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インクルード 

2011.08.03 (Wed)

【インクルード】

ヘッドフォンから流れる音に体を任せ脳だけ別のことを考える。
目の前にある信号が早く変わらないかと焦る気持ちが無駄である事に気づくと、一秒の出だしを無駄にしたために後ろから人がぶつかってきた。
「邪魔なんだよ!」
吐き捨てられた台詞を拾い上げ投げつける事が出来たら気分爽快だろう。

読み込まれた今日の気分はスカイブルー。
ブルーという言葉でも雲ひとつ無い青空が僕の存在を表す。
横断歩道を渡りきると大きな駅が聳え立つ。
どちらかというと、景色を邪魔している人工物であり綺麗でもなんでもなく人があふれ出てくる気持ち悪い建物というイメージしかない。
ロボット並みに整列された人間がコントローラーを持つ誰かに操られたように無表情で電車に乗り込む。
無表情というよりは死相が漂う青い顔で毎日会社に出かけている様子が伺える人間が多いが、そのうち本当は死んでるんじゃないだろうかと疑いたくなるようなヤツまで乗車してくる。

「よ。」
声が降ってきた方向を向くとそこには俺が居た。
「よぉ。」
「今日はどっち行く?」
「今日は打ち合わせの日だからA社かな」
「そっか。んじゃ、おれBね」
「よろしく」
「終わったらメールする。夜はお願いしていいか?」
「うん」

俺達は、俺が二人居る。

世界にインクルードされた存在。
世界は俺が二人居る。
もしかしたら、他にも俺が居るかもしれない。
記憶が断片化され統合された存在。
それが俺になる。

でもそれを誰も気づいていない。
何故なら俺達のようにもう一人の俺に会うことはないようになっている。
それが世界の仕組み。
世界を割って入った罪は重い。

夢を蹴飛ばし、希望を握りつぶし、幸せを目の前で散らす。

俺に死は訪れない。
死なない俺は愛するものの死を見続け見送るだけ。
年を取らない俺は愛するものの前から姿を消し裏切りを買うだけ。
俺は読み込まれてしまった存在。

消されない世界の始まりに読み込まれミスった神は今頃デバッグに苦しんでいるだろう。

テーマ : ミステリ - ジャンル : 小説・文学

11:38  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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