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選んだはずなのに

2009.10.17 (Sat)

それは、望まれた妊娠ではなかった。
「嘘だろ?」
引きつって青ざめた彼氏の顔はいままで見たこともないほど、怯えていた。
「嘘じゃない」

その後は、大乱闘といっていいほどの大騒ぎになった。
中学生での妊娠。
受験前の発覚。
大学生の彼氏。
その全てが、大騒ぎだった。

ただ一人、彼氏のおばあちゃんを除いては。

「そう騒ぐな」
たった一言で、両家の両親を静めた。
「まずは、お嬢さん。おめでとうさん」

一ヶ月戦っていたその間、誰からも言われなかった言葉をはじめて言われた。
嬉しくて、悲しくて、その現実が身にしみた。
おめでたいはずの出来事だったんだということを忘れていた。
涙が溢れて止まらなかった。

「お前さんは随分若いね。体をまずちゃんとせにゃいかんな」
「え?」
「細い体じゃ。よーけ、食べなさい。それと、ほれ!お前の子じゃろうが!」
「ばっばーちゃん・・・」
「お前がしゃんとせんで、どうするね。ちゃーんと、お前がささえにゃいかん」
「うん・・・」
「いいかい?赤子っちゅーのは、親を選んで生まれるんじゃよ。忘れるな」
「そうなの・・・ですか?」
「選べないというものおるがね。選んでうまれてくるのもおるんじゃ。
そういう時は、大抵なんでこんなときにと思うような時に授かるもんじゃ」
「ほれ!おまえがしゃんとして、お嬢さんを嫁に貰え!」

その後、彼氏の決心は固く私も体調面を考慮しつつ生むことになった。
ただ、私の両親は理解してくれず勘当という形になってしまった。

「生まれてくるのを楽しみにしなくちゃね」

口でそう言い聞かせた。
でも、この子さえいなければと考えてしまう。

こんなめちゃくちゃな人生にならなかったはずなのにと。

それが、訪れた。

「ママ、ごめんね」

そう、聞こえた。

「誰?」

後ろから聞こえた声に振り返ると、私はその場に倒れた。

「気がついたか?」
病院にいることはすぐわかった。
でも、何があったのか覚えていない。
「どうして・・・」
彼がとても悲しい顔をして、そして泣き始めた。
「なに・・・?」
覚えていない。
思い出せない。

「どうして、堕胎したんだ・・・」

もし、この階段から落ちたら全部変わるかな。
もし、この階段から落ちれば元に戻るかな。
もし、この階段からこけたら家に戻れるかな。
もし、この階段が全部無かったことにしてくれるなら。

全部の「もし」が、いつの間にか勝手に動いてしまった。
でも、そのもしよりも私はその前に「堕胎」を選んでいた。

「私、もう、疲れたの」


穏やかな三途の川から船が一艘近づく。
「卵だよ」
賽の河原の船頭が小さな卵をもってきた。
鬼は受け取り、子鬼に渡した。
「卵だ」
「そうだ、卵だ」
「どうするの?」
「生まれるのを待つんだ」
「生まれるの?」
「あぁ、生まれる」
「じゃぁ、僕がお父さんになる!」
「そうだな。生まれたら、迎えが来る。それまで抱いてあげなさい」

「その卵って、私の子供なんでしょう?」
私は、怖かったけど目の前の鬼に聞いた。
「そうだ」
「話せる?」
「あぁ」
「じゃぁ、話してもいいかな?」

近づこうとしたら、子鬼が泣きながら金棒を持って振り回してきた。
「近づくな!近づくな!お前なんか大嫌いだ!」
「それが、その子の言葉?」
「嫌いだ!お前なんか!大嫌いだ!」
泣き喚く子鬼に私はどうしたらいいのかわからず、立ちすくんでいると
大きな鬼が一言。
「お前はここに来る人間じゃない」
そういわれたと思ったら、突然川に突き落とされた。
溺れて、そのうち底に沈んだ。
二度と浮かばないほど重い体になって。

「意識が戻るかどうか、わかりません」
それが、動けない体の耳から聞こえた医師の言葉だった。
08:00  |  賽の河原  |  Trackback(0)  |  Comment(8)

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コメント

この世は地獄。
そんな言葉が思ういかんだラストニャ……。
この世で罪を償うことほど厳しいものはないって感じ。
死にながら生きる。
彼女が人間の心の本当の醜さを知るのはこれからだニャきっと。
この先の彼女を思うと、気が狂ったほうがましじゃないかとさえ思える。
いや、いつかきっとそうなる。
第二の罪なのか唯一の救いなのか。
いずれにせよそれは、己の心を消し去ること。
ふぅ~。そんなことまで連想させられたニャ。怖い怖い……。
えめる |  2009.10.17(土) 16:35 | URL |  【編集】

えめるさんへ

子に恵まれず苦労している人もいれば、ほいほい産んで捨てたり殺したりする。
この主人公の場合は、出産に対して問題があり産めない体だったというわけでもなく
ましてや結婚まで決まっていた状態で元の生活を望んでしまった。
案外居るような気がして。。。
子鬼が卵を育ててくれる。そこで愛をもらえると救いを。
鬼は主人公に許しがあるまで賽の河原にすら拒否をした。
鬼さんは強かに怒っていたのでした。
こわやこわや・・・
日下ヒカル |  2009.10.17(土) 19:42 | URL |  【編集】

中学生の女の子が背負うには重すぎる荷物だ……と思いました
この子の選択に賛否両論あるでしょうが
無事にこちらの世界に戻ってきてほしいです
ライム |  2009.10.17(土) 19:57 | URL |  【編集】

ライムさんへ

そうですね、中学生と考えたらあまりにも現実が恐ろしいでしょうね。
賛否両論・・・確かに。
どれが正しいとはいえないですものね。
たまごちゃんはママの気持ちをくんでいるんですよね・・・
日下ヒカル |  2009.10.17(土) 20:03 | URL |  【編集】

なんだか・・・。
この子がもっと知識があったら・・・(性行為、妊娠するという意味について)と思ってしまう。
でも中学生ではそこまでは難しいよね。
最近は中学生の妊娠もめずらしくないみたいで
知ってる人の子供の同級生が三人も・・・。中3で。
胸が痛みます。
海のいるか |  2009.10.17(土) 20:07 | URL |  【編集】

まあ私ゃこの大学生の男にイラっときましたよー!
深読みしまくり。
そもそも大学生が中学生に恋するか…!?
普通しない!
遊びじゃないのか…避妊もせずに…!!!
と、思っちゃいました。

中学生の女の子だってまだ命の重さを理解できる年齢じゃないしね…。
その結果、自分のことしか考えられなくなり、堕胎…。

でもこれどー考えても男のが悪いんですけど、
やっぱどっちも悪いですよねえ。
最初からバッドエンドのニオイがぷんぷんしました。

今女の子は常世と黄泉の狭間にいるようですが、
運良く戻れたあと、同じ過ちを繰り返さないで欲しいですね。
D-3 |  2009.10.17(土) 21:07 | URL |  【編集】

海のいるかさんへ

最近は漫画でも(少女向け)描写がすごいですからね。。。
子供などと思っていても知識だけはある。
でも実感がないんでしょうね、その結果を。
私の世代ではありませんでしたが、小学六年生に対し男女に別れ避妊用具の使い方講座が
学校で始まったと聞いてはぁ?!と驚いた記憶があります。
悪い・・・とはいいませんが、さすがに驚きました。
しかし、必要なことなのかもしれませんね。。。
情報が溢れている以上、ハンパな知識より全部教え込んだ方がいい気がしますね。
中3で・・・ うーん・・・(ーー;
それで結婚して幸せならいいんだけどなぁ・・・
でも出産のリスクは高いなぁ・・・
日下ヒカル |  2009.10.18(日) 09:19 | URL |  【編集】

Dさんへ

あらあら、結構大学生と中学生とかいうカップル設定は少女マンガでありまくりですわよ。。。
少年漫画で言うところの家庭教師(美人なねーちゃん)と教え子といったベタな感じです。
中学生でどこまで性的知識があるのかというのが、怖いですね。
都合のいい部分だけを抽出して信じてそうなので・・・。

相手は大学生だから結婚という文字がでてきても多分中学生ほど
抵抗はないと思うんですよね。
フォローが必要でしたね、主人公に。
また主人公も産む重大さを一人で悩まずにちゃんと話すべきでしたね。

以前ドラマで、子供を産むことは罪じゃない。でも、育てられなかったらつみになると思う。
という台詞があって印象的でした。
あまり若くして産むのも母体に負担がかかりリスクの高い出産になりますからね・・・
そういうのって学校でもう教えちゃっていい気がするんだけどなぁ・・・
日下ヒカル |  2009.10.18(日) 09:24 | URL |  【編集】

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