サイトマップ
09月≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫11月

スポンサーサイト

--.--.-- (--)

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--:--  |  スポンサー広告

拍手する


トライアルキット

2009.06.19 (Fri)

一人暮らしをはじめた彼女にとってこれほど腹の立つものがあるとは思っていなかった。
こんな弊害で悩まされるとは。
高校卒業と同時に、剃りの合わない両親の元から離れ一人暮らしをし始めて数ヶ月。
大学に行きながらの生活も楽しく過ごせるはずだったのに
毎日のようにポストが溢れかえるほど郵便物は投函されていた。
殆どが、ピンクチラシといわれる類のものだ、
いわゆるエッチな広告だ。
十八歳の彼女にとって卑猥なその広告は男性に対して
こんなものを見て喜ぶ生物がいるのかと不快感を募らせていた。
しかし、ピンクチラシお断りなんて言葉をポストに張れば女が住んでいるというのが
わかってしまうという懸念から対策をしていなかった。
苛立ちながらもピンクチラシ全てを掴み取り部屋に持って帰り
ごみ箱に投げつけるように捨てた。

その時、一枚だけ入り損ねた紙がひらりと床に落ちた。

「何、これ・・・」
ダイレクトメールであることに違いはないだろうが、確実に違法になるのではないだろうかという
文言がそこにはキャッチコピーとしてデカデカと書かれていた。

確実に正確に殺せます。

もちろん、この言葉だけなら殺虫剤でもありえるが絵はどう見ても
人間を刺している姿が描かれている。

手に取り、裏面を見てみると「トライアルキット限定発売」と書いてある。
鼻で笑ってしまった彼女だったが、夕食を作りながらずっとダイレクトメールのことを
頭の片隅で考えていた。
もしあのキャッチコピーが本当ならあいつを消せる?
大学に入って彼女は驚いた。
都会の大学に進学したがもちろん勉強するためだった。
だが、その中ではまったく勉強に興味を持たず女と見れば追いかけてくる男がいたのだ。
田舎から出てきた彼女は一見今時のファッションを身に着けてはいないが
お化粧もしていない状態でもかなりの整った顔立ちをしている。
それを、彼女は自覚したことがなかった。
「気をつけたほうがいいよ。あなた、本当に綺麗なんだから」
「やめてよ、そういうお世辞は!」
「お世辞じゃなくて、本当に綺麗なの。だから、変なのに気をつけなって言ってるのよ」
「変なのって?」
「あいつ。ずっと、一緒の講義受けるしまるでつけてるみたいじゃない」

その、あいつは本当に後をついてきてとうとう彼女のマンションまで来た。
慌てて部屋に入り鍵を閉めたが、そっと窓から見ると夜中の十二時を過ぎても彼はそこにいた。
それから、携帯電話に無言電話や誘いのメールが入るようになり
堂々と学校内では隣の席に移動して来るようになった。
その席に誰かが座っていたら移動してもらってまで座るのだ。
だが、彼は一度も話そうとしなかった。

それがなにより、恐怖を煽らせた。

捨てようかと紙を手に取り窓を見たとき、目があった。
それが決定打となりすぐに彼女は電話をかけトライアルキットを注文した。
千五百円のトライアルキットを。
即日配達にしてプラス五百円。
二時間後には届いた。

中を開けると、特に何の変哲もないナイフが一つ入っていた。
「どこでも一箇所刺せば動かなくなります」
そう書いてあった。

学校に行ってナイフは鞄に入れていた。
いざというときに使おうと思っていたのだ。
その、いざというときは五分後に訪れた。
講義に遅れそうになり裏階段を使ったとき彼が裏階段のドアの前に塞ぐように立っていた。
「やっと二人きりになれた」
そういった彼の顔が笑ったのか、怒っているのかわからない表情を見せた。
裏階段は殆ど誰も使わない。
叫んだところで誰も気づかない。
彼が彼女の胸を触ったとき、彼が何をしようとしているのか確信した。
唇が近づき硬直する体を必死に動かして鞄からナイフを取り出した。
手に収まるほどの小さなナイフ。
それを、彼の太ももに刺した。

「うわぁっ!!」

耳を劈くような叫び声を上げた彼はその場に倒れもがき始めた。
だが、いつまで経っても死なない。
何故?!
彼女は慌てて説明書を取り出し何か間違えたかと最後まで読んだ。

トライアルキットはお試しですので効果は半分しかありません。
なので、半殺しとなります。

「半殺しって・・・」

彼は意識不明の重態で救急車で運ばれた。
目覚めることのない意識の回復を祈ったが彼女の願いについては
注意事項に記載されていた。

トライアルキットの効果は一週間です。 と
08:16  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(6)

拍手する


コメント

説明書はよく読んで使用しなければ
いけませんね!
ヒカルさんの作品はいつも
このあと・・・と想像させられるところが
いいですね!!(^^)
海のいるか |  2009.06.19(金) 16:59 | URL |  【編集】

海のいるかさんへ

最近のものは説明書読むとびっくりしますよね。
何じゃこの機能はぁ?!と・・・
以前は読まなくても使えたのに(汗)

このあと・・・を想像してもらいつつ、それを裏切るどんでんがしを目指しています!
中々(汗) 難しいんですけどね・・・(^^;;;
日下ヒカル |  2009.06.19(金) 21:16 | URL |  【編集】

こんばんは

いそうですね、そういう男。
私は逆の立場なのでよくはわかりませんが、
そんな男がつきまとったら不気味なことでしょうね。
トライアルキット、1週間後、彼が目覚めた時が怖いですね。
こんどはトライアルじゃなくて、ほんとのキットを買わなくちゃ!

ちなみにヘビさんの卵(ヘビの種類によって当然違うと思いますが……)はウズラの卵より若干大きいくらいだったと思います。
水槽にフタをしていて良かった!!
空飛ぶミケ猫 |  2009.06.19(金) 21:25 | URL |  【編集】

空飛ぶミケ猫さんへ

本体を買わないと、目が覚めたら恐ろしいですねぇ(T-T
でもきっと高いんでしょうねぇ・・・
男女問わず、付きまとわれたらめっちゃ怖いですね・・・

ヘビさんの卵ってそんなに大きいんですか?!
そりゃ驚きだ。。。
蓋しておいて、よかった・・・
本当に、良かったですね・・・(@@;;
日下ヒカル |  2009.06.19(金) 21:47 | URL |  【編集】

僕は電気製品でもなんでも
説明書を読まないタイプ。
きっと、彼女もそうだったのかな?
使用済みは
返品不可かな…。
ひろ |  2009.06.20(土) 23:59 | URL |  【編集】

ひろさんへ

説明書はざっと読むタイプの彼女でした。
以前は私もまったく読まない人だったのですが、最近の物は色々な余計な機能がつきすぎて
壊しそうなので読んでいます。
とりあえず、ざっと・・・。
返品は無理でしょうねぇ・・・。。。早く本物買わないと彼は目覚めちゃいます。
今度は何されるか(><;;;
日下ヒカル |  2009.06.21(日) 09:04 | URL |  【編集】

コメントを投稿する

Url
Comment
Pass  編集・削除するのに必要
Secret  管理者だけにコメントを表示  (非公開コメント投稿可能)
 

▲PageTop

トラックバック

この記事のトラックバックURL

→http://virtualworlds.blog87.fc2.com/tb.php/277-c970a826

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事へのトラックバック

▲PageTop

 | HOME | 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。