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親子でたどり着いたその先は

2009.10.08 (Thu)

「こちらで降りてください」
船頭に促されるまま僕達は降りた。
娘を抱きかかえたまま船から降り、妻の手をとりバランスの悪い足場に降りるのを手伝った。
妻は船頭に「ありがとうございました」と深々と頭を下げた。
降りたこの場所はすぐにわかった。

「賽の河原だ、ここ」
「え?」

妻が振り返って辺りを見回すと、石でできた塔がいくつもあった。
「ということは、お父さんもお母さんも無事ってことかな」
「そうだね」
苦笑いをしながら河原を歩いていると、とても小さな鬼が出迎えてくれた。
「こっここは・・・賽の河原だ!」
必死になって重そうな棒を振り上げガン!と地面にたたきつけた。
「はぁっはぁっ!さっさい・・・の・・か・・・わら・・」
「大丈夫?」
妻は目線を合わせるようにしゃがんで子鬼に話しかけた。
「ぼっぼくは!鬼!こわい鬼!」
必死に頑張っている姿を見て妻は「怖い鬼さんね!こわいよー!」というと
ちょっと嬉しそうにした子鬼がパッと明るく笑って「こっち!」と妻の手を引いて走り出した。
僕は抱きかかえた娘がいるのでゆっくりと後をついて行った。

「すまないね」
ふりかえると、それはそれは大きな恐持ての鬼がいた。
一瞬で娘は大泣きしだしてしまった。
「え?」
何故謝られたのかわからず、大泣きしている娘をあやしながら話を聞いた。
「あれは倅だ。まだ小さいが、どうしても今日はここに来ると聞かなくてな。仕事をしたいと言い出したんだ」
「仕事・・・ですか?」
「だが、出迎えばかりで結局一緒に遊んでくれるこの河原にたどり着いた子供たちが、作り上げた塔を壊すことが出来ずに泣き通しだったんだ」
「随分、優しい心の持ち主だ」
「私たちも好きで壊しているわけじゃないからな。その子供たちの思いは全部わかっている。
それなのに壊さねばならない。辛いものだよ」
「そうですか」
「ところで、ご主人」
「はい?」
「その子供はここに来るべき子供ではない。親より先に死んだわけじゃないからな。
ほれ、あの船が迎えに来ている。この子は先に天に行くことができる」
「一人で・・・ですか?」

僕は手放すのが嫌で娘をぎゅっと抱きしめた。

「そういうと思った。だから、せがれはあのお母さんを連れて走っていったのだろう」
「・・・気を使ってくれたんですか?」
「泣かれるのを一番嫌っているからな」

僕達親子は一瞬にして死んでしまった。
すぐにわかった。
あぁ、だめだって。
けれど、子供を手放すことになろうとは思わなかった。

「悲観することはない。先に極楽浄土へいける」
「・・・」
そういわれても手放すことに変わりはない。
どうしても、娘を手放せない。
どうしたら・・・
どうしたら・・・・

「たまにあるが、この状況のときは辛いなぁ・・・」
「え?」
鬼を見てみると泣き出してしまいどこかへ行ってしまった。
どうしよう。
辺りを見ると妻の姿も見えない。

すると、小さな赤ちゃんを抱っこした子供がきた。

「ねぇ、お兄ちゃん。ここにいても辛いことしかないよ。だから、今は辛くてもいい場所にいける。
だからお願い。この赤ちゃんをお願いしていい?」

娘よりももっともっと小さな赤ちゃん。
娘が「おりる」というので下に下ろすと赤ちゃんの顔を覗き込み「ちっちゃい」と言った。
「ちっちゃいね」
赤ちゃんという存在にまだあったことがないからだろう。
とても珍しそうに、そっと撫でていた。
「パパ。パパは、ここで赤ちゃんよしよししてね。私はあっちのお船に乗る」

娘から、行くといわれてしまった。
止めたい。
でも、止めたくない。

どうしたら・・・

「パパも後からくるんでしょ?」
「うん。ちょっと遅くなると思うけど」
「大丈夫だよ!」

娘は自分の足で走り、待っている船の上に乗った。

「パパ!バイバイ!」

娘は体全部を使って手を振った。
いつもなら駄々をこねる子がどうして?

「あの子知ってるんだよ。自分が行くところ。だから、寂しくないよ」

妻が戻ってくると「やっぱりね」と言った。
子供が抱えていた赤子を引き取り、「一緒に遊ぼうか」といって二人で塔を作り始めた。

「あの、鬼が泣いてどこかに言ったんだけど・・・」
と子供に聞いてみると笑いながら答えた。
「いつものことだから」と。
08:00  |  賽の河原  |  Trackback(0)  |  Comment(10)

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コメント

そうか~
こういう場合もあるね
大人が賽の河原にきちゃって
一緒に来た子とはお別れ……
でも時間の流れがこちらとは違うから
またすぐ会えるんでしょう!
とても小さい鬼……
このキャラが妙にツボにはまりました
鬼さん子煩悩(^_^)
ライム |  2009.10.08(木) 15:53 | URL |  【編集】

ライムさんへ

そうなのです。ちょっとかなしいけど、こんな場合もあるよねっておもって。
でも、子鬼さんは一生懸命がんばりました!
子供と別れなきゃいけないことをいえなくて、お母さんを連れて行きました。
子供とはなれるけど、離れていた時間を感じさせないくらいあっという間にあえるでしょう。
泣き虫鬼さんの、子供さん登場です(^-^)
日下ヒカル |  2009.10.08(木) 20:03 | URL |  【編集】

こんにちは

今度はちっちゃい鬼さんの登場。
賽の河原の人間模様じゃなかった、鬼模様?が描かれていて、ますます世界が広がってきましたね。

ちょっと気になることがあります。
「ということは、お父さんもお母さんも無事ってことかな」
この夫妻は人を助けるために犠牲になって亡くなったのかなぁ?
空飛ぶミケ猫 |  2009.10.08(木) 20:17 | URL |  【編集】

空飛ぶミケ猫さんへ

えっと、事故を想定しています。
お父さんとお母さんというのは、旦那さんのご両親です。
一緒にお出かけだったという設定で書きました。
最近ニュースとかで事故が絶えませんので・・・ちょっとね。
考えてしまったのでした。
車を運転するのでその危険性を改めて認識。
それと、安全運転を心がけなければと・・・ね。
日下ヒカル |  2009.10.08(木) 21:20 | URL |  【編集】

これは家族全員での事故パターンですね…。
旅行先での事とか、考えられるケースは多々ありますね><

ただ、子鬼もしっかりお父さんの性格を継いでるようで、
それがなんだか嬉しかったですね!
いい子に育ってるな~!

私も車を運転しますので、将来家族を持ったらこうならないように
最大限安全運転しなきゃな~と思いました。
そういうメッセージも絶対入ってるでしょこれ!
さすがヒカルさんだ~。

ところで、母鬼はセクシーですか?
何かラムちゃん的な格好を勝手に想像しちゃってごめんなさい(笑)
D-3 |  2009.10.09(金) 00:54 | URL |  【編集】

D-3さんへ

そうです、家族全員の・・・というぱたーんです。
運転するとき前方と左右は気をつけますが、後ろから襲われたら
たまりませんね・・・
ちょっと前に追突事故が続いたから、恐ろしいなぁって・・・思って。
お彼岸の時に運転してお墓参りに行ったときも、まぁこれでもかってくらい衝突事故があってて
福岡はマナーの悪さベスト3に入ると教習所で習ったので、気をつけねばと・・・思いました。
そうそう、Dさんのおっしゃるとおり!
みんなー!後ろもみて気をつけてね!というメッセージでした。
皆が気をつければ事故もゼロ!

将来家庭を持ったら是非!チャイルドシートは絶対しましょうね!
しない人が意外と多くてびっくりですよ!!(≧ヘ≦)

ラムちゃん・・・ え?!ラムちゃんって鬼なの?!
宇宙人だと思ってた。
浮いてたような・・・あぁ、でもなんか角もあった気がする・・・
母鬼さんはいないです~(^^;残念
イメージ的には、卵から生まれます~・・・
子鬼は父ちゃんそっくりです~
泣き虫泣き虫(^^;;;
日下ヒカル |  2009.10.09(金) 08:56 | URL |  【編集】

人生って忘却があるから生きていけるのですね・・・。

この世と別れ、賽の河原でも娘との別れ・・・
でも娘は天国〔正確には極楽〕へ・・・。
でも他のことに気がいってる内に、何れ忘れていく・・・。
人生って忘却があるから生きていけるのですね・・・。
そんなイメージを持ちました。
クメール伝道師 |  2009.10.09(金) 11:07 | URL |  【編集】

クメール伝道師さんへ

完全に忘れるということは、ないと信じたいですが
いないことを悲しむ時間がないくらい、短い待ち時間に感じるほど
子供には幸せな場所で待っていられるところなんだよ。という雰囲気です。
日下ヒカル |  2009.10.09(金) 12:50 | URL |  【編集】

こんにちは

そうか!
みんなで出かけていたときに事故に遭って…
自分たちだけ賽の河原にいるのに気がついて
「お父さん、お母さんは無事…」ということがわかったということですね。
納得
空飛ぶミケ猫 |  2009.10.10(土) 10:17 | URL |  【編集】

空飛ぶミケ猫さんへ

そうなのです。みなで出かけていたときという悲しいこと。
それを、死者の視点から見ました。
賽の河原と気づいて、安心することもあるというちょっと悲しい話だけど
ね・・・
日下ヒカル |  2009.10.10(土) 13:07 | URL |  【編集】

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