は言いませんよ」

一日目
彼とであったのは、もう二年も前の話。
その彼と出会って私達は不思議と気が合い一緒に居ることが多かった。
その彼との結婚が決まったのが昨日の話。
私は、今日から始まる苦痛を乗り越えても私は願いを叶えたいことがあった。
一日目の今日、私の周りに特に苦痛と思うものはなかったなと思った瞬間、真夜中だというのに携帯電話が鳴った。
「もしもし、ごめん夜中に。事故を起こした」

二日目
事故を起こしたという連絡を受けた私は、急いで連絡を受けた先に行った。
かなり動揺していた彼を落ち着かせた。
背中をさすって、震えていた。
車はかなりのダメージを受けている。
スリップしたようだ。
凍結していた路面に気付かず、ブレーキを踏んだ瞬間に滑ったらしい。
怪我もなくよかったと思った。
だが、助手席には女が乗っていた。

三日目
女は意識不明の重体だった。
私は病院の透明の窓からその女を見つめた。
軽症を負った彼も検査入院となった。
その後、事故直前別の事故を起こしていたことが判明した。
私はそれを知って驚いたが、なんと彼はこう証言したそうだ。
「運転していたのは、俺じゃなくてあの女だ」と私を指差して。

四日目
彼は、私が運転していたと証言したため意外な展開となった。
私は警察に呼ばれ事情を話した。
だが、信じてもらえなかった。
「わざと事故を起こしたんじゃないか?」
「あの女性を轢こうとしたんじゃないか?」
ありとあらゆる、本当はこうじゃないのか?という疑問文が並べられるが私は首を振るだけで何も答えることは無かった。
何より、夜中で自宅に一人でいたわけだし誰も証言してくれる人などいないのだ。

五日目
重体の女が死亡した。
彼は出席し、悲しみの中心にいた。
私には、白い目と疑いが混ざったなんとも言い表せない突き刺さる目線が浴びせられた。
これが、苦しみのひとつだというのなら別にどうでもいいと思う。
逆に、私は満足だ。

六日目
結局、運転していたのは私だったという証言が別の人間からも出てきた。
それが決定打となり、殺人容疑がかかった。
しかし、立証するにしても警察も私は「運転していない」を突き通した。
証言だけで物的証拠となるものもなく、実際に一緒に乗っていた彼の言動も二転三転するためあやふやなものであまり信憑性の無いものだった。
そのため、私への容疑もあくまで容疑であって確信はまったく得られず警察の捜査も一向に進まなかった。

七日目
私の容疑が固まったという。
一体何を根拠にと思ったが、彼が絶対にあの女が運転していたと言い張っているようだ。
その証言だけで、私を逮捕しようというのか。
同行した彼を見て私は言った。
「本当に、私が運転していたと?」
彼はその場で泣き崩れ「すいません、すいません」とただただ謝り続けた。
結局、偽証したということで疑いは彼へと移った。
だが、彼以外からも私が運転していたという証言があるというところが警察は不服だったようだ。

八日目
今日で私の苦痛は終わり、幸せが待っているんだと思うと笑みが自然とこぼれる。
蓋を開けると一枚の免許証が入っていた。
それは、あの事故で死んだ双子の姉の免許証だ。
どういうこと?
携帯電話が鳴った。

「事故で死んだのは妹の方だったと今連絡が入った。どうして姉のフリをしていたのかしらないけどお前は生きてたんだな!何で言わなかった!!俺はお前と結婚すると誓った仲なんだぞ!!」
「嘘…」
08:39  |  パンドラシリーズ  |  Trackback(0)  |  Comment(4)

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重なる時

2009.01.24 (Sat)

学校に行くいつものバス。
いつもの時に家を出た。
バス停に行く途中で、携帯を忘れたことに気付いた。
バス停まで後半分。
ダッシュで戻って携帯を手にバス停に走った。
バス停に着いたら、バスはまだ来ない。
行ってしまったのだろうかと心配して携帯で現在地を確認すると僕の居るバス停を過ぎていないことが確認できた。
にしても、いつもより十分も遅れている。
やっと来たバスに乗り込む。
遅れてきたせいかバスの乗客は少なかった。
急いでいる人達は、乗り換え可能なバスに乗ったのだろう。
僕はもう来る頃だと思い込んで待っていた結果、かなり遅れたバスに乗ることになった。
乗客はまばらとはいえ、座れる場所はなく一番前の席の前に立ち手すりを握った。
しばらく行くと何故かわからない渋滞が起きていた。
一体何事だろうというほど車が溢れかえっている。
これでは遅刻してしまう。
途中で降りて歩いたほうがいいかもしれないと考えた時、手すりから手を離した。
途端、バスが急発進し突然急停車した。
その勢いで僕は、フロントガラスに直撃。
ぶつかった体勢のままずるずると体が地面に滑り落ちた。
「大丈夫ですか?!」
青ざめた運転手が僕を抱きかかえる。
居合わせた乗客が僕を抱え上げバスから降ろした。
バスの運転手は僕を抱えて降ろした乗客に何かを行ってその場を立ち去った。
その後、救急車を呼んでくれたようだ。
頭から血が出ている。
そういわれてやっと気付いた。
衝撃で動けないだけだと思っていた。
歩道に続くちょうどガードレールが無い場所で僕は横に寝かされ、抱えてくれていた人の上着を枕にして他の通りすがりの人の上着を上からかぶせてもらった。
何をされても口も動かないし、声も出なかった。
目はなんとか開いててぼやけているがなんとなく状況は把握できた。
「危ない!」
その声が聞えた時と同時ににぶい音と何かが倒れる音。
回りを気にせずすっ飛ばしてきた自転車が、いるはずのない歩道に寝ている僕にぶつかったのだ。
かなりのスピードを出していた自転車が自分の右側にぶつかり、乗っていた人間が自分の上に落ちてきた。
落ちてきた人間が、その後動いた様子はない。
動かされて皆が慌てている。
何故か自分は何もされない。
自分のことは見えない。
だから、どうなっているのかわからない。
やっと、救急車の音が聞えたと思った。
その音がとまったと同時に衝撃音。
せっかく来てくれた救急車は、どでかいトラックに潰されてぺちゃんこ。
あぁ、僕は一体どうるんだろう。
段々眠くなってきたような・・・。
寒さも感じられない。
体が全身しびれたような感覚。
どんどん遠のいていく音・光・感触。
ダメだ。
そのまま意識はブラックアウト。

同時刻、僕が乗っていたバスが大事故を起こし大破。
乗客乗員全員死亡というニュースを、病院のベッドで聞いた。
「あの、僕をバスから降ろしてくれた人は?」
「あなたを助けてくれた人は、自転車がぶつかってきた時にあなたを庇って亡くなったの」
「そう…ですか」
「庇ってくれなかったらあなたは死んでたわ」
「あの、上にコートをかぶせてくれた人にお礼を」
「先ほど自殺したというニュースが流れていたわ。びっくりしたわ本当に、さっきまで居たのよここに」
「あなたは、運が良かったのよ」
そう、看護婦が慰めの言葉を言う。
知らないのだろう。
あのバスの中で起きた本当の事件のことを。
隙を突いて、運転手は機転を利かせ急発進し急停車した。

見事に成功したというのに事故を起こすとはな。
08:25  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(2)

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聞いた話

2009.01.23 (Fri)

「ねぇ、聞いた?あの子」
「えぇ、聞きましたよ。あの子、あの殺人事件の生き残りなんでしょう?」
「らしいですねぇ、変な時に引っ越してきたなって思ったんですよ」
「あんな恐ろしいニュースであるような事件を起こした人が、引っ越してくるなんて」
「あら、奥さん」
「あら、こんにちは」
「どうなさったんです?神妙な顔して」
「ほら、あの子ですよ。あの事件の生き残りの」
「え?生き残り?」
「そう、ほらあってたじゃないですかニュースで。ちょっと前に。父親が母親を殺して子供まで殺そうとして子供は一命を取り留めたっていう・・・」
「あらそうなんですか?私が聞いた話では、あの子はあのニュースであっていた事件とは違う事件の関係者でしたよ」
「あら?そうなんですか?」
「えぇ、ほら、えっといつだったかしら?両親が殺されて子供が一人だけ亡くなって。その事件の犯人の子供だって聞きましたよ」
「えぇ?!そんな、殺人犯の子供なんですか・・・」
「まぁ、聞いた話ですけどね」
「お母さん!帰ろうよ!」
「あ、ごめんなさい。私はこれで失礼します」
「えぇ・・」
「でも、怖いですわね。どんな人が来るかなんてこっちは選べませんからねぇ」
「え?何?何、話してたの?お母さん」
「いや、人のことを悪く言うのもなんだけど。急にあんな辺鄙なところに引っ越してきた子がいるじゃない?」
「あぁ、あの子」
「あの子が、ニュースになってた事件の被害者の生き残りだって話してあったのよ。でも、お母さんが聞いた話は別の事件で、ほらちょっと前にあった両親が殺された事件があったじゃない?あの犯人の子供だって聞いたのよ」
「違うよー」
「え?あなた、何か知ってるの?」
「あの子、友達の妹と同じクラスらしいんだけど。なんか、妊娠したとかって。それで、相手の男が責任取るのが嫌でなんか家族全員殺そうとしたって。で、結局、彼女だったあの子は殺したと思ってたけど生きてたらしいって」
「じゃぁ、被害者なの?」
「そうでしょ、じゃなきゃあんな傷さらして歩かないでしょ」
「お帰りーお母さん、あれ?お姉ちゃんも一緒に行ってたの?」
「うん、あれ?お父さん帰ってたの?早いね」
「おう、今日は早く帰れたんだ」
「じゃぁご飯食べよう」
「ねぇ、あなた」
「ん?」
「ほら、あの辺鄙なところに引っ越して来たあの子のこと、ちょうどスーパーであった奥さんたちにきいたのよ」
「あぁ、あの子な」
「そうしたら、犯人の子供じゃないんだって」
「犯人?」
「そうよ、ほら、ニュースで両親が殺されたってその犯人の子供だっていったじゃない私。まぁ、聞いた話だけどね」
「いや、あのニュースじゃないよ。そのちょっと前にあった事件だよ。なんか妊娠してたって。まだ中学生だろう?あの子」
「あぁ、お姉ちゃんはそんな事いってたわね」
「それが、相手が父親だったらしい。それで、父親が母親と子供共に殺して心中しようとしたんだそうだ。だが、子供は生き残った。子供も生んだらしいぞ」
「ニュースで言ってたの?」
「いや、工場で話題になってたよ。若い連中が噂しててな、聞いた話だ」
「そう、子供を生んだの?じゃぁ、育ててるのかしら?」
「そこまではしらん」
「気味の悪い子ねぇ・・・」
「まぁ、あまりいい気分じゃないな」
「何の話?」
「あら、まだ起きてたの?」
「うん」
「いや、ほら、あの急にへんぴな所に引っ越してきたあの子の話をしてたのよ。あまりいいこと聞かないから」
「あぁ、あの子?信じられないよね」
「え?何か知ってるの?」
「だって、あの子、お父さんとお母さんを殴り殺したんでしょ?なんか、バットかなんかで。なんか、虐待?受けてたらしいけど、すっごい殺し方したって。学校で友達から聞いた話だけど」
「あの子が殺したって聞いたの?」
「うん、でも、虐待が酷くて、別に罪に問われなかったらしいよ」
「今日あの子が歩いているのを見て気味が悪かったわ」
「そんなわけないじゃん」
「どうして?」
「だって、あの子昨日隣町の学校の屋上から飛び降りて自殺したって」
「えぇ?!」
「塾の友達から聞いた話だけどさ」
08:49  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(2)

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恐怖に勝つこと

2009.01.22 (Thu)

「どうしてこんな事をした」
何度、この言葉をこの部屋で聞いただろう。
そして、何度私はこの問いに対して答えたのだろう。
いい加減、何度も答えるのは飽きてしまった。
理解できないこの目の前にいる人の形をした生き物は、どうやら私の言葉が理解できないらしい。
そういうことをやっと理解できたとき、話すのをやめた。
 事の始まりは、なんでもない日曜日の昼。
どこかの子供が何かサッカーか野球かをしながら遊んでいた。
少しうるさいなと思いつつも、外で遊ぶ子供の声が聞えなくなったこの頃がおかしいんだと思いなおし私は我慢することにした。
ところが、その彼らの会話に耳を疑った。
「ねぇ、なんかいるよ」
「殺せ!ぶっ殺せ!」
「やれって!殺せ!ぶっ殺せー!ぶっ潰せ!」
「死ね!殺せ!」
「まだ、生きてるよ、かわいそうだよ、やめようよ」
「殺せー!ぶっ殺せー!」
「やれやれ!」

そこで、会話が終わりまたボールが転がる音がし始めた。
また、遊びだしたのだ。

今の会話は、何?
手に汗を握りながら私はドアを開けた。
彼らが居る場所へゆっくりと近づいた。
彼らが私を見ている。
遊ぶのをやめじっと見ている。
そのまま、目線を違う方向へ向けた。
その目線の先に、ゆっくりと私は歩いた。
そこには、小さな動物が死んでいた。
私は恐ろしかった。
恐ろしくて恐ろしくてたまらなかった。
怖かった。
怖くて怖くてたまらなかった。
まだ、小学生になったばかりくらいの子供たち。
その口から出た言葉。
その側に横たわる動物。
怖くて怖くてたまらなかった。
何故、この目の前に居る人間は理解が出来ないのだろうか。
あの子供がどれだけ恐ろしい存在かということを。
大人になったとき、彼らが恐怖の根源なるかを何故わからないのかと。
まともな人間じゃないことが何故わからないのだろう。
私は、間違っているのか?
何も間違っていない。
私は、恐ろしかった。
守っただけだ。
私を。
これからの未来を。
守っただけだ。

「どうして、あんな小さな子供を殴り殺したんだ。なんであんな小さな子供を殺せるんだ、答えろ」
「怖いからよ、怖くて恐ろしかった。それだけよ」
08:53  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(2)

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十階上の住人宅

2009.01.21 (Wed)

あの時、私が何も考えず新設にと思ってした行動が、結果恐ろしい忘れもしない出来事になった。
恐怖が自分と一緒に居た旦那をも巻き込み絡みついて動けないほど。
 あの後、私達はただ立ち尽くすしかなく玄関のドアを開けることは無かった。
十階上の住人が玄関先でドアをたたき続ける間、硬直して動けない。
それだけ。
怒りと悲しみが混じった叫び声で彼女は言い続けた。
何故 と。
何故揺らしたのか と。
 あの時の荷物がなんだったのか、それは知りたくもなければ関わりたくも無い。
もちろん、その荷物が本来届くべきはずの住人にも。
同じマンションに住んでいる以上、まったく会わないとはいかない。
突然その人物と鉢合わせしてしまうこともあるだろう。
もし、そうなったら一目散に逃げると思う。
彼女が、叩き続けた玄関は一時間以上に渡り別の住人から管理人へ苦情が行き制止されるまで続いたのだから。
 ある日、あの事件から何ヶ月もたった頃。
落ちついてきたといえば落ちついてきた。
すれ違ったり鉢合わせすることもなく過ごせている。
あまりの恐怖に引越しを進めているところだ。
もうすぐ、引越しの手続きが完了する。
そんな時だというのに。
宅配ボックスに荷物が届いているというランプが点灯していた。
何か通販で買ったかな?と自分には身に覚えがなかったので旦那が注文したのかなと思いロックを解除して宅配ボックスのドアを開けた。
箱の中身は、「ベビータオル」と書いてある。
こんなもの頼んだっけ?
やはり、身に覚えが無かった。
箱はただのダンボールではなく化粧箱に入っている。
かわいらしくイチゴの模様が散りばめられており箱には店のマークだろうか?
その大きなロゴマークがあった。
箱を持ってエレベーターに乗った。
4階を押しエレベーターは上昇し始める。
4階で止まってドアが開いた時、彼女は居た。

「また、あなたが受取ったのね」
08:58  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(2)

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奇遇ですわ

2009.01.20 (Tue)

スーパーで買い物をしていると、駆け寄ってくる足音が後ろから聞えた。
「奇遇ですね」
にっこりと笑うその女は何故かよく会うおばさんだ。
「あ、はい」
私は彼女に合わせて作った笑顔でいつも応対する。
彼女は本当に目ざとい。
よく私を見つけるなと思うほど、見つけてくる。
どこに居ても声をかけてくる。
決まって最初の言葉は「奇遇ですね」だ。
笑みを浮かべて「また会ったね」と嬉しそうな気持ちを裏に込めた言葉がその口から出てくる。
私の行く先々で、彼女は現れる。
彼女はいつもの決まり文句を言って、すぐに去っていく。
たったそれだけだ。
だが、私にはそれが謎だった。
買い物先も決まった場所だけではない。
行きたいと思ったときに行った場所に何故か彼女は現れる。
そして、決まり文句。
顔を見て笑みを浮かべる。
彼女は出かけたらいつも私を探しているんじゃないんだろうかと思うほどだ。
大抵、彼女いわく「いつも私が行くところはあなたもいるのよ」だそうだ。
最後に「不思議よね」と、この奇遇をとても嬉しそうに話している。
「あら、あなた。駐車場で待ってるんじゃなかったの?」
「あぁ、ちょっと欲しい物があって・・・ あれ?」
「あ!この子よ!よく会うの!何故かぴったりに同じお店で!不思議な奇遇でしょう?」
「あぁ、あの話してた子か」
「そうよ」
「あ、この人私の旦那」
私は、その旦那という人物を見て溜息が出た。
「そうですか、こんばんは」
「変なこときくけど、会ったことない?」
私は、その一言に耳を疑った。
「・・・奇遇ですわ」
と答えた。
「え?」
その答えに反応したのは、彼女だ。
前妻との間にできた娘の顔くらい10年前に別れたからって忘れるか普通。

「やっぱり、あなた前に結婚していた時子供がいたのね。似てるからずっと追いかけてたのよ子のこのこと」
08:37  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(2)

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本日は休日

2009.01.19 (Mon)

本日は、休日とします。

誕生日なんです、父の。
なので、恐ろしい物語かけませんし。
星に願いをシリーズも哀しみがあるのでかけません。

というわけで、お父ちゃん ハッピーバースデイ!

あ、レンジはおとうちゃん独身時代からじゃないそうです。
家を立てたときに買ったそうです。
なんで、すこし稼働時間が短くなりました。
それでも、20年は動いてました。

では、今日は、おうちでパーティーです。
08:14  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(2)

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仕上げの一歩前

2009.01.18 (Sun)

全部、うまくいっている。
最初から何もかもうまくいくなどと都合のいいことは考えていない。
慎重に事を運び、機転を利かせて今までの作り上げてきた。
計画通りなどというが、そんなもの確実にできるはずが無い。
何に影響されて計画が狂うかわからない。
どんなに完璧な計画でも。
修正を重ね、積み上げてきたものを見直し確実に目標を目指す。
それだけ。
たったそれだけの事。
それが、どれだけ難しいか。
ひとつのミスも許されない。
ミスをすれば全てが終わる。
今まで積み上げてきた完成された部分も失敗に転化する。
丁寧に。
慎重に。
落ち着いて。
行動する。
それだけで、ここまできた。
これが、最後のひとつ。
今までのことは何一つ失敗していない。
トラブルがあっても乗り越えてきた。
大丈夫。
鞄を右肩にかけ道を歩く。
目指すは突き当たりにある大きなマンション。
ここが一番最後の仕上げの場所。
鞄はビジネスバックのようなもの。
目立ちもしないノーブランドの安物。
スーツを着ている私は、普通の営業にしか見えないだろう。
大丈夫。
バイクの音が後ろから近づいてきた。
振り返った時、そのバイクがスピードを落とした。
「すみません」
声をかけられたので一瞬立ち止まった。
突如、声をかけたバイクに乗った主は私の鞄をするっと取り上げて猛スピードで立ち去った。
あまりの早業に声も出なかった。
でたのは、「え・・」くらいだろう。
私は、今までやってきた経験から考えてどう修正しようとこの失敗を挽回するすべを考え付かなかった。
後ちょっとの距離。
マンションまですぐそこだったのに。
それが、あんなことになるなんて。
鞄を掏られるなんて。
どうしよう。
どうしようもない。
どうしようもないんだ。
あの鞄が見知らぬ誰かに取られてしまった。
それだけで、もうダメだ。
頭を抱えてうなだれていた私の部屋でつけっぱなしだったテレビの音が私の頭を目覚めさせた。
「今入った情報です。スリが頻発しているこの地域で、巡回中の警官が男に職務質問をしたところ女性物のビジネスバッグを持っていたためバッグの中を確かめると、中から男性の頭部が発見されました。余罪があると見てこの男の容疑を殺人に切り替えて捜査を続けるとの事です。
また、男はこの鞄はスリをして捕った物で自分のものではないなどと供述してるとの事ですが供述が曖昧なため慎重に捜査を進めています」

私は、突然計画変更になった最悪な事態に感謝した。
08:30  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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証拠品

2009.01.17 (Sat)

「なにしてるの!?」
突然、俺の側にいた女が大声を出した。
こっちがびっくりした。
「なにって、別に・・・」
「信じられない!何やってんのよ!!」
明らかに驚いているし、怒っている。
しかし、何故?
「なんか・・・不都合・・・でも?」
そういった俺の顔を見て、呆れた顔に変わった。
溜息をついて、頭をふって手を額にあてている。
言葉も出ない。
そんな様子だ。
一体、何がどう都合が悪いというのだろう。
意味がわからない。
「どうしたんだ?何が悪いんだ?」
女は、また溜息をつく。
「あのね、そんなことしたらつかまるの。ちゃんと、こっちにして」
「はぁ?!」
女は、もっとわけのわからないことを言い出した。
「こっちって、おかしいだろ?ちょっと待てよ、捕まるってどういう意味?大体、こっちしてようがどうしようがどうでもいいことだろう?これのほうがしてないと捕まるだろう!」
「なにいってんのよ、これのほうがどうでもいいのよ。こっちしてないと捕まるの!」
ふてくされた顔をして、あきらかにどうでもいいものをもう一つ持ってこようと家の中に戻る。
俺が持っていたものを取り上げて。
普通、あれ持ってたほうが捕まるだろう。
何を言っているんだあの女は。

今から仕事だというのに。
08:35  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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重たい

2009.01.16 (Fri)

昼、急に眠気がしてきた。
風邪薬を飲んだからだろうか。
いつものようにインターネットでいろんなサイトを見ていた。
見ていたいのに眠気がいきなりどさっと自分に落ちて着た気分だ。
休日だし、昼寝でもするかとベッドにもぐりこんだ。
掛け布団が少しめくれていてその隙間から足を入れる。
するりと入り込んで肩まですっぽりと収まる。
重い眠気が自分を支配する中、気になる事がある。
それを確かめようかと思ったが面倒だった。
眠い。
それだけで、人間動くことを諦める。
襲ってきた眠気が重ければ重いほど行動は怠慢になる。
段々と自分の体温で温まって布団があったかくなる。
そのまま夢の中へダイブ。
おやすみなさーい。
寝付くまで、ほとんど時間がかからなかっただろう。
薬のせいと、風邪で熱を出していたために体はもともとだるかった。
熱が出ると必ず私は足が痛くなる。
足の太ももが痛い。
膝が痛い。
この痛みを感じているときは、大抵37度台。
38度台に突入すると、熱が出ているのにぼーっとしているためか全体的に鈍ってしまう感覚があるのだろう。熱が出ていることを忘れるくらい意外と平気だ。
ただ、体がだるいだけと食欲が無くなる。
真っ先に、味がしなくなるというのが特徴だ。
塩辛いものがわからなくなる。
最後はまるで味がしなくなる。
39度台になると、もっと鈍るかと思うだろうが今度は鋭敏になった感覚で最高の苦痛を味わう。
全身の痛みと頭痛。
もう、もだえるしかない。
必要なのは解熱剤だけ。
胃が荒れるから嫌いだがそんな事いっていられなくなる。
こんな目にあいたくないので、風邪薬は早めに飲むのが一番。
口内炎がすぐできるが、口内炎の絆創膏があるから酷くなったらそれを購入する。
意外とどうやら知られていないらしい。
口内炎の絆創膏をつけていると、「何か口についてるよ・・・」と不審な目で見られる。
オススメである。
とても酷い時でもあれをつけていれば痛くない!
少々、値が張るが・・・。
どのくらい眠っていたかわからないが、寝返りをうった瞬間気になったことが核心になった。
異常に、掛け布団が重い。
少しだけ目が覚めた。
と、その時、ものすごい打撃を腹に受ける。
更に、顔に痛みが走る。
そして、色々な部屋にあるものが一斉に散らばって音を立てて落ちる。
轟音と共に、強靭な爪を出した猛獣が残像を残す勢いで逃げていった。
寝ているなら寝ていてかまわないのだが、驚いたからってここまでしなくても。
顔には深い引っかき傷。2メートルくらい平気で飛び乗れるジャンプ力を持った脚力で蹴られた腹。
にしても、いつの間に、どこに入り込んでいたのだろうか・・・。

ところで、あれは、誰なんだ?
08:39  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(2)

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無駄

2009.01.15 (Thu)

僕が生きていく上で、これほど無駄なことは無いと。
今までが普通で当たり前だった事は他人から見ると異常な様子。
発覚した時にそれを理解した。
家の中で当たり前でそれを皆がしているものだと思っていた。
特にそれを口にすることもないし、当たり前だからこそ聞くことも無い。
皆、しているものだと。
それが、普通だと。
最初は、何を騒いでいるのか何が起きているのかまったく理解ができなかった。
どうして僕が責められなければならないのか。
今までこうやって生きてきた。
それをとがめられたことは無い。
何故?
などと思ったことも無い。
当たり前だったから。
無駄と思うことはいっぱいある。
無駄だとみんな捨てるだろう?
普通。
それが、普通なんだろう?
違うのか?
何が違うのか?
どうして騒ぎ立てるのか。
沢山の親類が集まってきた。
騒ぎを聞きつけたのか。
どうやって知ったのだろう。
教えたのか?
家族の誰かが。
となると、家族も僕がしていることに対して問題だと感じているわけだ。
つまり、異常だと。
なら何故、今まで何も言わなかった?
姉ちゃんも何も言わない。
母ちゃんも父ちゃんも。
妹も弟も。
誰も何も、僕のしていることをとがめたことなんて無い。
笑ってた。
笑って見ていた。
それが、どうして?
無駄なものは捨てるんだろう?
捨てなさいってあれだけ口うるさくいうじゃないか。
母ちゃんはいつもいつも部屋を片付けろと。
いらないものは捨てろと。
無駄なんだから。
そう、いつも言っていた。
だから、無駄だと思ったんだよ。
いつもしていることじゃないか。
何がいけないんだ?
僕のしていることが無駄なのか?

僕が何をしているのか、どうして知っている?
08:45  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(4)

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恋人

2009.01.14 (Wed)

「好きだよ」
彼は顔を近づけて、私の唇に重ねる。
そっと。
ゆっくりと。
やさしく。
離れた時、目を見るとまっすぐと私を見つめて。
透き通るような綺麗な瞳が私を映す。
口が開きかけて、また、閉じる。
何かを飲み込んで、また、開く。
「愛してる、ずっと側にいて欲しい」
28歳になって私は初めて愛してるという言葉を恋人という相手から聞いた。
学生の時、社会人になって。
それぞれ、その時なりに恋をした。
でも、考えれば一度もいわれたことが無い。
好きだって言葉すら聞いた覚えが無い。
まぁ、昔のことだから覚えていないだけなのかもしれない。
告白もした。
自分から告白なんてって思ったけど、勇気を出して告白したことがある。
友達が背中を押してくれ協力してくれたことも感謝。
そのときの彼は、笑っていた。
笑うとすごく幼く見えて年下だった。
同じ会社だけど違う部署で働いている。
職種もまるで違う。
共通点というのは、付き合ってみないと正直わからなかったけれどそこまですれ違いは無かった。
年下といってもかなり下だった。
不安はあった。
年があまりちがうと価値観のずれは大きいものだということは経験したから。
自分自身その点ばかり気にしていたが、心配しすぎたのかそれほどたいしたことは無いという範囲。
それまで付き合ったことのある男性に対し共通しておねだりしていたことがある。
それは、指輪が欲しかった。
理由はといわれると難しいがペアというのは憧れだったというか。
しかし彼らは私のわがままに付き合って指輪をしていただけで嫌がっていた。
だからもう二度といわないと思った。
もちろん、プレゼントされたりすれば嬉しいんだけど。
彼がくれたのは、ブレスレットだった。
ペアに見えない対になったブレスレット。
嬉しかった。
必ず、会社でも時計に見えるくらいだから特に違和感なくそのブレスレットをすることができた。
そのブレスレットをはずした時、私は彼とお別れを日だ。
知らなかった。
二股をかけられていたことを。
それを知ったのは、社内の女性社員から私に耳打ちで聞かれたのがきっかけだった。
「北条さんって、南条君と付き合ってるの?」
ちょっと驚いた。
だが、彼女は私がしているブレスレットが彼がしているブレスレットと対になっている事を知っていたから聞いてきたのだ。
おおっぴらにする必要は無いと思っていたが「うん、まぁ」と答えた。
もうブレスレットをしている時点で否定するのはおかしいだろうし。
ところが、彼女が私にそれを聞いたのは付き合っているかどうかという確認が目的ではなかった。
「いいにくいんだけど、南条君は彼女いるよ?知ってるの?」
彼女から出て着た言葉は、私の思考を停止させるのには十分なウィルスだった。
彼女に詳しく聞きその後彼の行動を追った。「残業だから」という彼の金曜の夜が時折あったが残業するような部署ではないんだがという思いはあった。
新人だから何か飲み会とかに行っているのかと。
行く先もキャバクラだったりすれば言いづらいかと思っていたのだが、彼が会社に出て向かった先はホテル街だった。
私に教えてくれた女性社員と同じ部署のフロアが違う人。
とても、背が高くスレンダーな女性で見た目は少し派手な服を着る営業の人。
私と同じで髪は長いけど、くるっと巻いた大人の女性を感じる雰囲気を持った人だった。
ホテルに入り際、彼と目があった。
彼は、笑って手を振ってそのまま入っていった。

「シャンパン好きだっていってたよね?」
今の彼は、とても優しい。
あれから、随分経ったな。
「うん、好き」
お酒が苦手な私だが友人の結婚式で飲んだシャンパンという飲み物を飲んだとき「うまっ!」と思った。
飲みやすいのかな?
彼が、シャンパンを開けグラスに注ぐ。
グラスを持とうとしたらその手を握られて、手のひらに指輪がのせられた。
「結婚してください」
真剣な表情の彼。
でも、ちょっと照れくさそう。
私は、笑って答えた。
「両親が離婚したから名前が違うけど。気付かないなんて」
袖をまくりブレスレットを見せた。
あの時彼が笑った同じ顔をしてみせた。
ブレスレットをはずし、注がれたシャンパンの中に落とし立ち上がった。
コートを着て玄関まで行き、振り返って一言。
「バイバイ 暇つぶしにはなった」
彼が最後に言った同じ台詞も忘れずにね。
08:03  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(2)

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食べてしまいたい

2009.01.13 (Tue)

***警告*****
グロテスクな文面を含みます。苦手な方はご遠慮ください。
**************



「可愛いね、本当に可愛いよ」
僕は、彼女を見たときあまりに可愛くて目が離せなかった。
高校生の僕が、彼女に告白しても相手にされないという不安がよぎったがそれを乗り越えて僕は彼女の側に行った。
彼女は僕を見てなんだろう?という顔をしている。
僕は彼女の名前も知らないし、何も知らない。
もちろん、彼女も。
それが、最初の出会いだった。
「可愛いですね」
素直に出てしまった言葉に彼女はくすっと笑って「ありがとう」といってバスに乗っていってしまった。
それ以来、彼女がバス停で待っているのを見かけたとき手を振ると彼女も手を振ってくれた。
嬉しかった。
委員会活動があって帰りが遅くなった時、彼女がバスから降りてきた。
びっくりした。
「あれ?今帰りなの?遅いね」
彼女から声をかけてきた。
僕は嬉しかったけれど、照れくさくて突然出くわしたため言葉を用意していなかった。
「・・・は・・・はい」
言えたのは、それだけ。
目は離せなかった。
可愛い顔が僕を見ている。
可愛い彼女の眼に僕が映っている。
とても、幸せだった。
こんな気持ちになったのは人生で初めてじゃないだろうか。
些細なことがきっかけで、偶然であったこの夜。
そして、今、彼女の目は僕だけを映している。
瞬きもせず。
僕を見てくれている。
嬉しい。
食べてしまいたいほど可愛いとよく言うだろ?
僕は彼女を口の中で感じて胃の中へ移動させた。
08:23  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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嫌われたトンネル

2009.01.12 (Mon)

親戚のうちに行く際必ず通らなければならないトンネルがある。
私は小さい頃からそのトンネルを知っている。
けれども、そのトンネルの名前が不思議だった。
そして、そのトンネルを嫌がる大人がほとんどだった。
タクシーで必ず行くのだがそのトンネルの先の町ですというと、あまりいい顔をされない。
だが、タクシー運転手としてはいい仕事のはず。
何故なら片道一万はかかるからだ。
タクシーにゆらゆらとゆられながら、うちにはない車に乗っておでかけというのは楽しいものだ。
私もそのトンネルは嫌だった。
だから、そのトンネルを通る時必ず目を瞑った。
最近のトンネルは明るい。
でも、昔のトンネルは本当に暗い。
薄暗く時折あるオレンジのあのランプがまた恐怖を煽りたてる。
元々いらぬ妄想壁がある私。
加えて怖いのは大嫌いな性分。
その癖、怖い話は聞き入ってしまう馬鹿だ。
何も知らない時でさえ私は、目を瞑り耳を塞ぎぎゅっと縮こまっていた。
不気味な雰囲気を漂わせ一旦入ると長いトンネル。
もしかして出口が無かったりしてなどと考えるくらい長いし、出口が一向に見えない。
単に、カーブしているトンネルだからなんだけれども。
昼間でもライトをつけないと暗い。
点々とあるオレンジのライトも恐怖感を演出しているだけにすぎないと思えるほど。
「そんなに、怖いの?」
首だけ上下に振って返事をする。
怖いけれど、完全に目を瞑ってしまうと襲われた時反応できないなどと考えているので半目にしている。
何も聞いていない状態でここまで怖がっていた。
それだけ、嫌いだった。
この暗いトンネルが。

それなのに聞いてしまったのがいけなかった。
何故、このトンネルが嫌われているのかという理由を。
トンネルの名前が由来しているものだと思っていた。
動物好きな私にとってはあまりに酷い話で悲しい思いとそんなことされたらそりゃ化けて出て人間を恨むだろうと思う話だった。
尾ひれが付いた話かもしれないが、トンネルにそんな名前をつけるほどだ。
実際に無かったらそんな話は出てこないだろう。
似たような話があったとしても最低な行為をしたということに違いは無い。
トンネル自体にその名前が付いたのは、その事件があったかということは間違いなさそうだ。
事件というより、人間が行った残虐行為を表す。
実際、そのことだけでも聞くんじゃなかったと後悔した。
恐ろしい話で私は怖くてたまらなかった。
だが、大人が嫌っていた本当の理由。

それは、ここで残酷な殺人事件があったということだと知ったのは少し大きくなってからの話。
08:51  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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流行

2009.01.11 (Sun)

私は流行にはあまり興味が無い。
偶然テレビなどで見たものが流行っています!などという情報を見て「こんなものが?」と思うことのほうが多い。
だが、私自身ほとんど地上波のテレビを見ない。
もっぱら、アニメであったり映画だけだ。
ドラマはよっぽどのことが無い限り見ない。
なので、情報源として見るその流行です!などという情報はニュース番組の中にあるひとつのコーナーなどで紹介されるものばかりだ。
ありがたい情報も時にはある。
自ら情報を捜そうとしないため、自分の気に入っている化粧品メーカーの新商品が紹介された時などははがきなどで知っていても実際の使用感などはわからない。
それを、取材に行ったテレビの向こう側にいる人が紹介してくれるのだ。
とある日、私は理解不能な流行に出会った。
それは衝撃的な出会いだった。
どちらかというと私にとっては、恥ずかしくて出来ませんよ!と怒るほどだ。
もし、同じ格好をしろといわれたら。
昔の話である。
高校生の時だ。
友人と二人で映画を見に行った。
映画を見るには都心部に出なければならない。
とても人が多く、よくこんなに人間がいるものだと思う。
沢山いる人間にもまれながらも道を歩く。
友達と話しながら映画を見終わった感想を話して横断歩道が赤だったので止まった。
青になったとき、対岸の道からとこちら側の道から沢山の人が渡っていく。
ぶつかりながら我先行く人の後ろについて渡るしかない。
ふと、明らかに皆が避けて通っている部分があった。
私にはそちらが通りやすいので友達の腕をつかんでこっちと引き寄せた。
が、目の間にいたのは明らかな不良ですという学生服を着た高校生だ。
男の子。
髪の色は金髪。
似合うに似合わないは問わずピアス。
シャツはズボンの中にいれず出して無造作に。
ネクタイはしているのかしていないのははっきりしろというくらいだらんと伸びている。
だが、彼は私とそこまで身長が変わらなかった。
少し、高いくらいかな。
顔を見て「関わりたくは無い」と思ったのは事実。
だから、目線を下に向けたときそれは起こった。
私の中に耐え切れない衝動が起きて目を見開いた。
驚いて私はその関わりたくない人物の目を見た。
その彼は何だ?と明らかに怪訝そうな顔をしている。
だが、私は再度下を見てもう一度彼の目を見た。
それでも彼はまだ怪訝そうな顔をしている。
私は、彼がどんなに怖そうな人でも教えてあげないといけないと思った。
周りにいる友人たちは何故何も言ってあげないのか。
こんな格好をしているのに、と。
私がそう思ったのをお察知した友人が腕を引っ張って止めた。
あまりの衝撃で言葉を失っている私。
それを見て、友人が一言。
「あれ、あんなふうに着るのがなんか流行りみたいだから」
その一言に、私は横を通り過ぎる彼を見てその彼から目が離せず振り返ってまで見続けた。
さすがに向こうもカチンときたようで立ち止まった。
友達が青ざめている。
周りにいる過ぎ去っていく人達もそんなにみたら何かされるよという電波を私に飛ばしている。
だが、どうしても目が離せなくてよく見ると彼の周りも彼ほどではないが同じ格好をしていた。
とうとう、その彼が一歩私のほうへ近づいた。
その時、私の我慢していたものが切れた。
「あーはっはっはっはっはっはは!!きゃっはっはっはは!!!うひゃっひゃっひゃ!!」
あまりに大声で周りの人が私に注目するほどだ。
完全に笑いのつぼに入ってしまった私はもう抑えられない。
息が出来ないほど笑いが出てたまらない。
友達はもっと青ざめた。
彼らもさすがに馬鹿にされてはと思っただろう。
もう一歩こちらに近づこうとしたが、その時私が友達に言った。
「ねぇ、あれが格好いいと思ってるの?!あれがファッション?!流行なの?!ありえないでしょう!おかしいじゃん!間違ってるよ!ダサいとかの問題じゃない!似合わないとかのレベルでもないよ!最悪じゃん!あんなの着て歩いてたら気付いてないんだって心配しちゃったよ!あれで格好いいなんて思ってたら訂正してあげるべきだよ!」
と、これの三倍くらい似たようなことを相当な早口で、もちろん彼らにも聞えるほど大きな声と笑いながら話した。
怒っていた彼らの顔は後味悪い顔になり、異性にここまで自分の格好が酷いと言われてはさすがにそこで怒るのは気がひけただろう。
怒ったとしても私があまりに嘲笑ではなく、本気で面白くて笑っているのは手に取るようにわかる。
それほど自分たちはこの女にとっておかしな格好をしているのだというのは自覚しただろう。
だからこそ、怒るに怒れなかったのだと思う。
あれが、ファッション?
ありえねーだろ。
以来、そういう人達を見ると笑ってしまうのでひたすら目線を違う方向へ向け肩を振るわせてこらえるのに必死だった。
笑うのは止められない。

だって、トランクス(下着でしょ?)が2センチ以上はみ出してわざと見せてて
ウエストの部分をを腰より下の位置で無理やりベルトで閉めて履いていたんだもの。

最初に私が友達に言った言葉はね「パンツ見えてるよって言ってあげなきゃ!」だったの。
08:24  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(6)

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覚悟

2009.01.10 (Sat)

この会社に配属されて間もないただの研修生である私は社会人としてのいじめをはじめて受けた。
それは、その会社の同僚に当たる人物で、役職は付いておらず立場上は同じ。
違う点は、自分が派遣社員だということだ。
いじめの原因は、直接聞いたわけではないが心当たりはひとつしかなかった。
それは業務の進捗が研修生である私のほうが早かった。
配属されて間もないのに、ここで働いて正社員で一応は班のリーダーである。
リーダーといっても特に仕事が自分と変わるわけではない。
だからこそ、比べる対象になる。
班全体をまとめる上司が、進捗結果を全職員分を見ている。
その結果を見ると、研修生の私の結果と同じ班のリーダーである彼女の進捗結果は倍は違った。
仕事内容も研修生だからといって易しい仕事を振り分けるなんてことはない。
余計にそれが彼女の仕事の進捗の遅さを目立たせた。
その結果がまぐれであり、一度きりならこんなことも起きなかっただろう。
だが、研修生でも仕事が慣れていくにつれその進捗の差は広がっていった。
進捗結果は、実働者に伝えられることない。
自分の結果だけは自分で把握できる。
それが、何故、自分との進捗の差が出たというのが発覚したのかというと班全体をまとめる上司が業務の効率を考えて出した結論が全ての発端だった。
「リーダーを交代し、君が通常業務に戻り研修生ではあるがリーダー職をしてもらいたい。リーダー職は本来別の仕事があったが、以前任せたとき仕上がりにかなりの時間を要してさせていなかったがあなたなら仕事をこなせそうだ。よろしく頼むよ」
それが、はじまり。
自分の仕事の進捗が遅いという事実と、他のリーダーはやはりリーダーと名の付く別の業務があったという事実。そして、それを仕事が遅いからという理由でさせられていなかったこと。
後押しするようにその業務を私がすでに行っていたという現実。
何年勤めているか知らないが研修生ごときに、派遣社員ごときにと怒りがわいたのだろう。
自分の能力を高め、挽回する方へ力を向ければ会社の評価も上がっただろうが彼女はそれを選ばなかった。
私へのいじめを決行した。
金魚の糞を二匹つれて。
最初は、私物の破壊。
次に、持参している弁当へゴミを混入。
個人ロッカーの鍵を入手して鞄の中身を全部引っ張り出しロッカー室にばらまく。
持ってきていつも昼休みに読んでいた本がシュレッダーにかけられぐしゃぐしゃの状態で休憩室の机に放置。
これが、端的に書くとこのような事だ。
怒ったりなにかすればつけあがる。
反応を楽しもうとしているのだから、無反応に徹するのが一番だ。
ある日、ペットボトルに入れていたお茶を机の上に置いてトイレに立った。
戻ってそのまま業務を続けペットボトルを持って家に帰ろうとした。
バス停で喉が渇いたため一気にその中身を飲み干した。
瞬間、気分が悪くなり血を吐いてその後の記憶はブラックアウト。
目が覚めたらなんと三日も経っていた。
一週間休んだ後、仕事に復帰。
その後も、彼女たちの攻撃は日々増すばかり。
それを見ている全職員は何も言わない。
理由は、彼女が支店長の娘だからだ。
まさに、大人のいじめというやつだ。
ある日突然その彼女が話しかけてきた。またなんかやったのか?と思ったが思い当たることは無かった。
「あんた、机の上に本を置きっぱなしだったでしょ?」
「本?」
「いっつも読んでるじゃない?」
ニヤニヤと気持ちの悪い顔で薄ら笑いを浮かべる。
「今日は読んでませんけど」
「え?」
「今日、本は読んでないですし持ってきてませんが」
「休憩室に置いてあったわよぉ~」
しかたなく、席を立ち彼女についていった。
その先には、漂白剤がかけられた本がびちゃびちゃになって酷い姿をさらしていた。
「置いとくのが悪いのよ、あんたのなんか触ったら汚いから消毒したのよ」
金魚の糞二匹もその様子を見て、きゃっきゃ笑っている。
私は笑えなかった。
その本が、とても貴重な本だということをわかっていたから。
自分の本でなくても。
「あ、ねぇ!俺の本知らない?!」
突然、その声は階段の下から響いた。
「ここ」
部署の違う男性職員だ。
「何これ?!」
青ざめている。
そりゃそうだ。
この本は、会員限定の本で一人一人その購入者の名前を作者が直筆で書いてある貴重な本だ。
私も持っている。
だが、ここに持ってくれば何をされるかわからないから持ってくることは無い。
「嘘だろ・・なんだよこれ!」
今まで笑っていた三人の顔が無表情に戻った。
「その女の本だと思ったから消毒したのよ。汚いからね」
言い放つ彼女。
あまりのショックに何も言い出せない様子の男性職員。
そこにちょうど支店長が現れた。
そう、彼女の父親だ。
「何の騒ぎだ?」
業務中に休憩室で凍り付いている男性職員と、私と、彼女とその金魚の糞二名。
誰も口をあけようとしなかったので私が話した。
「彼女が私への嫌がらせ日々行っていましたが、この本が私のものだと思い込み漂白剤をぶちまけて使えないものにしたのです。この本は、とても貴重な本で予約限定生産のもので二度と買えない品です。謝ることもせず、ここに本を置いてたのが悪いというのが彼女の言い分です」
言い切った私に、支店長は溜息をついた。
「まだ、こんなことをやっているのか」
その言葉には耳を疑った。
やはりな、という言葉も同時に頭に浮かんだ。
彼女の奔放さは半端なものじゃない。
徹底的に相手のものをぶち壊し手段を選ばない。
後ろ盾に父親という支店長クラスがいるということが上告しても意味がないと泣き寝入りした職員は多いだろう。それに、なりたくない一心でその彼女の犯行について周り実行し更に煽りをかける金魚の糞の態度も常識的に考えて逸脱しているというのは誰でもわかる。
だが、本社に直通で手段問わず上告すればわかってしまうものだ。
支店長の部下の教育も出来ないのか?といわれる。
尚更、娘ならば何故なにも指導をしなかったのかと追い込まれるだけだ。
一体、何が彼女をここまで強気にさせているのかを知るために私はあの事件以来ここに居た。
「誰に言っても無駄無駄!私は会長とすっごく仲いいの~」
綺麗にネイルサロンに行ったであろう爪を見ながら話す。
ねっとりとした話し声で。
自分が追い詰められていることも気付かずに。
「いい加減にしないと俺の立場も悪くなる。こんな馬鹿げたことはするな」
「うるさい!あんたに言われる筋合いないわ、たかが支店長の癖に」
そうか、後ろ盾は会長といわれる人か。
いじめを受けた原因を間違っていることに気がついた。
私は、仕事が遅くなって帰り道を違う方向に変えたことがあった。
あまり雰囲気がよくない色町。
ラブホテルの立ち並ぶ道に、彼女はかなり年上の男性と入っていった。
あの男のことだろう。
それを、見られたからだろうか。
「あの、男性が会長なんですか?」
私が、聞いた。
「そうぉよ。あの人、だから何言っても無駄なの。本社の人だからね」
「自分が何しても何も問われないためには体も利用するんですね」
さすがにその言葉には支店長である父親も凍りついた。
「何だってするわ~、自由が好きだから」
にっこり笑う彼女は強気の姿勢を変えない。
「その会長がどんなに役職として上だとしてもあなたとの関係がわかった時点で、役職の力が失われると考えたことは無いんですか?」
「そんなわけ無いじゃない、たかが同じ会社の職員の女性と寝たくらいで」
「恋愛感情がそこにあれば問題は無いでしょうけれど」
「無かったらなんだって言うのよ!」
「恨みを買うようなことをするにはそれ相応の、否、それ以上の仕返しが来ることを覚えておいたほうがいいって事ですよ」
「はぁ?!何いってんの?」
「会長があなたとの関係を認めるわけないですよ。自分の地位が危うくなり失職するかもしれないんですよ。あなたの価値が相手にとってどれだけあるかということ考えたこと無いんでしょう?」
「意味わかんない。あんた、何言ってるの?」
「すでに、ここの支店長に何言っても無駄だということはわかっていました。あなた達の行動がどれだけ非常識なものかというのを理解してもらうためあらゆるものを犠牲にしましたが、これで立証できました。何度も、ペットボトルをわざと机の上に置いていたけれど何度も入れてましたね。いろんな薬剤を」
「どうってことないわ、あんなの。あんたが死んだって私はここの会長と仲がいいの」
「会長に直訴したんですよ。あなたを後ろ盾に好き勝手やっている事実を報告書にまとめ送りました。また、会長だけではなく同じ文章を人事部、総合統括部、役員会職員全員に。あなたと会長との関係も書き添えて。今頃、辞職させられるかもしくはこの関係は嘘だなどと弁解していることでしょうね」
「そんなことしたって会長が一番上のクラスなのよ。なにしても無駄だって事まだわからないの?」
「無駄じゃないですよ、だって、あなたは私を殺そうとしたじゃないですか」
「それが何よ」
「私は、心配停止になったんですよ。立派な殺人未遂が成立しているんですよ、警察も捜査しています。館内の防犯カメラの映像も、今話している会話も記録されているでしょう。証拠品として押収されるでしょうね。会長があなたに殺人未遂で逮捕されたら何してくれるのか教えて欲しいですね」
「・・・嘘」
天井に赤いランプが点滅している防犯カメラを見つめ呆然と立ち尽くす彼女。
「そうそう、それと、あなたが以前いじめて追い出した女性職員自殺したそうです。その件もお忘れなく」
鼻で笑って私はその場を立ち去った。
その後、彼女の姿を見たものはいない。
警察も捜索を開始した。
逮捕直前になって姿を消した彼女の行方を。

私だけが知っている、どこにいるのかを。
08:08  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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中毒

2009.01.09 (Fri)

これを食べないと私は気が狂いそうになる。
これは私にとって何なのかと問われたら、生きるために必須のものであり
精神安定剤ともいえる。
無くなってしまったら、苛々が膨れ上がりストレス増大。
これを食べ初めて、色々なものを試した。
種類が沢山あることを知った。
そして、値段の割りにあまりにまずくて食べられないものもある。
その沢山ある種類の中でも、なんと同じ名前なのに原材料が違うことがある。
見た目では判断不可能。
最近は、その見た目で自分の好みの味かどうかというのは判断できる。
通常、これを食べているなんて人に会った事が無い。
購入している店では、あまりに一度に大量に買うため「そんなに買ってどうするんですか?」と聞かれてしまうほどだ。
正直に「食べるんです」というと、「えぇ?!」と驚かれた。
売っているお店は少ない。
売っていたとしても、それが食べられるかどうかというのは味で決まる。
もちろん、それは食べてみないとわからないが見た目である程度は判断できる。
食べれそうかな?と思ったときとりあえず買ってみる。
そして、出会ったのが今のこれだ。
今まで一番美味しいと思っていたものが、まずく感じるほどだ。
あまりに美味しいのでいつも購入している。
値段も妥当だろうという値段だ。
偶然見つけたお店で、ためしに買ってみた結果うまかったので常連になった。
月に一回くらいしかいかないけれども、この商品を大量に買っていく客などいないため顔を覚えられた。スタンプカードも頂いて、沢山たまっていく。
おかげでお財布が楽になる。
割引率が高いからだ。
ありがたい。
だが、少々問題が起きた。
今まで一袋食べるのに二日だった。
それが、一日になった。
それだけストレスを感じているということだ。
これを食べるということは、ストレスが多いということになるのだ。
ストレスを感じているとき食べる量が異様に多くなる。
理由はわからないが食べると落ち着く。
どこにこのおなかいっぱいの私に、これが入る部分があるのだろうというくらい食べている。
おかげで消費量はかなりのものだ。
あまり一気に食べてはなくなってしまう。
店が近くに無いため一ヶ月に一回しか行けないのだ。
量を減らさねばと思うものの、とても美味しく感じている。
つまり、それほど何かストレスを感じているのだろう。
食べないと気が狂うほどのもの。
通常これは食べるために作られてはいない。
だが、食品である。
どちらかというと健康食品として別の形で売られているが、私が購入している店に置いてあるものは食べるためにおいてあるわけではない。
食品だからもちろん食べて害はないし、沢山食べても太らない。
糖分じゃないからね。
これは、もう中毒としかいいようがない。

食べてみる?
美味しいよ
一度食べると、抜けられなくなるよ。
ずっとね。
ずっと。
08:17  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(13)

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境界

2009.01.08 (Thu)

この先には何があるのだろう。
私の興味はもはやこれに支配されていた。
一体、何があると言うのだろう。
どうしてこれより先行くことが出来ないのか
どうしてこれより先見ることすら叶わぬのか
その理由を大人たちは教えてくれない。
理由をはぐらかしているようにも思える。
つまり、自分たちも本当は知らないんじゃないだろうか。
ただ、皆が皆そういうから自分もそうしようなんていう型にはまった生き方をしている。
そう映るのは私の目だけだろうか。
不思議なんだ。
本当に、すぐそこにあるというのに誰も近づかないし近づいていこうとすれば
なりふりかまわずぶん殴られ理由もわからず怒られる。
「あんなものに近づいて!何を考えているんだ!」
「どうしてわからないの!あなたは!何度もダメだと言っているでしょう!」
わからないんだ。
「どうして?どうしてなの?」
そういっても、帰ってくる台詞は決まっているんだけれど。
「口答えするな!」
どうしてダメなの?
何がいけないの?
教えて。
教えてよ。
私は、テレビを見ていつも思うのよ。
子供でもわかってるんだよ。
ねぇ、どうして大人はわかってないの?
それとも、わかってるけれど諦めてるの?
仕方が無い。
それだけで、済む事のなの?
ねぇ、教えてよ。
テレビ見てるよね?
一緒にニュース見てるよね。
何であんなに普通に人が殺されたとか毎日のように話してるの?
どうしてそれを平気で電波で流すことが出来るの?
どうして?
戦争あったよね?
戦争したとき人を殺すんでしょ?
それが、戦争なんでしょ?
それなのにどうしてそれは許されるの?
人を殺したら殺人事件としてニュースで流れてるよ。
悪いことだっていって警察が動いてる。捜査している。
なのに、どうして?
大量殺人をしてもそれは戦争だから仕方が無い。
世界が認めたから。
だから、別に罪じゃないの?
仕方が無いで終わらせるの?
どうやって戦争が起きたかなんて学校で習ってないよ。
教えてくれないよ。
ただちょこっとだけ。
さわりだけ。
きっとそうだよね?何にも知らないんだよ私達は。
大人もそうだよね。
その当時を生きていたわけじゃないし、生きていたとしてもそれが当たり前だったのだからやっぱり諦めたんだよね。
仕方が無いって。
なら、いいじゃない。
世界が認めているんだよ。
仕方が無いって。
そんな世の中だって。

私が死ぬことを選んだって、ただ、ニュースになって、そして次の日には忘れられるくらい
どうでもいいことなんだよ。
そんな世界に、住んでるんだよ?
パパ ママ どうして平気なの?
08:13  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(2)

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五年前の話 リゼットクライトマンシリーズⅢ

2009.01.07 (Wed)

教会から聞えてくる歌声は、早朝5時から始まる。
特に決まった決まりがあるわけではないがなんとなく目が覚めてしまうから。
ベッドから起きて、顔を洗って口をゆすいだら紅茶を入れるの。
必ずアップルティーを入れる。
好きなんだ、この味。
暖かいアップルティーをゆっくりと飲んだ後、スコーンを食べる。
それが、決まった朝の朝食。
スコーンは、プレーンで何も入っていないものが好き。
お気に入りのティーカップとセットのお皿。
薔薇の模様が絡まってほどけないくらいなのに美しく見える。
私を別のもので表すならこの薔薇だと思う。
リゼット・クライトマンとして私が目が覚めたのは一年前。
その一年前以前の事は、一族最大の秘密として扱われているんだそうだ。
理由はよくわからない。
元々、私はその一年前まで普通に村の人間と共に生きてきた。
ただし、絶対に顔を見せてはならないという掟があった。
それも理由がわからない。
必ず顔が見えない黒いベールを被り葬式のような格好をさせられていた。
同年代の人間と話したことは無い。
普通に過ごしていると思っているが、その生活が生まれてから当たり前だったから普通だと思っていた。
ところが、一年前のある日。
リゼット・クライトマンが死んだと聞かされた。
なんと、十字架に上から突き刺さって死んだというのだ。
あの教会にはよく行っていた。
だから、リゼット・クライトマンを見たこともあるし歌も聴いたことがある。
誰も近づかないこの教会は、ほとんどリゼットだけが居た。
でも、時々どっちかわからない人が居た。
目の前で歌っているリゼットと同じ顔をした人間がやってくる。
楽しそうに話している。
そんなリゼットの姿を見るのは、この同じ顔をした人間がやってきたときだけだ。
リゼット・クライトマンと会話をしてはならない。
これは村全体の掟。
だから、リゼットも私に話しかけようとはしなかった。
でも、このリゼットと同じ顔をした人はいつも笑って話していた。
不思議だった。
もし、村の連中誰かに見られたらどんな仕打ちが待っているかわからない。
ただでさえ、相手はリゼット・クライトマンだ。
神に捧げる神の歌を歌うことが出来る唯一の人物。
その神に最後は命を捧げ生を終える。
それが、彼女の生まれたときから死ぬまでの人生が決まったレール。
誰一人として、聖なる少女のこの人と口を利くことは出来ない。
建前だということは、子供の私でもわかる。
聖なる少女なんかじゃない。
この、リゼット・クライトマンは神の子ではない。
この村に産み落とされた神に反旗を翻した反逆の子供。
その罪を背負って生まれてくる証として首には縫い付けられたような後がある。
生まれたときからそのような痣があるというのが通説だが、実際は首を切って他の体に付け替えて生き続けているというのが秘密だとされてきたことでもすでに知れ渡った我がクライトマン一族の秘密のひとつ。
リゼットと同じ顔をして、同じ声をして、二人とも本当に見分けがつかないほど似ている。
だが、この彼女がどこからやってきて誰なのかというのは私も知らない。
私も、村の住人とは誰も話しをしたことが無い。
否、それは語弊があるか。
話しかけられたことに対しては話していいが、自分から言葉を発してはならないという掟がある。
これもまた理由不明。
生まれたときからそうやって育ってきたのだから別に窮屈だと感じたことは無い。
不思議なことに、このリゼットが今どこで何をしているかというのが私には感じ取ることが出来る。
だから、リゼットしか知らない歌も私は歌える。
リゼットがあの同じ顔をした人と話していることも、話している内容も聞えない距離に居ても私はわかる。
もっともっと昔のことも知っている。
今のリゼットではないときのことも。
どうしてだろうか。
現在のリゼットは今までの中でも比較的はやくリゼット・クライトマンとして目覚めたそうだ。
十一歳の時。
それが、早いのか遅いのかというのが問題なのか私にはわからない。
このリゼットが死んだ時、真夜中だった。
寝ていたのに、その光景が私には見えた。
汗をかいてベッドから飛び起きた。
鼓動が止まらず震えているからだが冷たい。
いつもなら、リゼットは十字架に突き刺さって最後の仕上げの歌を歌って死ぬの。
それは歌ってはならないとされている禁聖歌。
それもね、私は知ってるの。
今のリゼットの記憶じゃない。
多分、もっと前の記憶。
この歌を歌った時、リゼットは死ぬことが出来る。
やっとね、リゼットから開放されるんだよ。
きっと、幸せだろうな。
どんどんね、記憶が鮮明になってくるんだ。
昔の記憶が。
どちらかというと、今よりもっと昔のことを覚えている。
私がうまれてもいないはずの時のことなんだろうけれど。
どうしてかな。
でも、こんなこと誰にも話したことが無い。
話せないからさ。
だけど、私が知っている、私がいつも教会で見ているリゼットは最後の歌を歌えなかった。
どうして。
どうしてシスターがあんなことをしたのか。
あんなことをいったのか。
私にはわからない。
シスターの顔も、いつもベールに隠れて見えなかった。
なのに、シスターはリゼットによく似ている。
リゼットよりももっと年上だけど。
リゼットに似てるわ。
シスターがどうして教会で、それも最後の歌を歌わせずにあんなことをしたのか。
意図的なのか。
それとも、違うのか。
でもね、シスターは驚いていた。
その先に見たのが、なんだったのかわからないけれど。
次の日、死んだはずのリゼットはいつもと同じように歌を歌っていた。
でもね、振り返って私に笑いかけたの。
だから、すぐにわかった。
この人は、リゼットじゃないって。
だって、リゼットの行動も気配も感じ取られないんだもの。
でもね、代わりに何故かシスターの言葉が時々聞えるようになったの。
こういってたわ。
「リゼット、あなた本当にリゼットなの?」
08:35  |  リゼット・クライトマン  |  Trackback(0)  |  Comment(2)

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新年のご挨拶&追記あり&更に追記

2009.01.01 (Thu)

                        新年のご挨拶

あけまして おめでとうございます

昨年十月より立ち上げたこの小説ブログサイト「仮想世界」を
ご愛読頂き感謝申し上げます。
今年もより一層、世界観を広げ、また新たな作品を作っていけるよう頑張ってまいります。
コメント・拍手など沢山いただきまして本当に小説を書く意欲の糧となり
とてもありがたく感謝しております。
今年の目標は!本を作る!(自費出版になりますが)
作品を選抜し、更に書下ろしを追加予定です。
少しずつですが作業を進めております。
発表できる目処が出来ましたらお知らせいたします。

今年もよろしくお願いいたします。

新年始まって早々、ホラー小説もなんですので七草粥を食べ終わってから再開します。

日下 ヒカル

2009.jpg
00:00  |  作者の言葉  |  Trackback(0)  |  Comment(12)

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