サイトマップ
06月≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫08月

スポンサーサイト

--.--.-- (--)

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--:--  |  スポンサー広告

拍手する


マスター

2010.04.10 (Sat)

私がこの家に仕えるようになって一年が過ぎた。
だが、一度もマスターの顔を見たことは無い。

「マスター。お食事でございます」

ドア越しに話しかける私。
声だけは聞こえる。
男性のように感じる若い人の声。

「ありがとう。いつものように置いてくれ」
「かしこまりました」

部屋に入るとマスターの姿はない。
テーブルセッティングを終えると部屋を出る。

住み込みで働くメイドは一人だけ。
マスターと二人暮らし。
猫が一匹住み着いた。
マスターに報告すると「僕も猫が好きなのでお世話をお願いできるなら飼っていいですよ」といわれた。
お陰で猫はこの広いうちに出入りするようになり唯一マスターと顔を合わせる。

「今日気がついたのですが・・・」
一年たったある日、初めて私の部屋の前にマスターが立って話しかけてきた。
「なんでしょうか?」
「ちびたのおなかが大きいんですが妊娠していませんか?」
「え?!」
私は驚き部屋のドアを開けてしまった。

「あ!」

急いで閉め「ごめんなさい」と言った。
マスターも「ごめんなさい」と言った。

それは、彼の容姿のせいだろう。
驚かなかった。なんとも思わなかった。
そんな綺麗ごとはいえない。
いえなかった。
震えた。
驚いた。
怖いというより、驚きが大きく何もいえなかった。

「・・・驚かせましたね。すみません」
「・・・いえ・・・。あの、驚いたりしてごめんなさい」

そうとしかいえなかった。

「驚くと思いますよ。僕もこの姿を見慣れるようになるまで十年かかりました」
「・・・え?」
「生まれつきじゃないんです。これは」
「・・・・」
「僕は殺されたんです」
「・・・・」
「でも生きてた。なんとか這い出して病院に行き有り余った財産のお陰で逃げてこの家で暮らしています」
「・・・」
「・・・このまま働くのは嫌ですか?」
「いえ・・・そんなことはありません。ただ・・・」
「ただ?」
「痛くないんですか?」
「すこし痛みはあります」
「お薬とかは?」
「ありますが痛みを止めるものではありません」
「あの・・・姿をもう一度見てもいいですか?」

私の問いかけにマスターは何も答えなかった。

「薬草とかなら知識があるんです。民間療法なんですが・・・」

そういうとマスターはドアノブをゆっくりとひねった。
私はドアの向こう側にいるマスターと始めてあった。

「顔は変わっていてもわかりますよ。お兄ちゃん」

小さな頃、お屋敷で女中をしていた母に連れられ出入りしていた家の長男。
よく遊んでくれた兄と慕った人物。

探していた。

小さな約束を果たすために。

「・・・覚えていたんですか・・・」
「はい。だって、約束したじゃないですか」
「約束?」
「私をお嫁さんにしてくれるって」

マスターは驚いた顔をして笑った。
「まだ君には早いですよ」
十五歳の私にはまだ早いらしい。
08:00  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

拍手する


コメント

コメントを投稿する

Url
Comment
Pass  編集・削除するのに必要
Secret  管理者だけにコメントを表示  (非公開コメント投稿可能)
 

▲PageTop

トラックバック

この記事のトラックバックURL

→http://virtualworlds.blog87.fc2.com/tb.php/686-96a26c96

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事へのトラックバック

▲PageTop

 | HOME | 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。