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流行

2010.03.28 (Sun)

「いいですか!皆さん!これは政府が決めたことです。政府とは国の偉い人たちの集まりです!
ちゃんと守ってくださいね!」

それは担任教諭から言われたことだと娘は言った。
私は耳を疑ったが慌ててつけたテレビにも同様のことが放送されていた。
近所でもどよめきが聞こえ始め罵声までも響いた。
「ちょちょっと・・・待ってて。買い物行かなくちゃ」

数週間の食料や水を買う必要がある。
薬もいる。
何もかもが目まぐるしく動いた。
夫が会社から電話を携帯にかけてきた。
珍しいことだ、それだけの惨事だった。

「家から出るな!」

買い物に行こうとしていたが外は予想以上にとんでもないことになっていた。
あの流行のせいで。

「ママ・・・どうしたの?」
「ううん・・・ちょっと、ね。あのね、絶対に窓開けたり玄関開けたりしちゃだめよ。
ママとパパじゃない人が来たら開けちゃだめだからね」
「・・・うん。わかってるよ、ママ。どうしたの?」

流行り病は想像を絶するスピードで広がった。
たった一人の感染者が日本に降り立ち、その感染を見逃したために起きたこの法案。
それは、感染者の殺害を許可するものだった。

「ママ、感染した人はこれで刺すんだよ?知ってる?」

娘が取り出したのは毒物の入った注射器。
親だろうと兄弟だろうと殺しなさいと学校で指示があったらしい。

「ママ、感染してるの?」

娘は自分が感染していることを気づいていなかった。

「ううん。それより、ベッドに寝なさい。それと、パパが帰ってくるまで家にいなさいね」

私は娘を置いて外に出た。
「どうしたんだ?!」
夫が帰宅した。
夫に娘の感染を告げると夫は私を見るなり殴りかかった。

「お前も感染してるのか!!」


・・・・という、ニュースが流れていた。
これが現実に起きているある地域の話だと。
感染を恐れ、感染者に対して治療は行わないというのが政府の方針。
それがこの惨事を招いたが、あの地域以外感染者は出ていないという。

「ねぇ、ママ。この場所ってこの前遠足に行ったところだよ」
「・・・え?」
08:00  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(4)

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