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ひとつの死体と薔薇の花

2010.09.13 (Mon)

一人旅の結果、お金が尽きた。
実際野宿でもいいだろうと思ったが最近の治安の悪さから考え直した。
とはいえ、お金がないのも事実。

どうしたものか。

日が落ち、真夜中に差し掛かった十二時五分前の時に声が聞こえた。

「宿をお探しですか?」

若いご主人が声をかけてくれた。
だが、泊まる金などない。

「えぇ、まぁ。でも、ちょっとお金なくて・・・」
「野宿は危険ですから、うちに寄って行きませんか?今日はお客さんも少ないですからかまいませんよ」
「え・・・でも・・・」
「お支払いはいりませんが、代わりにといっては何ですが僕の晩酌の相手をしてもらってもかまいませんか?」
「それだけでいいんですか?」
「はい」

僕はこの変わった宿主の言葉を有難く素直に受け取ることは難しかったが、いろんな差し引きをした結果好意を受けることにした。

「どうぞ、こちらの部屋です。といっても、ここ僕の部屋なんですけどね」
「え?ここが?」
通された部屋は普通の宿泊するような部屋でとても豪華な造りになっていた。
「僕はあちこちの部屋を渡り歩いて寝泊りするんです。お客様の気持ちを忘れないようにと思って、固定した個室は持ってないんです」
「そう・・なんですか」

変わった主人だと思いつつも荷物を置いた。
なんにしても、お腹がすいた。

「食事もなさってませんね」
「わかります?」
「えぇ、お腹すいたという顔をされていますから」
「あはは。面目ない」
「少しお待ちください。何か作らせますから」
「え?!あの・・・コンビニくらいで買えるお金は持ってますから!」
「この辺にコンビニなんてありませんよ」
「・・・あ・・・」

にっこりと笑うと宿主はふすまを閉め足音を遠ざけた。

作らせるということはこんな真夜中になるというのに誰かが起きているということになる。
そこまで大きな宿には思えないが、実は客数がいるのではないだろうか。
でなければ、おきている必要性はない。

他に客がいるような雰囲気も感じられないのだが、本当にいるのだろうか。

「お待たせしました」
待つというほど待っていないが、立派な料理と酒が運ばれてきた。
「約束の晩酌も一緒に持ってきました。あなたはお食事しながら僕の晩酌にもお付き合いください」
「こんな立派な食事・・・ありがとうございます。なんといったらいいのか・・・」
「これでもあまり物なんです。すみません」
「あまり物ですか?!」
「えぇ。本当はいらっしゃるお客様が何故か来られなくてご連絡もなく」
「そうだったんですか」

突然のキャンセルをされたとはいえ、一人用の鍋で作られたすき焼き。
それとお造り。前菜やデザートまでのフルコース。
ただで貰うには引けてしまうほどの質と量。
晩酌と持ってきた酒も随分高そうなものを持ってきている。

「さぁ、どうぞ。冷めないうちに」
「はい。では、あの・・・頂きます」

小さなグラスで乾杯をして食事を始めた。
どれもとてもおいしい料理で言葉を失うほどの旨さだった。
こんなに贅沢なものをただで貰っていいのだろうか。

「晩酌に付き合って欲しいといいましたが、実は話を聞いてほしかったんです」
「話、ですか?」
「えぇ。ちょっとした僕の悩み事です」
「いいですよ?食べながらでよろしいのですか?」
「それはかまいません」
宿主は酒をぐっと飲み干し新たにコップに注いだ。
一呼吸置いて彼は話し始めた。

「僕は薔薇の花が好きで何度も育てようとしましたが、うまくいかず枯らしてしまうばかりなんです。
そんな時、宿に泊まったお客さんで随分薔薇に詳しい人がいましてね。
教えてもらったんです。
薔薇には赤い栄養が必要だと」

「赤い栄養ですか?」

「えぇ、赤い栄養と彼女はいったんです。でも僕にはそれが何なのかわかりませんでした。
彼女も笑うだけで教えてくれず冗談だと思ったんです。
でもある日、偶然知ったんです。
赤い栄養が何なのか。きっかけは困ったお客さんの応対をしたときでした。
泊まっていかれましたが色々な後始末を残していかれたので、片づけが大変でした。
その時、薔薇のしたらなら誰にもわからないだろうと思って埋めたんです」

「埋めた?え?何をですか?」

「困ったお客さんが残していった赤い栄養です。随分薔薇は元気になってくれて、今ではほら見えますか?
あんなに育ったんです。赤い薔薇となって。元々は白い薔薇を植えたはずなんですけどね」

障子を開け奥にある薔薇を指差す宿主。
その顔は少し不気味だった。

「最近栄養が足りなくて困っていたのです。しかし、どうやって手に入れていいかを悩んでおりました」
「そんなに難しいものなんですか?」
「えぇ、天然物ですから」
「それは以前この宿に泊まった客のものと仰いましたよね」
「そうです。あのお客様は困った人だった」
「確かにあの人は癖がある性格だったけれど、突然蒸発するような人ではなかった」
「え?」

宿主の顔色が一瞬で凍りつき、冷たい目線で僕を見る。

「偶然としか言いようがないですが僕はあるものを探していました。それは人です。
突然消えたある人を探して探してずっと旅していました。
でも、このあたりでパタリと手がかりが消えてしまった。動いた形跡もなかった。
まさか、ここに泊まったままだとは驚きました」

「知っている人なんですね」

「えぇ、良く知っています。どんな特徴なのかも。どんな性格なのかも。どんな人間なのかも」

「どういう意味ですか?」
宿主は震えた声を発している。

「僕の顔、本当に覚えていないんですか?」

09:29  |  短編小説  |  Trackback(0)  |  Comment(2)

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コメント

赤い水・・・

賢者の石かっ!!
錬成されちゃったのね♪
かぜのお~ |  2010.09.15(水) 11:53 | URL |  【編集】

かぜのお~さんへ

なるほど!(^ー^)
錬成されちゃったのですね!

両手を合わせて パーン!! うりゃぁ!!ってww
日下ヒカル |  2010.09.15(水) 17:32 | URL |  【編集】

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