サイトマップ
10月≪ 123456789101112131415161718192021222324252627282930≫12月

スポンサーサイト

--.--.-- (--)

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--:--  |  スポンサー広告

拍手する


迷子の私を呼んだのは

2009.08.04 (Tue)

「もう知らない!ユリの馬鹿!」
四つ上の姉 香子がそう叫んで先に行ってしまった。
四つの私は家までどうやって帰っていいかわからず、迷子になった。
家では騒動になり、夜中になっても帰らず探しても見つからなかった。
香子は家で父親から殴られ「何で置いてきたんだ!」と責め続けた。

その頃私は、姉が帰った家に戻りたくないと思って神社の奥にある森の中を歩いていた。

どんどん暗くなり前が見えなくなったので私はじっと木の根元に腰掛け
星空を見ていた。

暑い夏の日差しが隠れ、涼しい風が吹き始める。
木々が揺れ、風と共にダンスをしている。
私は心地のよい音に耳を傾け、おなかすいたなと感じていた。

誰もいないはずの森の中から、カコカコと音が聞こえた。
動物の足音。
誰だろう?

「わぁっ!」
悲鳴を上げたのは、動物の方だった。
・・・今、悲鳴をあげたよね?
「・・・どうしたの?こんな所で・・・。もう夜遅いのに」
動物が話せることを知らなかったな。
「おねえちゃんと喧嘩したからおうちに帰りたくないの!」
「喧嘩したんだ・・・」
「あなたはだぁれ?」
「鹿だよ。まだ、子供だけど」
「うん、ちいちゃくてかわいいね」
「君もちいちゃいよ」
「お名前は?」
「ハナ」
「私はね、ユリ」

その時、おなかがぎゅぅ~となった。

「おなかすいてるの?」
「うん」
「ちょっとまってて」
小鹿のハナちゃんはどこかに軽やかな足取りで行ってしまった。
しらばくして、戻ってきたハナちゃんは何かを咥えていた。
「はい、ごはん」
葉っぱだ・・・。
「食べれないよ」
「美味しいんだよ、この柔らかい葉っぱ」
ハナちゃんがとっても美味しいというので食べてみた。
「にがっ!!」
「えぇ?!美味しいのに!」

鹿と食事をするのは、好みが違うから無理だなと感じた。
「食べていいよ。ごめんね」
そういうと、ハナちゃんは「いいよ、気にしないで」といってくれた。
食べ終わった頃、ハナちゃんのお母さんが迎えに来た。

「人と話しちゃ駄目だとあれほど言ったでしょう!」
怒っている花ちゃんのお母さんはすごく大きかった。
だから、怖くてハナちゃんの後ろに隠れた。
「ユリちゃんおうちに帰りたくないって!お姉ちゃんと喧嘩したって」
「・・・しかたないわね。いらっしゃい。足元気をつけて」

ハナちゃんとハナちゃんのお母さんについていくと、沢山の鹿が座っていた。
「おや、珍しいお客さんだ」
「こんばんわ」
「あらあら、泣いてたの?こっちへおいで、あなたは木の実のほうが食べられるでしょう?」
「わかんない」
「これをお食べ。おいしいから」
「うん」
沢山の鹿さんが私にすりすりして、木の実を沢山くれた。
とても美味しかった。
「落ち着くまでここにいていいよって」
ハナちゃんが側に来て、一緒に木の実を食べた。

あれから、もうどのくらいたったかな?

「ユリちゃん、いなくなってもう十年だね」
時々お姉ちゃんがこの森の入り口に立って、私に話しかける。
お姉ちゃんはあのときよりすごくお姉さんになってる。
「ユリちゃん、帰って来て・・・。待ってるからね」

小鹿だったハナちゃんは子供を生んでお母さんになった。
そのハナちゃんの子供も子供を生んでお母さんになっている。
その小鹿ちゃんが言ったんだ。
「一度、おうちに帰ったら?でも、もう戻れないから。またこっちに帰ってくることを忘れないでね」




08:00  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(14)

拍手する


コメント

ソロモンの指環

どちらの世界が真実なのかな…?
ヒトの世界、鹿の森…

鹿だった少女はほんの一時ヒトだったのかも知れませんね。

それにしてもソロモンの指環…欲しいアイテムです。
カゼノオ~ |  2009.08.04(火) 09:00 | URL |  【編集】

森で小鹿と出会ったのが良かったのか悪かったのか…。
そこから考えさせられる不思議なお話でした。

そして最後の一行。
戻れない…?
妖精さんになっちゃったのかな…?

意味深さがイメージを膨らませますよね!
妄想好きな私にはこんなお話が好きです!

(PSちゃんと昨日1人でお風呂は入れました(笑))
D-3 |  2009.08.04(火) 12:27 | URL |  【編集】

メルヘンですねー。好きです、こういうの。
いやなところから逃げて自分を温かく迎えてくれる居場所の心地よさに甘えてしまう弱さ。
そしてもう戻れない物悲しさと。
かえりたーい、かえれない。
私も鹿になっちゃおかなぁ~、なんてね。
えめる |  2009.08.04(火) 12:45 | URL |  【編集】

切ないニャ。

メルヘン+ホラーの 可愛い悪魔ちゃん
ん~なんか今日は 切ないニャ。
人間は 勝手だね、素直な話だから 喜ぶべき?
やっぱ ひねくれワールドがいいのか。
みかん  |  2009.08.04(火) 14:08 | URL |  【編集】

カゼノオ~さんへ

どっちも世界は真実で森の中で暮らす動物達と一緒にいることを
小さいながら選んでしまいました。
そして少女は森の住人に・・・
森の住人になったことでお話が出来るのです~
日下ヒカル |  2009.08.04(火) 17:14 | URL |  【編集】

D-3さんへ

ん~・・・多分、よかったんだと思う(^^;;;
そう、森の妖精さんになったので人間の世界には戻れません。
戻っても人間には見えないのです~

PS
あ、入れました?
良かった良かった♪後ろの影が見えなくて・・・ なーんて(汗)
嘘ですよ(^^; 嘘・・・
日下ヒカル |  2009.08.04(火) 17:16 | URL |  【編集】

えめるさんへ

一旦その場に足を踏み入れると出られなくなるけど、幸せの場所。
あぁ迷い続けそうです・・・
あれ?!鹿になっちゃうの!?(@@;
ん~確かに、鹿になればどっちでも行き来できそう!!
日下ヒカル |  2009.08.04(火) 17:17 | URL |  【編集】

みかんさんへ

ちょっとせつないですが、本人が望んだ森の住人になること
小さい時に選んだけれど
戻って会うことはできるから♪(^-^)
見えないけどそれでもきっとわかってくれるはず!
あれ?!ひねくれワールドご希望?(^^;;
日下ヒカル |  2009.08.04(火) 17:20 | URL |  【編集】

こんにちは

現実から離れたい時にやさしい声をかけられるとつい付いていきたくなりますね。
ユリちゃんは森の生活が良かったのかな。
でも、その代わりもう元の生活には戻れない?
何だか、現代の生活の一部を切り取るとそんなふうになるのかもしれませんね。
空飛ぶミケ猫 |  2009.08.04(火) 20:46 | URL |  【編集】

空飛ぶミケ猫さんへ

そうですね。ホント、ついていきたくなる。
ユリは小さかったから素直についていけた。
でも大人になると、自分ひとりだけが優しい場所に行っても幸せになれないのをわかってる
だからいけない・・・。
一度、甘い場所を手にしたら戻りたくは無いですからね。
ユリは自ら戻れないようにしてしまっているんです。
気づいていないだけで・・・
日下ヒカル |  2009.08.04(火) 21:02 | URL |  【編集】

可愛い物語も好きですよ。

おー!
今日はスタンダードメルヘン。
でも最後の一行に、意味深な・・・、もしかしたら・・・ドヒャッ
チャン |  2009.08.04(火) 22:46 | URL |  【編集】

神隠し?

森の入り口に境界があって、ユリのお姉さんはその外側から呼びかけている感じですが、
世界の端に境界があるんじゃなくて、この子の姿が人間には見えなくなったんでしたか……
ライム |  2009.08.05(水) 06:44 | URL |  【編集】

チャンさんへ

リクエストにお答えして、「鹿」物語です~
題材提供ありがとうございます。
こういう、きっかけって中々見つからなくて。
「鹿」と与えられると、こんな風に展開がすらりすらすらと書けちゃうんですよね。
不思議~
日下ヒカル |  2009.08.05(水) 09:12 | URL |  【編集】

ライムさんへ

そうそう、森の外からユリのねーちゃんは声かけてます。
ユリは見てるけど、ユリ自身が帰らないと決めてしまい
森で過ごした時間は十年もたつけど気づいてないくらい遅く感じているようです。
帰らない。帰りたくないという想いがまだ残っていて森の中に隠れちゃったの。
神隠しみたいなものですね~
森の神様にあって、森の住人になることに決めてしまった。
日下ヒカル |  2009.08.05(水) 09:17 | URL |  【編集】

コメントを投稿する

Url
Comment
Pass  編集・削除するのに必要
Secret  管理者だけにコメントを表示  (非公開コメント投稿可能)
 

▲PageTop

トラックバック

この記事のトラックバックURL

→http://virtualworlds.blog87.fc2.com/tb.php/349-ea9f4b3c

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事へのトラックバック

▲PageTop

 | HOME | 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。