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誉められることなのか

2009.10.01 (Thu)

自業自得って言葉だけは親のお陰で覚えた。
友達なんていない。
正確には、友達なんて存在を作ることを許されなかった。
小学校に入る前から勉強が始まったが、いつからしていたのかわからない。
延々と続く勉強時間。
小学校に入学後も、休み時間もずっと勉強していた。
同級生が「遊ぼうよ」と声をかけてくれても「遊べない」と断った。
親から言い渡される宿題の量が半端ないほど渡されていたからだ。
学校の休み時間を利用してそれをこなした上で、家に帰宅後は軽食を食べ塾へ向かう。
成績は常に一番でなければ許されない。
でもある日。
私は壊れた。

暴走族の中が心地よかった。
暴れて
叫んで
暴言を吐いて
人を傷つけ
泣かせて
喧嘩して

煙草も吸った
お酒も飲んだ

子供がしてはいけないといわれるもの全てを やってみようと思ったくらいだ。

「お姉ちゃん。大丈夫?」

たった一つだけ、守ろうって思った。
助けなきゃって。
目の前を歩いている若い夫婦と真ん中にいる女の子。
笑ってて幸せそうだった。
反対側から見ていた。
道端に座り込んでタバコを吸いながら私はずっと見ていた。

あんな風に笑えたらどんな気分なんだろうって。

そうしたら、黒い車が猛スピードで走ってきた。
明らかにハンドル操作が出来ていない。
おかしい。

立ち上がった。
目の前を見た。

そっちに向かってる。

「逃げて!」

走った。
叫んだ。
突き飛ばした。

子供を。
お母さんを。
お父さんを。

助けたかった。

この幸せを
この笑顔を
失って欲しくなかった。

どこの誰かも知らないけど
私みたいな
泣いてばかりで
怯えているような
そんな
そんな風になってほしくなかった。

だから、飛び出した。

「おりなさい」
船から降りて、女の子を抱きかかえておろした。

どうして。

助けられなかったんだってすぐにわかった。
ここが賽の河原だということもすぐにわかった。

大きな鬼が沢山集まってきた。
女の子が震え上がり怖がっている。
抱きかかえて、ぎゅっと抱きしめた。
頭を撫でて怖くないよと呟いた。

「石の塔をつくればいいんだろ」

私も怖かったけど、悔しくて涙が出た。
どうして助けてあげられなかったんだろうって。

「もういい。泣くな」
鬼は意外にも私の頭を撫でてニッコリと笑った。
「こっちについて来い」
そういわれて、私はついていった。
「その子はこなくていいのに、お前さんについてきちまったんだよ」
「え?」
「お前さんはその子をちゃんと守ったんだ。助けたんだ」
「でも、どうしてここに・・・」
「お姉ちゃんが叫んだの聞こえ。手を伸ばしてくれたから、怖かった離したくなかった」
「そっか・・・」
女の子は私にしがみついたまま話している。

「お母さんとお父さんも心配してるよ。ほら、泣かないで」
私は袖口でぐしゃぐしゃっと女の子の顔を拭いた。
「お姉ちゃんは?」
「後から行く」

嘘をついた。

鬼はそれに気づいたようで、また、私の頭を撫でた。
でも、女の子も嘘だってわかってたみたいだった。

「ばいばい」
手を振って別れた。
女の子は今までいなかったみたいに、ふっと消えた。

「お嬢さんが助けてくれなかったら・・・本当にありがとうございます」
私の両親はそんな言葉を女の子の両親から聞いていた。
それでも彼らは「あいつには何の価値もない。人の顔に泥塗ることしかしない。間違いでしょう」
といって彼らを追い返した。
けれど、女の子が「お姉ちゃん、おりぼんくれたの。ピンクのリボン、似合うからって」と
私の両親に見せると二人とも驚いた顔をして何も言わず私の写真と向き合っていた。

「あのリボンは意味があるのか?」
「私がね、一度だけ我侭言って買ってもらったものなの。幼稚園のときかな」
「ずっと、持っていたのか」
「買ってくれたけど怖くて使えなくて、それであの子に船の中であげたの」
「いい守りになる」
「ホント?」
「お前さんは悲しみを知っているからな」
「そっか。よかった」
08:00  |  賽の河原  |  Trackback(0)  |  Comment(14)

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コメント

なんか切なくて涙が出そう。
淋しかったんだね。
優しい子だね。
鬼もちゃんとわかっているね。
海のいるか |  2009.10.01(木) 10:18 | URL |  【編集】

海のいるかさんへ

はわわわ(;´Д`A
なっ泣かないでくださいぃー(滝汗)
切なかったかな・・・?
主人公としては、満足なハッピーエンドなんです。
鬼さんはとっても優しくて泣き虫さんですから(^-^)
日下ヒカル |  2009.10.01(木) 12:55 | URL |  【編集】

この女の子が可哀想になりました
でも助けたかった子が助かってよかったです
ライム |  2009.10.01(木) 16:59 | URL |  【編集】

こういうお話を書けちゃうから、日下さんはスゴイなって思います。
短編なのに、思わず切なくて涙が出そうになりました。
短い言葉の中に主人公の思いがいっぱい詰まってて、女の子と主人公のやり取りにはほろりときてしまいます。
最終的には全てが丸く収まったわけではないけど、主人公的にはきっと満足のいく終わり方だったのでしょうね……。
せあら |  2009.10.01(木) 18:24 | URL |  【編集】

優しい気持ち、女の子にはこんなに素直に伝わったんですね。
よかった。
現代の親っていうものは、自分に余裕がない場合が多いのかもしれません。
生活していくのに精を使い果たす。
周りとの兼ね合いにつかれきる。
子どもに向き合う時間がない。
そういう環境がどんどん広がって今があると思います。
人間だから、優しさだけは、いつまでも失いないたくないですよね。
鬼のほうが優しい時代、すぐそこまで来ているんでしょう。
怖いものです。
おネコ |  2009.10.01(木) 19:17 | URL |  【編集】

ライムさんへ

主人公は大変だったけど、最後に全部をかけて守りました。
つっぱってても心根の優しい子はいると、思ったのでした。
日下ヒカル |  2009.10.01(木) 20:49 | URL |  【編集】

せあらさんへ

そっそうかな(汗)
スゴイかな(・・。)ゞ 嬉しいです。。。
そうですね。丸く収まったのかというと、微妙な部分が残りますが主人公としては
守れたということが誇らしく嬉しいと感じています。
もちろん、泣き虫鬼さんも(^-^)
日下ヒカル |  2009.10.01(木) 20:51 | URL |  【編集】

おネコさんへ

小さな女の子は、純粋にそのまっすぐで本気の気持ちを感じて
手を伸ばして離さなかったのだと思います。
確かに、親という存在が生活だけで精一杯で子育てというのがないがしろになりつつあるような
もしくは異常な過保護か・・・という印象が強くありますね。
もちろん、普通に接している家庭も多いのでしょうが目立ってしまいますね。
だからこそこんな話がかけてしまう。
うーん・・・本当に泣き虫鬼がいそうですね。。。
日下ヒカル |  2009.10.01(木) 20:54 | URL |  【編集】

こんにちは

私は鬼さんのように泣き虫ではありません。
でも、今日のお話を読んでいて、涙が出てきてしまいました。
とっても悲しいお話、
でも、とっても素敵なお話。

賽の河原シリーズ、いいですねって前も書いたけど、このお話を読んでますます好きになりました。
空飛ぶミケ猫 |  2009.10.01(木) 22:47 | URL |  【編集】

空飛ぶミケ猫さんへ

なんだか不思議です。
皆様一様に、涙を誘ってしまったようで・・・
自分としてはハッピーエンドだったんです。。。
ネガティブエンジン搭載していると少々ズレてるのかな・・・

このシリーズは本当に自分として言いたいことが
どちらかというと子供のままの私の声がそのまま書けるので
するすると出てきます。

子供でいられるシリーズ・・・かな。
日下ヒカル |  2009.10.01(木) 23:23 | URL |  【編集】

う有無・・・。

「お姉ちゃん、おりぼんくれたの。ピンクのリボン、似合うからって」
 ⇒ 忘れえぬ記憶はリボンでしっかり繋がっていくのですね。
賽の河原シリーズ
どんどん深く広がりを持っていきますね。
う有無・・・。

クメール 伝道師 |  2009.10.02(金) 00:29 | URL |  【編集】

クメール 伝道師さんへ

どんどん深まり広がりを見せるシリーズですね。
何かを洗い流すようなそんな作品になりそうです。
今までのシリーズの中で怖いけど、悲しいけど、心に残るのが怖さではないものというのは
初めての試みですね。
日下ヒカル |  2009.10.02(金) 09:00 | URL |  【編集】

子供が親の所為で不幸になり、
賽の河原の鬼達が嘆く…。

話の根本が切ないとは言え、
今回の主人公は満足しているのではないかなと思います。
このシリーズのお話は、ひとつひとつが
現在の社会を風刺していて、
これから親になる(はず!)の私には凄く考えさせられます。

これ、ホント書籍化したら売れる話だと思います。
凄く好きです。
D-3 |  2009.10.02(金) 14:33 | URL |  【編集】

D-3さんへ

今回の主人公は一見不幸なんだけど、満足した結果になってるんです。
本当に現在の風刺をちょっと極端な部分もあるかも知れないけど
でも無いわけじゃないだろうから、逆に真実味があるんでしょうね。

書籍化(@@;
いやはや・・・嬉しいです。
日下ヒカル |  2009.10.02(金) 17:25 | URL |  【編集】

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