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サンドされた何か

2010.03.17 (Wed)

「これはとっても美味しいの!だからね、お土産」
ニッコリ笑う彼女の笑顔は本物だったが僕はそれを食べる気はしなかった。
そのパンの中身を知っているから。

朝というより、まだ暗い夜明け前の頃。
システムがダウンしたという電話でたたき起こされた僕は眠い瞼を無理やり開けて体を起した。
その時パン屋は既に稼動しており見てはいけないものを見てしまったというべきだろう。
きっと、伝統的な味だったはず。

「・・・黙ってますから」

そういうしかなかった。
有名なパン屋での出来事。
それこそゆすりでもしたらいくらでも金を積むほどの衝撃的なものを見た。
ゆすろうなどという気が起こらないほど恐ろしかった。
それを皆が食べている事実が。
それを美味しいといっている現実が。

「どうしたの?顔色悪いよ」
「あ・・いや、ありがとう。ただ、これ・・・僕あまり好きじゃなくて」
「えぇ?!そうなの?!こんなに美味しいのに・・・」
「・・・そっそうなの?」
「そうだよ!だってこれ、食べたら美しくなるんだよ!すごくない?!」

綺麗になる。
確かにその言葉に嘘は無いかもしれない。

「若い人のエキスを配合してるんだって!」

その通りだ。
エキスといっていいだろう。

「だからすっごくお肌の調子が良くなるって評判なの!」

裏で起きている事件は報道もあまりされない。
まして、単なる行方不明なら尚更。

「そういえば、あそこのおうちの赤ちゃんが誘拐されたとかって騒いでたけどなんだったんだろうね」

これが、現実だ。

08:00  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(4)

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