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電話の先に居る誰か

2010.04.30 (Fri)

「もしもし?」
見知らぬ電話番号に不審に思いながら出た。
「あ・・・暇?」
「えっと・・・どちら様?」
「適当にかけた」

それが、ななしのごんべいとの出会いだった。

「適当って・・・」
「誰か出てくれるかなって思ったの。そうしたら、あなたが出た」
「本当に適当にかけたの?」
「うん。一人暮らしで寂しくて電話したの」
「ふーん・・・。まぁ俺も一人だけど。名前は?」
「ごんべいさん」
「ごんべい?女の子だろう?キミ」
「いいじゃない。あなたは?」
「俺は・・・そうだな。じゃぁ王子」
「王子?!白馬にでも乗ってるの?」
「まぁね」
「面白子という人ね」

それ以来、このごんべいさんとよく話すようになった。
メールはしない。
声を聞きたいのだから。

「ごんべいさん。どこに住んでるの?」
「猫の国」
「ふーん。俺は馬の国かな・・・」
「馬って、乗ってるの?」
「乗れないかな。世話・・・係だよ」
「牧場に居るの?」
「いや」
「ちがうの?」
「うん」

不思議そうな声で質問するがごべいさんも俺も質問の答えを的にも答えたことがなかった。

俺はおもちゃ屋さんで働いている。
その中でも馬のぬいぐるみが大好きでせっせと集めている。
この歳になってもぬいぐるみに夢中になっているのは誰にも言えない。
仕事場では周知の事実だが。

「私ね、いつも窓の外を見てるの」
「何が見える?」
「虹と猫達のデートの姿。それとね、気持ち良さそうにお昼寝してるのよ」
「猫達とお話できるの?」
「一匹だけ、窓から入ってきてくれるの。すごくうれしいけど、さわれないの」
「猫が触れないってなんで?」
「バイキンとかあるかもって言われて、猫もわかってるみたいで窓辺にはくるけど中には来ない」
「触れる猫ってどんな猫?」
「うーん・・・ぬいぐるみくらいじゃない?」

このときごんべいさんが入院しているというのはすぐにわかった。
声は大人びた声をしていたがもしかすると子供かもしれない。

「なら、ぬいぐるみをプレゼントするよ。でっかいねこを!」
「え?でも、私がどこにいるかしらないでしょ?」
「・・・そうだね。教えてって言いたいけど怖いよね」
「・・・怖いって事はないんだけど・・・」
「待ち合わせとか出来る?」
「ど・・・どうかな」
「俺は東京に住んでる。ごんべいさんは?」
「福岡・・・だから、待ち合わせは厳しいね」
「大丈夫だって」
「なにが?」
「俺、王子様だから」
「なにそれ」

クスクスと笑いながら咳き込む彼女の声は段々と小さくなっている気がした。

「ごんべいさん?」
寝ている彼女が目の前にいる。
ごんべいさんは想像していた年齢よりはるかに若かった。
まさか、小学生とは・・・。

「え?王子様?」
「うん。ごんべいさんのお母さんから電話があった。飛んできたよ、馬に乗って」
「馬?」
「ほら。あれとそれ」
「うわ!!おっきい!!」

殆どごんべいさんと大きさの変わらない猫のぬいぐるみと馬のぬいぐるみを持ってきた。

「俺、おもちゃ屋さんで働いているんだ。馬はぬいぐるみ。ぬいぐるみが小さい頃から俺は大好きでさ」
「こんなに王子様がふけてるとは思わなかった」
「ふけてるって・・・」
「恋人にしたら犯罪じゃない」
「いいじゃないか。キミが大人になるまで待つよ」
「えへへ。待ってくれるの?」
「あぁ。待つよ」

それからしばらくして彼女はゆっくりと目を閉じ二度と開けなかった。

「どうして、彼女作らなかったの?」
十年後、お見合いで知り合った女性と結婚したが彼女を作らなかったのが不思議だったらしい。
当時の話をすると彼女は驚き泣きはじめた。
何がなんだかわからず、どうしたのかと聞いてみるとなんと
彼女はその当時ごんべいさんの担当看護婦だったそうだ。
まさかこんな縁があるとは露知らず。

その時思い出した。

「王子様って何で王子様って言ったの?」
「あぁ・・・俺の名字だよ。王子 貴正」
「え?!おうじっていう名字なの?!」
「そうだよ」
「びっくりだ・・・」
「俺もびっくりだ。よく虐められたよ、この名前で」
「きっと王子様にはもっと素敵なお姫様が来るよ。ちゃんと私が見てるから」
「ごんべいさんじゃないの?」
「うん。違う。でも大丈夫!だって、私が選んだ素敵な人を王子様の側に連れて行くから」


そういったのだ。

初めてあった最後の日に。

08:00  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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